政治への興味は「下世話でいい」。時事芸人・プチ鹿島さんが“下から目線”を大事にする理由

“アベノマスク”や“Go To”。新型コロナの影響で政治への関心が高まったけど、政治ニュースの読み方ってイマイチわからない…。新聞13紙の読み比べで知られるプチ鹿島さんに、コツを聞きました。

アベノマスク、学校の一斉休校、Go Toキャンペーン…。

新型コロナの影響で、政治の話題が、私たちの生活に直結した問題として連日飛び込んでくる。政治の仕組みがイマイチわからず、いつのまにかニュースだけが流れていってしまう現実もある。

どうすれば、忙しい私たちが政治に関するニュースを無理なくフォローできるのか。

「下世話な好奇心が大事。それが本質につながるんです」

そう語るのは、新聞13紙を購読し、読み比べて面白く語るネタで知られる時事芸人のプチ鹿島さんだ。テレビ朝日系の報道番組「サンデーステーション」へのレギュラー出演や、「文春オンライン」での連載が人気のプチ鹿島さんに、「政治ニュースを身近に感じる方法」について聞いた。

ハフポスト日本版のインタビューに応じるプチ鹿島さん
ハフポスト日本版のインタビューに応じるプチ鹿島さん
Kazuhiro Matsubara / HuffPost Japan

新型コロナの拡大で、ニュースが「自分の問題」になった

――コロナ禍での政治ニュースといえば、「#検察庁法改正案に抗議します」というハッシュタグがTwitter上で話題になり、改正案は実際に廃案となりました。SNSで声が高まり、実際の政治の世界にも影響を与えているこの動きについてはどう見ていますか?

多くの人が指摘していますけど、新型コロナウイルスの感染拡大は、1人1人にとって「自分の問題」ですよね。「今日どうなるか」「明日どうなるか」を知ろうと思うと、みんなニュースを見ると思うんですけど、コロナってまさにそうじゃないですか?「自分はどうなるんだろう?」「どう対策したらいいんだろう?」と思う。普段そんなにニュースを追いかけていない人も、チェックするようになったと思うんですよね。

そんな中で、「なんで今、検察庁法改正案を国会で出そうとするの?」と、多くの人が疑問を持った。ある意味、僕はこれも“コロナ案件”だと思っています。「コロナ禍でなんでこんなことをしてるんだろう?」と疑問に思ったわけですから。

ツイートは「脳のおなら」。つぶやいていいけど、他の人にいきなりぶつけないように

――コロナ禍で多くの人が政治に目を向けるようになっている一方で、どうやって政治参加したらいいかわからない、という人もいるのではないでしょうか。

「声を上げる」というと大げさなように思えますが、「これおかしいんじゃない?」って突っ込むのは誰でもやっていいことだと思います。何かアクションしようと思うと、ちょっと前まではデモに参加するというのが主流だった。でも、それぞれ仕事があったり、自由に時間を使えなかったりする中で、参加するハードルは高いですよね。でも、今は、SNSで発信できるので、気軽にやればいいと思います。

僕は「ツイートは脳のおなら」と言っています。思わず出ちゃうものなんだから、こいちゃえばいいんですよ。ただ、それにはルールがあって、他の人にいきなりそれをぶつけると、それは「クソリプ」になっちゃう。おならなんですから、誰にも迷惑かけない程度で、自分でつぶやいていく限りは、全然いいと思うんです。

――素直な気持ちを表明することも「政治参加」ということですね。

歌手のきゃりーぱみゅぱみゅさんが、「#検察庁法改正案に抗議します」とつぶやいて、「歌手やってて、知らないかもしれないけど」と突っ込まれていましたよね。でも、それもおかしな話です。歌手として普通に仕事をして、普通の社会生活を営んで、普通に会話をするなかで、「これって強引だよね」と思った。

それって社会人の感覚として正しいと思うんですよ。この法案の全てを読んだのか?、というツッコミはいらないんです。「おかしい」と思ったら調べればいいわけで、むしろ社会生活を送ったり、仕事をしたりしている上で、「これはちょっとおかしいね」という気持ちは僕は間違いじゃないと思います。

歌手のきゃりーぱみゅぱみゅさん
歌手のきゃりーぱみゅぱみゅさん
時事通信社

もっと言うと、議論を託している「代理人」が国会議員なわけだから、その国会議員が大した議論もせずに、法案を通そうとしていたら、それは代議制が機能していないわけですよ。だから、声を上げるしかないですよね。自分たちの選んだ人が、代わりに議論するはずなのに、それが機能していないということがバレたのが、今回のことだったと思います。だから、きゃりーぱみゅぱみゅさんは正しいと思います。

本来、僕たちは、選挙で、自分たちの代わりに議論してくれる人を選ぶわけです。細かいことはあなたたちが国会で議論してね、ということなんです。それで今まで成り立っていたわけですが、託したはずの議論がされてないっていうことに気づいたら、選んだ側が声をあげるしかないですよね。今回、Twitterのハッシュタグがあれだけ拡散し、自分たちが運動を起こさなくちゃいけないということになっちゃったということは、実は深刻なことです。

野次馬精神でいい!ゴシップに本質が詰まっている?

