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2021年05月27日 17時23分 JST | 更新 2021年05月29日 12時35分 JST

日々の家事分担とごはん作り、海外の仲良し夫婦はどうしてるの?

フードライターの白央篤司さんと、『つかれない家族』を描いたコミックエッセイストのハラユキさんが話し合ったこと。

(c)MEGUMI / ハラユキ
ハラユキさん

産後クライシスに陥り、夫とのコミュニケーションに悩んだコミックエッセイストのハラユキさん。腹を割って話し合い、修復のきざしが見えたとき、突然夫の海外転勤が決まる。家事分担もすべてやり直しに。しかし海外で「子育て中でも仲のいいカップル」に出会い、彼らから多くの気づきをもらう。良好な関係を築いた様々な家族を取材し、得た知見をまとめた「ほしいのは『つかれない家族』 ワンオペ家事&育児に絶望した私が見つけた家族のシアワセ」(講談社)を上梓した。産後をふり返ってもらいながら、パートナーとのあり方について、話を聞いた。 ※文中では書名を『つかれない家族』と表記します

(聞き手・文/フードライター 白央篤司)

(c)MEGUMI / ハラユキ
コミックエッセイストのハラユキさん

よくあるパターンだったんです、育児をナメてて失敗という。夫は会社員、建築設計の仕事をしています。結婚前から分かっていたことですが、多忙で出張も多い。海外に3週間行ってしまうこともめずらしくなくて。仕事に命をかけている彼を応援したいという気持ちもありました。私も体力には自信があったので「なんとかなるだろう」と。でも現実は予想をはるかに超えていた。

――『つかれない家族』の冒頭で状況が描かれますね、夫さんとは距離ができ、ワンオペ育児に体が悲鳴を上げて体調を崩されてしまう。夫さんに期待してはダメ、自分ががんばればいいんだ……と思うに至るけれど、やっぱりあきらめてはいけない、あきらめては子どものためにも良くないと決意されるところ、引き込まれました。

いろいろ考えて、「夫も私もつかれない仕組み」が必要なんだと気づきました。一時は離婚の話にまでなったんですけど、話し合ってなんとか建て直しできてきたかな……というあたりで、夫の仕事でスペインに行くことになって。

――はじめての海外赴任で、家族でバルセロナに行かれたんですね。バタバタの連続で夫さんの家事・育児参加がまたゼロになってしまったと。

夫婦でまた揉めだして大変でした。でも、バルセロナでいろいろな出会いがあって、たくさんの発見があったんです。「子育てされていてもうまくいっているカップル」に会ったら、話を聞きたくなるじゃないですか。しかも日本人で外国の人と結婚し、海外に暮らしてなおかつ6人も子どもがいて、うまくいっている! そんな人、取材したくなりますよね。

――本の第3章、「『つかれない家族』はこんなふうに暮らしている」で出てくる、夫がイギリス人で、妻が日本人の方ですね。夫さんの(社会でも家庭でも男性より下の立場にいることが多い)「日本女性はかわいそうだと思っている」という言葉、印象的でした。

あれこれうかがって。それで気づいたこと、感じたことを(ご自身の連載コラムで)記事にしたら、かなり読まれたんです。自分でも勉強になるし楽しいしで、同様の取材が続いていきました。

 

「ほしいのは『つかれない家族』 ワンオペ家事&育児に絶望した私が見つけた家族のシアワセ」(講談社)本文より

 

海外の仲良し夫婦に家事・育児を聞いてみた

――「つかれない家族」というタイトルにされたのは、どういう思いからですか。

うちもそうでしたが、日本の家庭はやっぱりつかれている家族が多いと思っています。圧倒的に長時間労働の人が多いし、昔ながらの「男は外で稼ぎ、女は家を守る」という考えも残っているなあ……と、海外で取材するうちに気づかされました。そういう空気感を「前時代低気圧」と私は呼んでいて。

低気圧って弱い人は弱いけど、気にならない人もいる。個人差が大きいですよね。日本上空にはまだまだ「前時代低気圧」が停滞している。その影響を受けて生きづらい人もいれば、まったく影響を受けず先進的な生き方ができる人もいる。

 

(c)MEGUMI / ハラユキ

 

