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2021年01月27日 07時10分 JST | 更新 2021年01月28日 13時33分 JST

産後うつのリスク増えるコロナ禍。「手を上げそう」と追い詰められる女性をオンラインで救う助産師たち

「出産前から相談する場が少なく、人とも気軽に会えず、1人で不安を抱えてしまう人も多い」。支援を続ける助産師はそう指摘します。

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コロナ禍で増えている産後うつのリスク。

新型コロナへの感染に怯えるだけでなく、2020年から子育て支援の場の閉鎖、両親学級の中止などが相次いだ中で、妊産婦たちは追い詰められた。

「子どもに手をあげそう」「一緒に飛び降りようかと思った」ーー

そうした悲痛な声をあげる妊産婦たちを支えようと、助産師たちのグループが継続的な支援の提供を目指して活動している。

 

「出産・子育てへの不安が底上げされている」

「もちろんコロナに関する心配もあるでしょうけれど、人に会って気軽に話したり相談したりできない分、出産・子育てへの不安が底上げされていると感じます」

助産師たちでつくり、個別相談や子育てに関する講座を提供してきた「じょさんしONLINE」の代表を務める杉浦加菜子さんは、コロナ禍での妊産婦たちの様子をこう話す。

コロナ禍では、出産前に助産師らから知識や心構えを聞き、疑問を解消する場でもある両親学級が中止になったり、子どもを遊ばせながら子育ての悩みを打ち明けられる支援の場も閉鎖されたり、妊娠から出産、子育てを支える現場にも大きな影響があった。

じょさんしONLINEは「このままでは、妊産婦さんたちの不安が募ってしまう」と考え、2020年4月に緊急企画としてオンラインで両親学級や子育てに関する相談会を無料で開催。2週間で国内外から1445組が参加した。

参加者からは、「子どもと一緒にベランダから飛び降りようかと思っていた」「このまま孤独の中にいたら手をあげそうになっていた」といった切羽詰まった声も寄せられたという。

緊急企画を行う前、杉浦さんたちは「新型コロナへの感染が心配」などの声が多いのではないかと予想していた。しかし、実際に開催して寄せられたのは「出産に対して不安がある」「授乳がうまくいかない」など、通常時と変わらない質問が多かった。

この企画に参加したことで気持ちが前向きになったという人も多く、直接話すことの意義を感じたという。

「出産前から相談する場が少なく、人とも気軽に会えず、1人で不安を抱えてしまう人も多い。継続的な支援が必要だと感じました」

 

コロナ禍では産後うつのリスクが上昇

杉浦加菜子さん

コロナ禍では、産後うつのリスクが高まっているという研究もある。

筑波大准教授の松島みどり氏(公共政策)などの研究グループが2020年10月に行った、1年以内に出産した母親らを対象にしたメンタルヘルスに関する調査では、産後1年未満の母親2132人のうち「産後にうつ症状がある」人の割合は約24%に上った。

厚生労働省の2013年度の調査によると、出産した女性のうち約10人に1人に産後のうつ症状が確認されている。単純比較はできないが、松島氏の調査結果ではリスクが2倍以上となっている。

こうした研究結果を受け、じょさんしONLINEでは継続的なサポートを計画。クラウドファンディングを開始した。1組に対して個人相談30分を3回、オンライン講座を2回提供。1年間にわたって、担当の助産師が利用者を支える。

通常、相談や講座は有料だが、クラウドファンディングの企画については利用者の金銭的な負担はない。100組以上に提供する予定だ。

「コロナ禍では出産時の立ち合いや病院での面会も制限されることが多く、そこで孤独を感じたことが尾を引いてしまうことも多いです。でも継続して助産師が支えることで、『1人でもできた』と前向きに捉えられたり、産後の心を少しでも安定させたりすることにつながると考えています」

さらに、妊産婦だけでなくパートナーを含めた支援も目指す。

コロナ禍で里帰り出産できなかったり、出産後に親を呼べなかったりする中、パートナーの関わりは非常に重要だと強調。一方で、うまく関われず悩む男性も多いからだという。

「男性が育児休業を取得することに対する理解が進んでいないことなどから、板挟みになって悩む男性も増えています。父親の産後うつも知られてきました。妊娠・出産に関わる家族全体を支えることが重要だと考えています」

 

「どこにいても、安心して妊娠・出産・育児できる」社会に

杉浦さんがじょさんしONLINEを始めたきっかけは、自身が夫の転勤でオランダに住んでいたころに出産を経験したことだった。

助産師としての知識はあるし、日本で一度出産を経験していたものの、日本と全く違う文化で人間関係もない中、大きな孤独を感じたという。

日本には、地域で助産師が妊産婦を支えようという仕組みはある。ただ、海外に出るなどして「普通」から外れてしまうと受けられない。そういう人が、自分の他にもいるのではないかと考えた。

目指しているのは、「世界のいつどこにいても、安心して妊娠・出産・育児できる社会の実現」だ。

「私のように転勤族で地域に支援を求めづらい人だけでなく、外に出づらい妊産婦さんは他にもいます。例えば、切迫早産で身動きが取りづらい妊婦さんや、双子や三つ子を育てていて外出しづらい人たちも、オンラインならば自宅から利用できます」

現在はコロナ禍で、誰もが外出しづらくなっている。東京都などには2度目の緊急事態宣言が出され、新型コロナの影響がいつまで続くのかは見通せない。支援の重要性は高まっている状態だ。

一方でオンラインで支援やサービスを受けることへの敷居は低くなった。

杉浦さんは「もちろん地域での支援も大切ですが、誰ひとり取り残さずサポートするには、オンラインでの活動も非常に重要だと考えています」と強調する。

クラウドファンディングへの支援は1月29日まで募っている。