――だとすると、もっと多くの人が政治に関心を持ち続けて、政治家をウォッチした方がいいですよね。若い世代は特に、政治に関心がないとも言われますが、どうしたら政治ニュースに興味をもつことができるんでしょうか。

一言で言うと「下世話でいい」ということでしょうか。僕のニュースの見方はずっと変わっていなくて根本は「野次馬精神」なんですよね。「桜を見る会」の問題だって、僕が一番気になったのは、前夜祭に出たとされるお寿司は、どこのお店が握っていたんだろうかっていうことですから(笑)。本当にゴシップ的な見方ですが、そこに本質が詰まっているような気がしています。

ハフポスト日本版のインタビューに応じるプチ鹿島さん
ハフポスト日本版のインタビューに応じるプチ鹿島さん
Kazuhiro Matsubara / HuffPost Japan

たとえばいま話題の「Go To キャンペーン」。これって誰が考案したの?官僚側では誰が仕切ったの?と思って新聞を読んでみると、経済産業省の経済産業政策局長の新原浩朗さんの名前が出てくる。

そうすると、僕は思うわけです。「あっ、菊池桃子の夫だ!」って(笑)僕はタブロイド紙も読んでいるのですが、菊池さんの結婚について、僕が「オヤジジャーナル」と呼んでいる、おじさんメディアの食いつき方が半端じゃなかったんです。それが面白くて覚えていたんです。今回、「あっ、新原さんだ!」と改めて気づいて、野次馬な僕の関心事でいうと、「菊池さんの夫はそんなやり手だったんだ」っていうところになるわけです。

ハフポスト日本版のインタビューで語るプチ鹿島さん
ハフポスト日本版のインタビューで語るプチ鹿島さん
Kazuhiro Matsubara / HuffPost Japan

興味の持ち方って、それでいいと思うんですよ。僕は「“下から目線”でいいじゃないか」って言っているんです。“意識が高い”人からしたら「そんなのどうでもいいよ」と言われるかもしれないんですけど、どうでもよくないんですよ。桜を見る会の前夜祭の明細はどうなっているの?という疑問と根本は同じなんです。そこから見えてくるものがある。だから、下世話精神とか自分の中の疑問、野次馬精神を大切にしています。若い人には、その目線を持っていい、と伝えたいですね。

――「下から目線」という表現は面白いですね。

例えばですが、「選挙へ行こう」というようなハッシュタグも、意見を表明するという意味では素晴らしいと思いつつ、実は結構苦手です。だって、「行かないお前は意識低い」という、「選挙に行った」自分は絶対正義だから、行かない人からすると、ますます分断が生まれると思うんです。投票に行くことは大切な権利だし、もちろん大事なことです。でも「行け、行け」って言われて、「行かない俺は意識低いアホだ」みたいな空気が漂ったら、絶対その人たちは投票に行かないですよ、ますます。

だから、そういう人にいかに興味を持たせるかと言ったら、実はこんな政治ゴシップがあってね、という下世話な話でいいんですよ。「行け」って言うよりも、「なんで行った方がいいのか」っていう話ももっと伝えた方がいいと思いますね。

「政局」は、あなたの会社でも起きている!

――野次馬精神で政治を見るのは面白そうですが、政治のニュースって登場人物が多くて、最初のとっかかりが掴みにくいとも感じます。

政治家の派閥争いや党派の動きを「政局」といったりしますが、僕は政局が大好きなんです。確かにごちゃっとしているように感じますが、皆さんも同じような状況にいるのではないでしょうか。ご自身の会社や仕事先でも、結局は人間関係が幅をきかせてないですか?あの上司とこの上司が仲が悪かったり、自分はそんなつもりがなくても、お前は「その派閥なんだな」って言われちゃったりとか。

ただ仕事をして、成果を評価してくれるんだったらこんないいものはないです。でもそこに「人間関係」という余計な案件が加えられていませんか?政治も同じ。人間関係に注目すると、大きな流れや背景が見えてきて面白いんです。

