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2021年09月08日 17時58分 JST | 更新 2021年09月08日 18時25分 JST

「持続可能なアボカド」を選ぶために知っておきたいこと。アボカドのプロに聞いた

アボカド栽培で大量の水を使用するために干ばつが起きている、アボカドによってマフィアの抗争が起きている、だからアボカドは「悪魔の実」?目を凝らしてみると、違う風景が見えてくる。

「最も栄養価の高い果実」とギネスブックで認定されたアボカド。世界中で人気が高まると同時に、「アボカドはトマトの約10倍の水を使い、干ばつの原因になる」など、環境負荷を指摘する声も高まっているようだ。環境に悪いならば買わない方がいい。そう思う人もいるだろう。

しかし、メキシコのアボカド農園に足を運び、開発輸入に携わる川井篤士さんは「買わない選択をしても、環境は良くなりません」と話す。

地球や人のために知っておくべき、持続可能なアボカドづくりについて聞いた。

提供写真
川井さんが契約するメキシコのアボカド農園の様子

トマトとアボカドを比べても意味がない?

アボカドの生産量は、2007年にアメリカが輸入を全面解禁にした影響もあり右肩上がりだ。世界一はメキシコの約230万トン(2019年)。日本の輸入量(同年)は7.7万トンと、2009年と比べておよそ2.6倍になっている。

世界的に需要が高まる一方で、アボカドの環境負荷に注目する声も出始めた。ウォーターエイド「隠れた水」世界水の日報告書2019によると、「1kgのアボカドを作るために、2000リットルの水が必要」と示された。トマトの約10倍の水を使う計算だ。

Yuki Takada/ハフポスト日本版
アボカド1kgあたりのウォーターフットプリント

これに対し、川井さんは「アボカドとトマトの水の使用量を比べても意味はないのでは」と語る。

「仮にアボカドがトマトの10倍水を使うとしても、トマトの生産量はアボカドより圧倒的に多い。何か一つの作物を槍玉にあげて消費量を減らしても、ただその農作物の生産者が職を失うだけで、本質的な解決にはつながりません」

重要なポイントの一つは、環境に負担をかけない水資源の確保だ。川井さんが契約するメキシコの農園では、アボカドを育てるために水を撒くことはないという。

「私が契約している農園のある地域は降水量も十分あり、雨水だけで育ちます。出荷の際に必要な洗浄は、貯水プールに貯めた雨水を使っています。生産から出荷をするまでの過程で、生活水や地下水を使うことはありません」

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川井さんが契約するアボカド農園の貯水プールの様子

果樹などへの地球温暖化の影響を研究する農研機構(茨城県つくば市)の杉浦俊彦さんは、「米や野菜など他の作物と比べるなら、果樹であるアボカドに必要な水の量はむしろ少ない方です。りんごやミカンなど他の果実と比べてもそこまで大きな違いはない」と指摘する。

では、なぜ上述の報告書では、アボカドの水の使用量が強調されているのだろうか。「『1kgあたり』の量を出しているからだと思います」と杉浦さん。

「アボカドは一つの木から採れる果実の量が、他の果実に比べて半分くらいなんです。他の果実と比べて脂肪が多く、3倍ぐらいカロリーが高い分、一つの実を作るのにたくさん光合成をしてエネルギーを使う必要があるからです。重量ではなくカロリーあたりの水の使用量を考えた方が妥当ではないでしょうか」

また、水の使用量よりも、森林が農地に変わっていることを重視すべきだと杉浦さんは訴える。

「アボカドの生産はメキシコなど一部地域に集中してしまっており、どんどん農地を開拓しています。世界の温室効果ガス排出の約1割が森林を伐採し農地などに転換したことによって発生しています」

Yuki Takada/ハフポスト日本版
アボカドの生産量TOP5

メキシコのアボカド農園と契約する川井さんは、苗木を育てる場所を開拓する際、その土地の森林の60%を残すことにしているそうだ。

「すべての農作物は土地や水の資源を使います。だからこそ、地域ごとに環境負荷を考慮しながらアボカドを栽培することが重要ですし、それは生産者や供給側の責任です。それを『アボカドを食べすぎる消費者』のせいにするのは、論点がずれていると感じます」

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川井さんが契約するアボカド農園で、森林環境を活かしながら苗木を育てている様子。

アボカドが原因で抗争が起きている?

川井さんが提携している農園があるメキシコ・ミチョアカン州では、急激に伸びたアボカドビジネスが組織犯罪グループの標的になってしまった。「みかじめ料」を払わせたり、農家の家族を誘拐し身代金を要求したりなど、暴力的な搾取に現地の農家は苦しめられている。近年はアボカド農家を守るための自警団が生まれ犯罪組織への抑止力にもなったが、いまだに危険な地域は少なくない

川井さんに現地の様子を聞くと、「メキシコシティから車で農園まで行く途中、『抗争が起きている』と自警団に足止めされたことは数回あります」と話す。

もちろんメキシコ現地の人は今の危険な状態を望んでいるわけではないが、アボカド農園を手放すことが抗争の根本的な解決につながるわけでもない。

「事実として、アボカドの生産者たちが置かれている状況は知ってほしい。しかし、環境負荷やマフィアの抗争など、ネガティブな事象を繋ぎ合わせてアボカドを悪者にしても、正しい理解につながるわけではありません」

持続可能なアボカド作りって?

持続可能なアボカド作りのためには、何が必要なのだろうか。杉浦さんは、「使われていない農地を活用する形で地産地消を目指す必要がある」と語る。

「日本で売られているアボカドのほとんどは輸入品ですが、輸送する際に温室効果ガスが発生しますよね。一方で、日本は使われていない耕作放棄地が多く、温暖化によってアボカドを栽培できる地域が増えています」

一方、川井さんは、どのように環境に配慮してアボカドを育てているか、適正な取引が行われているかなど、生産者や仕入れをする商社が積極的に情報開示をするべきだと考える。

「例えばメキシコのアボカド農園は家族経営が多く、各農園から集荷業者がアボカドを集め、パック業者に売り込み、私たちの食卓やレストランなどに届くことが多いです。ただ、集荷業者を通すと農園一つ一つの実態を把握するのは難しい。トレーサビリティの確立は今後の大きな課題だと思います」

個人が持続可能なアボカドのためにできることは?

最後に、日本で環境に配慮したと証明された「持続可能なアボカド」を手に入れることはできるのか聞いてみた。杉浦さんも川井さんも、「手軽に手に入れるのは難しい」と見ている。

川井さんは「フェアトレード認証マークをとるか検討をしていますが、認証をとると人件費や工数がさらにかかり、価格を上げざるを得ません。認証マークをとったアボカドをどれだけの人が選んでくれるのか分からないのが現状です」と話す。

それでも、「持続可能なアボカド」のために、消費者にもできることがあると言う。

「まず、事実として起こっていることを認識して、環境や人に優しいアボカドを見つけたら購入するようにしたり、SNSでシェアしたり…そうした行動の積み重ねが、生産者側を動かすことにつながります」

「最近のSDGsの機運はいいなと思っています。良いものと悪いものを少しずつ選別していこうよという風潮があると、ちゃんと良心的にやっている事業者が報われます。その結果、消費者の暮らしにとっても価値のあるものが残ります。いい流れが生まれてほしいです」

「疲れたから夕飯を作るのめんどくさい」
「手抜き料理って思われるかも」
「もっと食べたいけど、ダイエットや健康が気になる」
「環境にも身体にも良い食べ物って美味しくなさそう」
「ヴィーガンをはじめたいけど、周りに言いづらい」
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