新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
2020年04月14日 14時03分 JST | 更新 2020年04月28日 03時50分 JST

差別の恐怖に襲われるLGBTQの人々の暮らし「同性パートナーとの同居、職場にさらされる?」「病院では?」新型コロナの影響、ここにも

感染経路の特定、在宅ワーク・・・。新型コロナウイルスの感染拡大は、偏見を恐れて職場にセクシュアリティーを秘めてきた性的少数者たちにも、暗い影を落としている。

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偏見を恐れて自分のセクシュアリティーを職場に隠している人は多い

新型コロナウイルスの感染拡大で、同性カップルなどセクシュアルマイノリティーの人たちにも不安が広がっている。「もしもの時にパートナーの治療の意思決定ができないのでは」「パートナーが感染した時、自分のセクシュアリティーが職場に知られてしまうのでは」。感染の広がりによって、これまでも抱えていた問題が一度に噴き出している。

 

職場にはびこる差別「濃厚接触者になったら言えるだろうか」

同性婚の実現に向けた活動に取り組む一般社団法人「Marriage For All Japan」は4月6日から、セクシュアルマイノリティーやその家族らを対象に、新型コロナウイルスの影響を尋ねる緊急アンケートを実施。12日までで150件を超える回答が寄せられた。

「勤務先には、女性の同性パートナーと同居していることは隠して、一人暮らしだと伝えています。もしパートナーが感染したら、私は濃厚接触者になる。そうなったら会社にパートナーのことも、同性愛者だということもカミングアウトしなきゃいけないのかな・・・」

ハフポストの取材に応じた北海道の20代女性Eさんは、職場での理解が深まらない中、新型コロナウイルスが不安をさらに掻き立てていると打ち明けた。

「(男性社員に対して)女っぽいよね、オネエなんじゃないの」

「仲のいい友達とか自分の子どもがLGBTだったら、絶縁する」

職場の飲み会の席では、当事者を侮蔑する言葉が飛び交う。

「社内の福利厚生に、同性カップルの結婚休暇も介護休暇もない。同性愛者への差別意識をもつ人が何人もいる職場で、カミングアウトするメリットよりデメリットの方が明らかに大きいです」

「パートナーが感染しても、同性愛者だという秘密を守るために真実を話せるか分からない。社内の人にうつしてしまうかもと不安を抱えながら、出社することを選んでしまうかも」。気持ちは揺らいでいる。

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パートナーに万が一のことがあったとき、医師から説明を受けられるか不安を抱く当事者も

病院では?遺産相続は?同性婚が認められない日本

「同性のパートナーが感染して入院した時、医師から病状を教えてもらえるのか分かりません。意識が無くなった時、家族とは認められず、治療内容の決断もさせてもらえないかも」

 関西地方のNさんは、同性パートナーの女性と同居し、小学生の子どもを2人で育てている。2人は今年2月、自治体が同性カップルの関係を公的に証明する「パートナーシップ宣誓証明制度」を申請し、受理された。だが、証明書に法的効力はない。

 「役所以外での証明制度の認知度はほぼゼロ。病院で宣誓したことを伝えても、家族と認めるかは病院次第。効果があるかは分かりません」

 同性婚が法的に認められている国は年々増加している。「Marriage For All Japan」によると、28の国・地域で同性婚ができる(昨年9月現在)その一方で、日本ではいまだに同性同士の婚姻が認められていない。

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同性婚を法的に認める国は近年増え続けているが、日本では今なお認められていない

万が一亡くなった場合でも、遺言などを残さないと、同性パートナーの財産を相続できないなどの不利益が生じている。

 Nさんも、財産や子どもの養育に関する遺言書の作成を行政書士に依頼していた。しかし、まだ完成していない。「今の状態で私にもしものことが起こったら、パートナーに財産を残せる保証は何もないんです」

 

 感染ルートの特定で、アウティングに不安も

 厚生労働省のクラスター(感染者の集団)対策班の方針により、各自治体などでは行動歴などを聴き取る疫学調査が行われている。しかし、その感染ルートが特定される過程で、意図しないカミングアウト(アウティング)の危険にさらされるのではという不安もあった。

 「勤務先にはパートナーと一緒に暮らしていることを隠している。まもなく在宅ワークが始まるが、オンライン会議で一人暮らしではないことがばれてしまうのでは」

 アンケートには、在宅ワークでプライベートな空間が職場に知られることへの懸念を訴える声も寄せられている。

 同法人メンバーの森あい弁護士(熊本県)は「職場でセクシュアリティーをカミングアウトできないことや、医療機関で家族と認められない可能性があることなどは、新型コロナで新しく出てきた問題ではなくそもそも平常時から存在している。当事者たちが直面するそうした問題が、感染拡大によってより露わになったと言えます」と指摘する。

 「同性同士の婚姻が法的に認められることで、2人の関係に対する社会の理解も変わる。今回新型コロナで表に出てきた困難を解決する上で、緊急連絡先カードの携帯などの自衛策はもちろん大切ですが、同性婚の制度化も求められます」  

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新型コロナ関連の支援制度で、同性カップルも対象だと知られていないケースもある

同性カップル、利用できる制度もあるが…

新型コロナウイルスに関連する政府の支援策を巡り、同性カップルも利用できることが認識されていない課題もある。

例えば、小学校などが臨時休業した場合の支援としては、子どもの保護者に有給の休暇を取得させた企業に助成する「小学校臨時休業等対応助成金」と、委託を受けて個人で仕事をするフリーランスワーカーを支援する「小学校休業等対応支援金」がある。

厚生労働省によると、いずれの支援制度も「子どもを監護する者」であれば同性パートナーも対象となるという。

ただ、厚労省のウェブサイトに同性カップルの場合の記述はなく、アンケートでも「同性パートナーは対象にならない」と誤解しているケースもあった。森弁護士によると、「様々な制度で想定されず除外されてきているので、同性だと制度は利用できないと最初から諦めていることもある」という。

同法人は4月末までアンケートを募る。回答結果をまとめ、国への要望などを検討するという。


厚労省は上記の2つの制度について、対象となる条件や申請書類などをウェブサイトで公開している。

新型コロナウイルス感染症による小学校臨時休業等対応助成金

新型コロナウイルス感染症による小学校休業等対応支援金