――ハラユキさんはその「前時代低気圧に」………

のまれていたんです。ワンオペ育児って「うちの家庭問題」だと思っていたわけですよ。夫が手伝ってくれない、理解がない……と思っていたけれど、これは社会的な問題なんだな、と。家事・育児は妻がやるものという前時代的な意識が自分の中にもあり、社会にもまだまだ残っている。そういうところから変わっていかないと、いつまでも脱却できない。まず自分も変わらないといけないんだなと、海外で取材するうちに気づいたんです。たとえば家事の外注ひとつでも、あちらはとてもしやすい。

――日本だと、そういうサービスはあっても利用しにくい空気がありますね。

そうですね。あとスペインでは男性の家事・育児参加もかなり日本よりは積極的で、社会的な認識の違いも感じて。さらに先進的といわれるオランダやフランスではどうなんだろうと興味を持って、それぞれで暮らすご夫婦を探してお話を聞くなど、取材の幅が広がっていったんです。

――パリに暮らす日本人とフランス人のカップル、スウェーデンの同性婚カップル、そして子育てしつつうまくいってる日本のご夫婦2組が本で紹介されています。みなさんの暮らし方に接して、いかがでしたか。

それぞれの素晴らしさやいい点を知ることはもちろんできましたが、同時に日本のいいところも見えました。日本って、制度としての育休はトップクラスに充実してるんですよね。でも取りにくいという問題がもちろんある。これも前時代的低気圧だなと。

「ほしいのは『つかれない家族』 ワンオペ家事&育児に絶望した私が見つけた家族のシアワセ」(講談社)本文より

 

「つかれない家族」3つの共通点

――「つかれない家族」でいるため、あるために、必要なこととは何だとお考えですか。

家族にはそれぞれの形があって、どうしたらお互いがつかれないか、満足がいくかというのはやっぱり違います。たとえば私はワンオペ育児が本当に大変でしたが、ワンオペを望む人もいます。夫は仕事に専念してほしいと考える人もいます。だからどうあるかは、本当に人それぞれなんですけど、いろんなご家族を取材していて「つかれない家族」の共通点だな、本当に大事だなと私が思ったことは、本にも書いたことですが以下の3つです。

・自分の役割に満足している

仲がいいカップルは、自分の役割にやりがいや喜び、幸せを感じることができている。不平等感がない。

・話し合いができている

関係良好なカップルはとにかく「話し合って」います。どちらかが主張するだけ、反対意見を挟めないような会話ではなく、信頼関係を築くための対話をしていますね。

・お互いをパートナーと思っているか

家族間には、役割の違いはあっても、主従関係はありません。お互いにリスペクトがあること、相手の自由と活躍を尊重し、応援できることが大事ではないでしょうか。

とても大事なことですね。ハラユキさんの本は、「それらのことができないとダメ」「そうあるべき!」と主張するのではなく、「~ではないでしょうか」と提言する。そういう書き方のやさしさも感じました。そして様々な家族をサンプルに、スムーズに話し合うコツ、お互いを尊重し合うためのヒントがちりばめられます。

現代は生き方も働き方も多様化していますよね。パートナーや家族とのありようも同時に多様化している。取材すればするほど「こうすべき」と断定はできなくなってきます。ただその中で先の3点だけは、お互いが仲良くあるために大事な共通項だと感じています。

 

不満や要望、どう話し合えばいい?

 

(c)MEGUMI / ハラユキ

――相手への不満や要望を伝えるって、とてもむずかしいことですよね。でも伝えるのは大事なこと。そういうとき、「相手主語ではなく、自分主語で話そう」というヒントに感じ入りました。

「あなたはいつも~してくれない。つらい」と相手主語にすると、どうしても責める言い方になりやすい。「~してくれないと、私はつらい」みたいに自分主語だと、多少なりともやわらかい言い方になる。

さらに進化させると、主語を「We」で話すといいとも考えます。「私たちは、我が家は」という言い方。「私たちは今、育児に関して分担がうまくいっていないと思う。どうしたらいいと思う?」「我が家は今、これこれこういう問題点がある。どうしたらいい?」など、ちょっと俯瞰に見た言い方というか。

――ペアである私たちを主語にして、「片割れとしてのあなたはどう思う?」的に投げてみると。

相手にこうしてほしいと結論を決めてから話す人が多いように感じるんです。やっぱり「家事や育児をどう自分ごとにお互い考えるか」というのがポイントだと思うんですね。

 

家のごはん作りでつかれないコツ

――私は普段、食をテーマに取材やライティングをしています。家事としての食事づくりで疲労している方の声を数多く聞くのですが、家のごはん作りで疲れないようにするためには、どうしたらいいと思われますか。

