気づけば、キャベツの千切りが百切りに...。「野菜をうまく切る方法」を教えて

第15回 白央篤司の「家事の“ごはん作り”担当の皆さん、おつかれさまです!」
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新型コロナの影響から家にいる時間が増え、ごはんを家で食べる機会が増えました。家事の大変さがあらためて浮かび上がります。

日々のごはん作りを担当されている方、毎日本当におつかれさまです! 

炊事に関するお悩み、共有していきませんか。そして「誰かに作ってもらっている人」も、ぜひ読んでください。ねぎらい合うためのヒントが、必ずやあると思います。

第15回  東京都 ももえさん 30歳

私は野菜の切り方がいつまでも覚えられません。不器用でうまくいきません。もはや根元を切り落とす以外のことをするのも面倒に感じる自分がいます。

玉ねぎのみじん切りや、にんじん・大根の拍子木切り、白髪ネギなど、いつも包丁を構えたところでやり方がわからなくなり、適当に切って失敗します。ピーマンも分からなくなりやすいです。ここ数年、ナスは縦割りか乱切りしかしてません……。

昔から幾何が苦手なのが原因のような気もします。円柱形が基本の野菜のどこを中心にとらえて、平面かつ長方形の形を取り出せばいいのかわからなくなってしまいます。

さらに不器用なので、一定の厚さで切り続けることもうまくいった試しがありません。白髪ネギは棒に、キャベツの千切りは百切りくらいの仕上がりです。包丁のせいにするには無理があります。

作りたいメニューはたくさんあるのに、材料カットの段階でおっくうになるのは本当に悔しいです。不器用かつ混乱してしまう人向けに、ぜひ野菜の切り方の概念やコツなど解説いただけませんでしょうか。よろしくお願いします。

ももえさん、こんにちは。

投稿を拝読して真っ先に感じたことをまず、書きますね。「自分は何ができないか的確に分かっている、理解している」って、すごい。ざっくりと「料理が苦手、めんどう」と感じている人は山のようにいます。しかし具体的に何がめんどうなのか、苦手かまでを考えている人は多くないんです。ももえさんはそこをしっかりと把握されている。こういう人は、より良い方向に行きやすいんですよ。

ももえさんは、食べること、そして料理が基本的にお好きなようですね。「作りたいメニューはたくさんある」けれど、いざ切ろうとすると「やり方がわからない」(思い出せない?)→「面倒に感じる」→「適当に切って」しまう。

そもそも「面倒に感じる」こと、「適当にやる」ことは、いけないことなのでしょうか。苦手なことを克服したい、というのはもちろん立派なこと。ただ私は、自分が面倒なこと、苦手なことはやらないと決断するのも大アリだと考えています。苦手なことを克服するようなストイックさは、たとえば仕事とか別のことに向けるのでじゅうぶん、と。自分の食事の用意に関しては、自分がつらくないことを優先していいんじゃないかな、と思うんですね。白髪ねぎが髪のように細くなくとも、千切りキャベツが百切りだろうと、上等じゃないかと。

そして拍子木に切った野菜を使ったり、白髪ねぎを作ったりと、ももえさんは結構高度な料理を作られるんだなあ、とも感じました。私、家でそんな丁寧なこと滅多にしないもので(笑)。もちろん、個人の作りたいものに口を挟むつもりはないです、気に障ったらすみません。

期待してくださった答えと違うかもしれません。ただね、くり返しになりますが「家の料理」というのは、作る人がしんどくないことを一番に考えていいんです。それが、本来あるべき姿と私は考えています。

いざ料理をしようとなったとき、「混乱する」と書かれていて、ちょっと心配になりました。混乱したら誰だって不安になるし、できなくて当然です。まずはそんな自分をダメだと思うのではなく、あなた自身がいたわってあげてほしい。食事というのは本来あなたを楽しませ、うるおし、充たすために在るもの。自分にとってつらくない作業だけで料理をしたって、いいじゃありませんか。

ただ、ももえさんの文章からは強い向学心も感じるんですね。「やらなくたっていい」というアドバイスだけでは申し訳ないので、少しだけ。切り方というのは観念的に考えるより、見て真似するのがいいと私は思います。

現在はいろいろ料理のハウツーを教える動画がありますね。私が信頼する料理研究家の冨田ただすけさんという方(白ごはん.comの主宰者)がやられているチャンネルは、丁寧で分かりやすく間違いがなく、参考になるかと思います。YouTubeで「白ごはん 野菜の切り方」で検索してみてください。

また、玉ねぎなどのみじん切りに関してはチョッパーという器具を買ったことで私はとてもラクになり、助けられました。あ、私も食材を切るのがおっくうで仕方なくなることはザラです。そういうときは、ザクザク乱切りでOKな料理にしたり、キャベツなんかは手でちぎって鍋に入れたりしています。乱切りや手ちぎりは手抜きでもなんでもなく、切りそろえるのとはまた違うおいしさが出るもの。

最後にもうひとつ。お送りいただいた文章の中に3回「不器用」という言葉が出てきました。ネガティブな言葉で何度も自分を形容しないでほしいなあ……と、思ってしまいました。自分の料理を自分で用意し続けているあなたは、充分器用で、立派です。ももえさんの料理ライフが、より良いものになりますように。

※引き続き、日々の自炊、食事の用意に関してつらいこと、悩んでいること、大変に感じていること、こちらから自由にお送りください。お名前(ハンドルネーム可)、年齢、できればお住まいの地域もご記入ください。

白央篤司(はくおうあつし)

1975年生まれ。「暮らしと食」、郷土料理やローカルフードがメインテーマのフードライター。CREA WEB、Hot Pepper、サイゾーウーマン、hitotemaなどで連載中。主な著書に『にっぽんのおにぎり』『ジャパめし』『自炊力』『たまごかけご飯だって、立派な自炊です。』など。家では炊事全般と平日の洗濯、猫2匹の世話を担当。Twitterブログ

 (編集:笹川かおり)