例えば東京都知事の小池百合子さん。僕は彼女をイマイチ信用できないんです。

希望の党の代表辞任を表明した小池百合子氏=2017年11月14日
希望の党の代表辞任を表明した小池百合子氏=2017年11月14日
時事通信社

「しがらみのない政治」と小池さんは言いますが、小池さんには「しがらみ」が生まれようがない。2017年秋に小池さんが「希望の党」を立ち上げたとき、周りにいたのって若狭勝さんと細野豪志さんだけでしたよね。次期総理か? という期待感すら背負いながら、側近がたったの二人? 実は、永田町に友達がいないんじゃないか?仲間がいないんじゃないか?と気付くわけです。下世話に見えて、重要な視点ではないですか?これも人間関係に注目するのがポイントなんです。政策ベースで見るとわからないことが、人間ベースで見ると浮かび上がってくる。

――そう言われると、急に政治家の人間関係が身近に思えてきました。

そうなんです。政治家同士って毎日「誰と誰が組んだらおいしいか」ということをやっているんです。それって僕らの日常生活の、仕事場の延長線上にある。「都合のいいときだけ来て、『自分を支持してくれ』って言われたって、『普段、あいつ顔出さないじゃん』」という永田町の感覚って、きっと仕事場でも同じじゃないですか。働く人のリアルっていうのは、永田町にも絶対つながっているんですよ。だから僕は、「お手本」、とは言いませんが「反面教師」にするいいお題があるんだから、政局も見た方がいいよと声を大にして言いたいですね。

「今日何を食べに行く?」を決めるだけでも「政治」

――「政治」というと、どうしても自分から遠いことのように感じてしまいがちですが、私たちの暮らしとの共通点がありそうです。

政治って特別なことかと言ったら、そうじゃないんです。学校や会社でも、3人集まったらもうそれは政治ですよね。「今日何を食べに行く?」を決めるだけでも、それも1つの政治ですよね。何かしらの決定が行われるわけだから。その延長線上に、そこでリーダーシップを取った人というのは、他のことでもリードを取るかもしれない。そういうことだと思います。

普段の自分たちの暮らしこそが政治であって、「何を、どうする?」という意志決定は、普段の生活の中でもある。自分たちで決められることは僕らは決めている。その中で、法律を作ったり、国を動かしたりということになると、僕たちは「仕事もあるし、忙しいから」、政治家に任せている。彼らの方が特殊なんです。

プチ鹿島さんが新聞13紙を読み比べて気付いたことは…

ハフポスト日本版のインタビューで語るプチ鹿島さん
ハフポスト日本版のインタビューで語るプチ鹿島さん
Kazuhiro Matsubara / HuffPost Japan

――「政治」が身近なものだとわかってきたのですが、そうはいっても政治に関する情報収集をするのは大変です。何かコツはありますか。

僕は今、全国紙やスポーツ紙など合わせて13紙を購読し、読み比べをしています。いろんな論調の新聞を読み比べて僕が学んだことは、「なんでこんな発想になるんだろう」という自分と違う意見の論調を知るのが面白くなったことです。SNSを使っていると、自分と同じような意見でどうしても固まってしまうし、むしろ「何々新聞がまたこんなこと言ってる」というような、イメージだけで切り捨てちゃう傾向があると思うんですけど、「なんで自分と違う意見を持ってるんだろう?」という疑問がわいてくるんですね。

この疑問を掘り下げていくことは重要だと思います。その時、いろんな論調の新聞を比べてみると面白いと思います。例えば、昔、クラスで「誰と誰が付き合ってる」みたいな噂話ってあったじゃないですか。そういう噂って、1人のネタ元で満足できますか?もし誰かに話すんだったら、「あいつはこう言ってる」「じゃあ、あいつの意見はどう?」と聞いていった方が、精度が高くなっていくじゃないですか。情報もそういうことだと思うんですよ。クラスの噂話をいかに楽しむかと言ったら、1人より、2人、3人…と聞いた方が精度が高くなるし、見方も変わる。それと同じことをやっているんだと思います。

あなたにとって政治は身近ですか?アンケートにぜひお答えください

みなさんにとって、政治は身近な存在ですか?政治ニュースは普段読みますか?どんな政治を望みますか?

7月28日(火)夜9時からのTwitter生配信番組「ハフライブ」では、プチ鹿島さんをゲストとして招き、「忙しい私たちが政治を知る方法」を様々な視点から考えていきます。みなさんのご意見を番組に反映させたいと思っています。ぜひ、みなさんの思いをお寄せ頂ければうれしいです。

アンケートはこちらから

ハフライブ「忙しい私たちが政治を知る方法」

日時:7月28日(火)午後9時〜

▼番組はこちらから

https://twitter.com/i/broadcasts/1lDxLywaegaKm

(時間になったら配信がはじまります。視聴は無料です)

▼出演者

ゲスト

時事芸人 プチ鹿島さん

ハフポスト日本版エディター(朝日新聞の元政治部記者) 竹下由佳

パーソナリティー

arca CEO /クリエイティブディレクター 辻愛沙子さん

ハフポスト日本版編集長 竹下隆一郎

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