震災後の写真スタジオで、遺影写真の依頼を受けた。「ずっとしまっていた」体験描いた漫画に反響

東日本大震災からまもなく10年。作者のあいしまさんは、「10年たった今でも忘れることができない」とつづっています。

東日本大震災の発生から、まもなく10年。

震災当時、被災地の写真スタジオで撮影アシスタントとして働いていた人が体験を描いた漫画に、反響が広がっている。

作者は、宮城県気仙沼市在住のあいしまさん(@setup_setup)。

あいしまさんは2月11日、Twitterで「来月で東日本大震災から10年経つという事でずっと自分の中にしまっていたんですが、自分の経験した事を描いてみようと思い形にしてみました。読んで頂けると幸いです」とつづり、漫画を投稿した

あいしまさんは10年前、地元の写真スタジオで撮影アシスタント兼デザイナーとして働いていた。

家や職場は津波の被害を免れたため、周囲の被災の光景を目にしても実感がわかなかったという。

あいしまさんの勤務先の写真スタジオに、初めて遺影写真の依頼がきた。若い男性の遺影写真の依頼だった。

しばらくして写真スタジオを訪れた、ある親子。2人は、以前自分が遺影写真をつくった男性の家族だった。

母子3人のそれぞれの写真を一枚の写真にするよう依頼されたこともあった。

中でもしんどかったのは、以前写真スタジオで一緒に撮影した子の訃報だったという。

「私は10年たった今でも この事を忘れることができずにいて 思い出すたびに涙が溢れてきてしまうんです」

漫画の最後のページで、あいしまさんは次のように「お願い」を記した。

「当時も逃げる途中に川沿いに立っている人たちに逃げるよう叫んだりしましたが、真面目に受け取ってもらえないケースもありました。このような大規模な災害はあまりイメージがわかなく大人も子どももどうするべきかあまり分からないと思います」

「ご面倒ではありますが、3月11日だけは1分でもいいのでご家族、大切なパートナーと防災について考え、話してみてください」

10年たつ 今だから

なぜこのタイミングで、体験を漫画にして伝えようと思ったのか。ハフポスト日本版の取材に、あいしまさんは次のようにコメントした。

「今までこの体験を描かなかったのは、私自身がこの経験をあまり表に出す気持ちにならなかったのと、名前を伏せていても何かの形でこの子どもたちの目に入ったら、また辛い思いをするのではないかと考えていたからです」

「でも、10年たった今、私の子どもも来年入学を控えているので、これを機に話してみようと思い立ち、形にしました」

ツイートは8万件以上リツイートされた。

「子どもと防災について話してみようと思う」「言葉にできない」「涙が止まらなかった。言い残しがないように、やり残しがないように、生きなくちゃなって改めて思う」など様々な感想が寄せられている。

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