児童養護施設の出身者、コロナ禍で半数以上が生活状況悪化「死ぬんじゃないかと不安」の声も

東京ボランティア・市民活動センターなどがアンケート調査を実施。施設を出た後のアフターケアの重要性を指摘している。
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新型コロナウイルス感染症が流行する中、児童養護施設の出身者のうち半数以上が新型コロナの影響で生活状況が「悪くなった」と感じていることが東京ボランティア・市民活動センターなどの調査で分かった。

頼れる家族がいない状況の人も多い中、強く影響を受けている状況が明らかになっている。

コロナ禍での減収「6割以上」も1割

児童養護施設は、保護者と一緒に暮らすことができない子どもたちが暮らす施設。2018年の厚労省の調査によると、全国で2万7026人が入所している。

保護者と暮らせない理由は様々だが、入所する子どもたちの6割以上は身体的虐待やネグレクトなど虐待を受けた経験があり、約2割は家族との交流がない。基本的に高校を卒業すると施設を出て自立することになるが、頼れる実家や保護者はいない状態の人も多い。

調査は同センターがゴールドマンサックス社と協働で行うプロジェクトの一貫として、2020年5〜8月に実施。児童養護施設の協力を得て、施設の退所者2509人にアンケートを送り、1851人から期間内に回答を得た。

アンケートでは、生活状況の変化について50.2%が「悪くなった」と回答。学生を含め「働いている」とした1487人のうち、37.5%が収入が減ったという。減収の割合は2〜4割未満が28%と最も多かったが、6割以上も1割を超えた。

また、新型コロナの影響で仕事が無くなったと答えた人も49人いた。

「給料が半分以下に。このまま死ぬんじゃないかと不安」

アンケートの自由記述には、頼れる家族がいない不安や、自分以外に金銭面で頼れる人がいないことで苦労する声など、追い詰められる様子が綴られた。

「月のお給料が半分以下になった。たまに、このまま死ぬんじゃないかと不安になった」

「あらたにアルバイトを増やして生計を立てています。睡眠時間が足りないのと、 学業に戻りたく受験費用、入学金、学費も貯めないといけないので大変です」

「毎日満席になるような飲食店で働き、人の多い電車にのり、かなりリスクがありますが、働かなくては不安な現状。万が一のときに頼れる親や実家がないため」

「(唯一の親族だった父親が亡くなり)誰の後ろ盾もない今、誰を頼って自立を試みれば良いのでしょうか。私一人の力では、何も変わりません。どうすることもできません。帰る家さえなくなったのです」

センターの担当者はハフポスト日本版の取材に「アンケートで尋ねたコロナ禍の前の収入も、8割以上が20万円に満たない。もともと厳しい生活を送っていた施設出身者が、コロナ禍でさらに厳しい状況に置かれていることが分かる。昨年の調査以降も影響は続いており、さらに悪化している可能性もある」と分析する。

プロジェクトではアンケート調査に加え、施設を通した救援物資の送付やアフターケアのための資金提供、特に生活に困窮している退所者への緊急支援金の提供なども行った。

さらに、生活がうまくいかなくなると施設との連絡をためらう退所者も多いとし、担当者は「今回調査に答えてくれたのは施設と関係性が続いている子たち。施設と繋がっていない子たちはもっと悪い状況になっているのでは。自立した子たちのアフターケアを充実させていく必要がある」とも指摘している。

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