日本は「性差別や不平等が蔓延」。草津町議リコールで、海外メディアの報道続く。

セクハラ告発が批判されリコールされた草津町議の問題。CNNやニューヨークタイムズも報道し、日本社会の問題を浮き彫りにする現象として扱われている。
草津温泉の温泉街中心にある湯畑(2018年)
草津温泉の温泉街中心にある湯畑(2018年)
時事通信社

【UPDATE】2022年11月22日14:15

前橋地検は、元町議の新井祥子氏を名誉毀損と虚偽告訴の罪で在宅起訴した。10月31日付。

朝日新聞デジタルなどによると、起訴内容は新井氏が2019年、町長室で性被害にあったと記載した電子書籍を公表して黒岩信忠町長の名誉を傷つけたほか、21年12月には町長から性被害を受けたとする虚偽の内容の告訴をしたというもの。

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「日本で性被害を告発する女性が直面する困難を、浮き彫りにした」――。

群馬県草津町で町長からの性被害を訴えた新井祥子町議が、住民投票の結果失職した問題を、海外メディアも続々と報じている。

いち地方議会に限られた問題ではなく、「性差別や不平等が蔓延」(CNN)した社会を象徴する事案として捉え、日本の政治の場や職場などにはびこる男女格差についても発信している。

「女性は従順であるべきだ」

ニューヨークタイムズは、「彼女が町長からの性暴力を訴えた後、その町は彼女を攻撃した」と題する記事を掲載。

「この事案は、日本で性暴力被害を告発する女性が直面する困難を浮き彫りにしている。日本では、こうした被害を訴え出ることは極めて少なく、オープンに議論されることはめったにない」

同紙は、法律とジェンダーの専門家である千葉大学大学院の後藤弘子教授のコメントを掲載。「これは、女性の性被害者に対する、非常に典型的な日本の反応です」

リコールの賛否を問う住民投票の結果、解職に「賛成」は2542票、「反対」は208票となり、圧倒的多数が解職を支持した。この背景について、同紙は後藤教授の次の言葉を引用した。

「日本の報道機関でジェンダーに基づく暴力の報道が少ないことや、『女性は従順であるべきだ』という文化的態度が根強いことがあり、被害を告発する女性に対する感情を動員しやすい」

「(一連の問題は)より多くの女性の政治家が必要だということを裏付けている。新井氏の声を支える多くの町議がいたら、結果は異なっていたかもしれない」

性差別と不平等が蔓延

CNNは、リコールの呼びかけは、新井氏のメディアでの発言が「草津の評判を傷つけた」などと主張していることを紹介。

一方で、町役場に新井氏の解職を批判する電話が多数寄せられていること、多くは失職の決定を「不公平で性差別的だ」と訴えていることも報じている。

世界経済フォーラムが発表した2019年版のジェンダーギャップ指数で、日本は153カ国中121位だった。

CNNはこれを踏まえ、「日本では、男性よりも働く女性の数がはるかに少なく、働く女性はしばしば管理職(への起用)を阻害されたり排除されたりする。家庭でも、女性は家事の大部分を担っている」と掲載。女性の国会議員の低い割合にも触れている。

性被害を訴え出る「#MeToo運動」のキャンペーンへの反応をめぐり、他国との違いにも言及。

日本社会に「性差別や不平等が今なお蔓延している」と指摘し、「#MeToo運動は、他の国々で具体的な進歩と文化的な会話の変化をもたらしたが、日本では抵抗を招いた」と報じた。

フリージャーナリストの伊藤詩織さんがジャーナリストからの性被害を告発した際、脅迫を受けたりSNSで中傷された件にも触れた。

政治の場の男性支配

ガーディアンは、「彼女(新井氏)の苦境は、日本の地方や国の政治における男性支配(の実態)を浮き彫りにした」と記した。

ジェンダーギャップ指数で政治分野が特に低いランクに位置していることを念頭に、「政治における男女平等は、国際比較において不十分だ」と報じている。

新井氏の告発に対する反応について、「性暴力の疑惑を適切に調査することに失敗した日本の現状が、再び注目を集めた」と掲載。性暴力に抗議するフラワーデモの全国的な広がりに触れ、「性暴力問題を真剣に受け止めるよう政府などに求める機運が高まっている」と伝えている。

(國崎万智@machiruda0702/ハフポスト日本版)

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