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2021年06月10日 11時30分 JST | 更新 2021年06月10日 11時30分 JST

LGBT差別禁止が必要な4つの理由

LGBTに関する法律は、「理解促進」だけを目的としたものでなく、「差別禁止」に対し実効性のあるものにすべきです。なぜ、理解の促進だけでは不十分なのか。主な理由を4つ挙げて説明します。

今、LGBTに関する法案をめぐる事態が、連日のように報道されています。

与野党協議で合意したはずの法案が、自民党内の猛反発で今国会の提出見送りという事態に発展。抗議の声が広がる中、自民党の中でも見送りは決まった、いや決まっていないと、迷走ともいえる状況になっています。 

アムネスティ・インターナショナルはLGBTの人たちの権利を守るための法律が、速やかに成立することを強く望んでいますが、その法律は、現在、議論されている法案のように「理解促進」だけを目的としたものでなく、「差別禁止」に対し実効性のあるものにすべきだと考えます。

なぜ、理解の促進だけでは不十分なのでしょうか。

主な理由を4つ挙げてみます。 

1. いのちを守るために「差別禁止」は絶対必要!

2. LGBT差別の禁止は世界のルール

3. 理解促進と差別禁止は車の両輪

4. 差別禁止の法整備はオリンピック開催国としての当然の責務

 

 1. いのちを守るために「差別禁止」は絶対必要!

LGBTの人たちは職場や学校などで日常的に根強い差別、偏見、蔑視に直面しています。これはまぎれもない現実です。

誹謗中傷やいじめを受ける、誰にも相談できずに孤立する、差別を恐れて本当の自分を隠して生きる――精神的にも身体的にも社会的にも追い詰められた結果、自らの命を絶つケースもあります。実際、LGBTの自殺率が高いことは、繰り返し報告されています。

今回の議論の中では、一部の自民党議員から「道徳的にLGBTは認められない」「LGBTは種の保存に反する」などという、差別発言が飛び出しましたが、こうした発言はこれまでにも幾度となくありました。

社会的に影響力のある政治家の差別発言は、身体の性と心の性が一致しないことや、自分の性的指向について日常的に戸惑いや不安を感じているたくさんのLGBTの人たちに深刻なダメージをもたらします。また、LGBTに関して間違った情報が広がり、差別が助長されてしまうという悪影響をもたらします。

こういった差別が繰り返されることのないよう、法律というルールで差別から守られる社会を作ることが、LGBTの人たちの不安をなくし、いのちを守ることにつながります

 

 2. 日本は遅れている! LGBT差別の禁止は世界のルール

みんなと違うからといって、人を差別してはいけません――とてもあたりまえのことです。

しかし昔はそうではありませんでした。あたりまえのことになるように、差別をなくしていくために、国際社会はルールを作り、発展させてきました。第二次世界大戦の惨劇を二度と繰り返さないためにと誕生した世界人権宣言をはじめ、日本も批准しているさまざまな国際人権条約にも規定さており、性的指向や性自認を含むあらゆる差別を禁止することは、いまや各国の義務となっています。実際に、世界50カ国以上で性的指向に基づく差別が禁止されたり、29か国で同性婚が認められたりと、LGBTの平等を保障する国々は着実に増えています。アジアでも、台湾、モンゴル、ネパールでは性的指向に基づく差別が明確に禁止されています。さらに、台湾では2019年に同性婚が認められるようにもなりました。

一方、日本はというと、差別禁止の法整備という義務をいまだ果たせずにいます。2008年、国連は日本に対して、性的指向と性自認に基づく差別の撤廃を求める勧告をしました。その後も2013年、2014年と再三にわたり人権条約機関から差別禁止の法整備を求められてきましたが、それらはいまだに実現されていません。G7で差別禁止の法整備がなされていないのは日本だけです。OECDが発表したLGBTに関する法整備ランキングによると、日本は35カ国中ワースト2位でした。このように、LGBT差別を禁止し、同性婚を認め、前進していく国際社会から、日本は取り残されているのです。

 

 3. 理解促進と差別禁止は車の両輪

自民党が理解増進法案の検討を始めた5年前から、日本のLGBTを取り巻く環境は大きく変化しています。例えば、当初はほとんどなかった自治体における同性パートナーシップ制度が、渋谷区・世田谷区を皮切りにいまや100以上の自治体に広がっています。このような自治体レベルの取り組みからもわかるように、5年前に比べてLGBTへの理解は広がってきているといえます。

今まさに議論されているLGBTをめぐる法案は、自民党案をもとに与野党の協議を経て作成されたものですが、残念ながら性的指向や性自認による差別禁止は明記されていません。法案は国民の理解を促進すると謳っていますが、これではLGBTが日常的に直面する差別に十分に対処することができません。

2019年、国連での長年にわたる議論を経て「BORN FREE AND EQUAL」という国際文章の改訂版が取りまとめられました。LGBTの基本的人権を守る道しるべとなるこの文章には、最低限、国がしなければならない義務として「差別の禁止・対処」が具体的に示されています。差別を予防するための意識啓発のみならず、性的指向や性自認などに基づく差別を法律で明確に禁止することが必要だとしているのです。「BORN FREE AND EQUAL」によると、例えば学校では、カリキュラムに多様性についての教育を取り入れることに加えて、学校関係者と生徒に対して規則を設けてLGBTに対する偏見やいじめに対処する必要があるとしています。

また、差別されたときに被害者を救済する仕組みを整備することも必要だとされています。雇用、教育、医療、公共サービス、さまざまな場面でLGBTは差別的な扱いを受けています。本来すべての人が享受すべき権利をLGBTであることを理由に奪われてしまった場合、例えば司法の介入によって救済される仕組みを整えることによってはじめて、差別への対処の実効性を担保することができるのです。

いま日本社会で求められているのは、多様性への理解を深めるとともに、LGBTから基本的人権を奪っているさまざまな障壁を、差別禁止というルールで取り払い、すべての人の平等を実現することです。

 

 4. 差別禁止の法整備はオリンピック開催国としての当然の責務

オリンピックの理念・ルールを定めた「オリンピック憲章」では、根本原則として、あらゆる差別が禁止されています。「性的指向による差別の禁止」もそのひとつです。開催都市である東京都は、「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」を制定し、その中で性自認・性的指向を理由とする差別を禁止しました。6月2日には、東京都として同性パートナーシップ制度を導入する意向であることも表明し、当事者からは「希望の光に包まれた気持ち」との声が上がっています。

しかし、それだけではオリンピック憲章が求める「差別を受けることなく権利や自由が享受できる」オリンピック、そしてそれを迎える社会となるには、不十分です。国として差別禁止の法整備がなされていないからです。東京都以外でも競技が開催されるわけですが、そこでは東京都条例による差別禁止の保護は及びません。

開催国としてオリンピック憲章を順守するという誓約を果たし、オリンピックの精神に則ったオリンピック・パラリンピックを迎えるには、今国会の6月16日までに性的指向や性自認による差別を禁止する法律の実現が急務です。

一人ひとりが互いの違いを尊重し合う。誰もが安心して、自分らしく、生きられる。LGBTの人たちに対する差別禁止法は、そんな社会をつくるための、大きな一歩となるはずです。 アムネスティは、日本を含め世界中で差別禁止に有効な法律ができるまで、粘り強く活動を続けます。

(2021年6月4日のアムネスティ日本掲載記事「日本:LGBT差別禁止が必要な4つの理由」より転載)