3分で学ぶ世界
2020年08月05日 18時42分 JST | 更新 2020年08月19日 15時56分 JST

“排除”が進むTikTok、創業者が内部メールで苦悩を明かす。「しばらくは誤解を受け続けよう」

インドやアメリカ、そして日本でも排除に向けた動きが高まる。苦境に置かれた社員に、トップはなんと声をかけたか。

アメリカでの事業売却をめぐって揺れるショート動画アプリ「TikTok」運営元の創業者・張一鳴氏は8月4日、中国の社員向けにメールを送信。「短い期間の名誉は気にせず、辛抱強く正しい仕事をしよう」などと逆風に晒されるなか社員を激励した。

VCG via Getty Images
バイトダンス創業者の張一鳴氏。写真は2018年(Photo by Visual China Group via Getty Images/Visual China Group via Getty Images)

■排除の動き広まる

TikTokは北京の「バイトダンス(字節跳動)」が開発したショート動画アプリで、アメリカや日本などで若い世代を中心に人気を集める。

一方で、インド政府が中国との軍事衝突後に利用禁止としたほか、アメリカのトランプ大統領も、アメリカでの事業を9月15日までにマイクロソフトを含むアメリカ企業に売却するよう求めている。売却が成立しなければ利用を禁止する。

また、日本でも自民党の議員連盟が利用制限を政府に提言する方針を固めたほか、埼玉県神戸市が公式アカウントの運用を停止するなど、排除に向けた動きが高まりつつある。

■社員向けのメール

国際的な逆風に晒されるなか、創業者の張氏が中国の社員向けにメールを送ったのは4日のこと。全文が多くの中国メディアに掲載されている。

張氏はまず、現状について「多くの部署の人が24時間体制で指示を受け動いている。平凡でない日常を、特別な旅のように感じる」と綴った。

そして、TikTokはこれまで、多国籍企業であることを常に強調してきたと言及。「世界中から社員が参加している。無意識のうちに違う国の文化や価値観を踏みにじったり、自分の物差しを押し付けたりすることは、非常によくあることだ」と語った。

■「しばらくは誤解を...」

現在、ネット空間ではバイトダンスへの攻撃が強まっている。アメリカや日本では個人情報の安全性をめぐり懐疑的な声が上がっているほか、中国でも、アメリカでの措置に強く反抗していないことから「弱腰だ」などと批判を浴びることも多い。

張氏はこれに対し「多くの人が問題の所在を間違えている。焦点はCFIUS(対外米国投資委員会)がmusical.ly(※)の買収を問題視していることではない。本当の目的は、アメリカで完全に利用禁止とすることだ」とする。

musical.ly...2017年にバイトダンスが買収したアメリカの動画アプリ。現在のTikTokの前身とされる。アメリカでは、この買収が安全保障上の脅威にあたるかをめぐって調査が続けられている。

そして、今は批判を甘んじて受け入れ、反論をすべきではないと呼びかける。

「複雑な事を、公共の場で説明すべきでないタイミングもある。過去だって、私たちが批判を受けた時に釈明しないこともあったが、経営陣は結果的により強い信任を得ることになった。人々の意見について、しばらくは誤解を受け続けよう。短い期間の名誉にはこだわらず、辛抱強く正しいことをやり続けよう」

■もっと苦しく

張氏はまた、多くの国で中国への反感が高まっているとも指摘。アメリカなどの国では、政治家が中国や中国企業を徹底的に攻撃しているとし「中国人ではない社員の立場を特によく理解する必要があるし、これからもっと苦しくなるだろう」と不安を綴った。

そして「いずれにせよ、長期的な発展ビジョンから、目の前の挑戦や圧力に取り組むべきだ」とし、より良いユーザー体験や企業の社会責任などを追求していけば、「ユーザーを勝ち取れるだけでなく、中国企業へのプラスポイントにもなる」とした。

張氏が社員向けにメールを送るのは3日に続いてのこと。以前のメールでは、アメリカのTikTokユーザーに対し、引き続きサービスを提供できる方法を模索するなどとしていた。

今回は、国際的に逆風が吹いている現状を認めつつ、社員のモチベーションを保とうという苦心の跡が読み取れる。