食事に限らず家事全般で言えることなんですけど、まず何にストレスを感じているのか、考えてみることだと思います。料理すること自体なのか、食事作りに感謝されないことなのか、分担のバランスが悪いから疲れているのか。どこにどうストレスを感じているかで、対処法も違ってきますから。

思っていることを書き出すのもいいし、友達の状況を聞いてみるのもいいかと。よその家庭の話を聞くと、自分のうちの状況が見えてくることは多いです。

(c)MEGUMI / ハラユキ

――ああ、本の中で、「ママ友やパパ友とおたがい『パートナーのいいところ』について話してみる」という提案がありましたね。そうすると、忘れていたいいところを思い出せる、あらためて気づけるという。

あれ、すごくいいんです。ワンオペで大変な状況のときって、パートナーのいいところがどんどん見えなくなってしまう。私もそうでした。大変じゃなくても、何年も一緒にいると当たり前になってしまって、気づけなくなるんですよね。フランスでは「日常は愛を殺す」なんて言うそうですが、家事や育児に疲れていると、悪い部分が余計に目立つようにもなる。

ある友人にパートナーのいいところを訊いてみたら、「思い浮かばない。ちょっと考えてみる」といって、三日後に連絡が来ました(笑)。聞けば「出張に行ったとき、おみやげをうちだけじゃなく、私の実家にも送ってくれるところ」って。素晴らしいことじゃない、って言ったら「え、これいいところかな?」なんて。

――すばらしい気遣いですよね、なかなかできないこと。

そのくらい、夫婦ってお互いのことが見えなくなるというか、分からなくなることもある。つきあいが長くなると特に。うちもそうでした。たまに努力して初めの頃のことを思い出すの、必要だと思うんです。悪いところばかり見ていたら冷静な話し合いもできませんし。

――ハラユキさんの家では現在、食事づくりに関する悩みごとってありますか?

特に……ないんです。うちは帰国以降、夫が食事作りをかなりやり出すようになったんです。スイッチが入ったというか、極端にやる気になって。きちんとしたごはんを作ってくれるんですよ。今やホットクックを使いこなして、低温調理なんかもしていて。

――す、すごいですね!

夫の母親がものすごく料理上手な人で、やっぱり理想像としてあるようなんです。じゅうぶん立派なごはんを作ってくれてるのに、「手抜きでごめんね」なんて言われることがあって。ちょっとそれはやめてほしい(笑)。

 

「ほしいのは『つかれない家族』 ワンオペ家事&育児に絶望した私が見つけた家族のシアワセ」(講談社)本文より

 

 

あとがき

ある日、ハラユキさんは母親から連絡を受けた。なんだろうと思えば、「あのね、ユキちゃんの本を読んでからお父さん、なんだか、やさしいの」と。父親は「典型的な昔の日本男性」で、いわゆる亭主関白タイプだった。そんな父親が『つかれない家族』を読んで、変わった。

親の姿にはやはり影響を受けていたとハラユキさんは語る。「無意識に家事育児は私の仕事」と思い込んで、自分を縛っていた。そんな縛りが、いろんな家族の話を聞くことで少しずつ解かれていった。「なんとか前よりは、つかれない家族になれた気がする」と、本のしめくくりにある。

現在パートナーとのありように悩みを抱えている方はもちろん、いつか家庭を持ちたいと考える人にも『つかれない家族』は多くのヒントと気づきをくれると思う。

『ほしいのは「つかれない家族」 ワンオペ家事&育児に絶望した私が見つけた家族のシアワセ』ハラユキ(講談社)

〇ハラユキさん プロフィール

イラストレーター、コミックエッセイスト。雑誌、書籍、広告、TV、Webなどの媒体で執筆しつつ、コミックエッセイの著書も出版。2017年から約2年間バルセロナに住んだことをきっかけに、海外取材もスタートさせる。著書に、ダンスガイド『女子が踊れば!』(幻冬舎)、産後クライシス体験を描いた『王子と赤ちゃん』(講談社)、陽気な妊娠出産ルポ『うわばみ妊婦』(マイナビ)、リセットスポットを紹介する『週末プチ冒険はじめました』(KADOKAWA)、スペイングルメ旅を綴った『オラ! スペイン旅ごはん』など。本書のもとになった連載「ほしいのは『つかれない家族』」は現在も東洋経済オンラインで連載中。

(写真:MEGUMI   撮影場所:小杉湯となり 編集:笹川かおり