「食材(特に野菜)を使い切らなければ」強迫観念に襲われる…。使い回しのコツは?

第18回 白央篤司の「家事の“ごはん作り”担当の皆さん、おつかれさまです!」

新型コロナの影響から家にいる時間が増え、ごはんを家で食べる機会が増えました。家事の大変さがあらためて浮かび上がります。

日々のごはん作りを担当されている方、毎日本当におつかれさまです!

炊事に関するお悩み、共有していきませんか。そして「誰かに作ってもらっている人」も、ぜひ読んでください。ねぎらい合うためのヒントが、必ずやあると思います。

東京都・ありささん・40歳

「食材を使い切らなければ」という強迫観念に襲われるのがおっくうです。

料理は比較的好きなのですが、ひとり暮らしなので「買っても使いきれないかも」という不安があり、特に野菜にそう感じます。レシピのとおりに作りたくても「これはなくてもいいか」「他のもので代用するか」と妥協することが多いです。

食材の使い回しがうまくできればあまり悩まないかもしれないので、使い回しの工夫や、代用をしても妥協に感じないコツなどを教えていただければ嬉しいです。

お悩みを寄せてくださり、ありがとうございます。食材の使い切り、むずかしいですよね。私もそうなんです。食材を買い込んで、3、4日以内ぐらいできれいに片づくと、スッキリ気持ちがいいのと同時にどこかホッとします。

私は料理をはじめて25年以上、共同生活の炊事担当になって6年目ですが、いまだに食材をうまく使いまわし、無駄なく使い切っていくことを「かんたん」だと言い切れません。後ろめたい話ですが、時にダメにしてしまい、捨ててしまうことだってあります。

と聞いて、「そんな難しいことなのか」とは思わないでほしいんです。自炊して生きていく以上、一切の無駄を出さないというのは「無理」と考えるぐらいでも、私は「やむなし」と思うから。

もちろん、フードロスを肯定するような気持ちはまったくないんです。食べものを大切にするのは当たり前のこと。「食材をダメにすることなど気にせず、どんどん料理していきましょう」なんて乱暴を言うつもりはなくて。

ではなぜ「無理もやむなし」的なことを言うかといえば、「食材をダメにしてしまったことがショックで、料理をしようと思えなくなった」「食材を腐らした罪悪感を引きずってしまい、料理に積極的になれない」という声をあまりにも多く聞くから。ありささんも過去にそういう経験があるのではないでしょうか。

「無駄を出さず、食材を大切に使い切る」ことは理想ですが、そこを真面目に追求しすぎても生活はつらくなりがち……と私は思うんです。理想的なほうを目指しつつも、そうできなかったときの自分を責めないでほしい。

食材のロスを少なくしていくには、料理により慣れていくことが大事なのであって、ロスを気にするあまり料理から離れてしまってはもったいない。「簡単にできることでもないから、気にしすぎないで」とエールを送りたい気持ちもあります。そして「使い切らなければ」と考えるありささんは、料理に対してとても誠実な人だなと思いますよ。

さて使い切りの工夫ですが、野菜の場合だと私はそのときあるものを細かく刻んで、とりあえず水で一緒に煮てしまうことが多いです。味つけは一切しません。熱がとれたら保存容器にうつして冷蔵庫で保存します(保存容器はきれいに洗って乾かしたもので)。使い切りは3、4日を目安に。

白央篤司

あとはそのときの気分で、味噌を溶いて味噌汁にしてもいいし、お酒と醤油少々、でおすましにしても(味が薄いと感じたら、だしの素を少々)。コンソメを入れて洋風スープにしても(上の写真はニンジン、玉ネギ、長ネギを刻んで一緒に煮ておいたものにコンソメを入れて、溶き卵を加えて煮たもの)。そこにトマトジュースとケチャップ少々、バターもちょっと入れてトマトスープにしてもいいですね。カレールウを入れてカレーにしても。

大根、ニンジン、タマネギ、セロリ、ゴボウ、カボチャ、パプリカ、カブ、ジャガイモ、アスパラ、キャベツ、白菜、ブロッコリー、カリフラワーなどがこのスープの素には適しています。味噌汁には合わなそうに感じる野菜もあるでしょうが、試してみてほしいです。けっこうなんでも味噌汁って合いますよ。

青菜類は使い切れなければ、ゆがいて保存容器に入れて冷蔵するのがおすすめ。さらにいえば、買ってきたらボウルに冷水をはって20~30分ほどつけてください。その後に水切りしてからビニール袋などに入れて冷蔵保存すると、あとの持ちが違います。ホウレン草、小松菜、チンゲン菜、春菊などはこのやり方で保存するといいです。

白央篤司

キノコ類なら、下のかたいところを切っておけば、そのまま冷凍できます。解凍いらずで、そのまま煮たり炒めたりして大丈夫ですよ。私は数種のキノコの他、刻んだ油揚げ、安いときに買っておいたチクワやさつま揚げなどの練りものを冷凍常備しています。いずれも汁ものに加えるのに便利。あと、ベーコンやソーセージを手頃なときに買って、使いやすい大きさに切って冷凍するのもおすすめ。先の野菜スープに加えるとコクが出ておいしい。冷凍したものは2カ月を目安に使い切るようにしています。

また、メインとなる食材はツナ缶やサバの水煮缶など、長く保存できるものでレシピを覚えるのも、使い回ししていく上で便利です。私は面倒なときなど、サバやイワシの醤油煮や味噌煮缶詰をメインにして、先の野菜たっぷりのスープを副菜代わりにして1食にするのもよくやります。

長くなりましたが、とりあえずコツはこのへんで。気になったものがあれば、トライしてみてください。食材に対しての慣れが増してくればくるほど、レシピに対しての不安感もきっと減じてくるはずです。ありささんの食卓がより楽しく、より気軽なものになりますように。

※引き続き、日々の自炊、食事の用意に関してつらいこと、悩んでいること、大変に感じていること、こちらから自由にお送りください。お名前(ハンドルネーム可)、年齢、できればお住まいの地域もご記入ください。

白央篤司(はくおうあつし)

1975年生まれ。「暮らしと食」、郷土料理やローカルフードがメインテーマのフードライター。CREA WEB、Hot Pepper、サイゾーウーマン、hitotemaなどで連載中。主な著書に『にっぽんのおにぎり』『ジャパめし』『自炊力』『たまごかけご飯だって、立派な自炊です。』など。家では炊事全般と平日の洗濯、猫2匹の世話を担当。Twitterブログ

(編集:笹川かおり)

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