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2021年10月08日 09時45分 JST | 更新 2021年10月08日 09時54分 JST

富士急ハイランド、聴覚障害者の乗車拒否を謝罪。専門家は「個人のヒューマンエラーではない」

園側は当初、「安全上の理由」のためだと説明。乗車を断られた客は、「障害者差別解消法が施行されて5年以上経つにも関わらず、いまだに今回のような問題が起きているのが現状」と憤る。

時事通信社
富士急ハイランドのアトラクション

富士急ハイランド(山梨県)は、聴覚障害者の客がアトラクションに乗ろうとした際にスタッフが乗車を断ったとして、公式サイトにお詫び文を発表した

園側は当初、「安全上の理由」だと説明し、聴覚障害者ではない付添人がいない場合は乗車できないと客に伝えていた。

障害者の安全が確保できないことを理由に、施設側が障害者の利用を拒む問題は過去にも起きており、専門家は「認識のアップデートが必要」と指摘する。

 

何があったのか

乗車拒否にあったという聴覚障害者のAさんによると、10月初旬、Aさんは聴覚障害のある友人3人と富士急ハイランドを訪れた。

手話で会話をしていたAさんたちは、ジェットコースターに乗ろうとした際、スタッフから声をかけられ、筆談で「申し訳ございません。耳が聞こえない方だけでのご乗車はできない規則になっています」と断られたという。

Aさんは、以前にも富士急ハイランドを訪れ、「付添人」なしでもアトラクションに乗ることができていた。

そのため、Aさんたちは同園のスタッフら2人に対して「今までは乗れた」と伝えたが、「規則が変わったため(付添人なしでは)乗れなくなった」の一点張りだったと証言する。

さらに、このジェットコースターだけでなく、園側から「ここにあるすべてのアトラクションはご乗車できません。付き添いの方がいらっしゃる場合はご乗車できます」と説明されたという。

Aさんは「当時の私たちは、規則が変わったことに憤りを覚えると同時に、そのことをホームページなどに記載していなかったことを疑問に感じました。規則が変わる前に、バリアフリーの観点で対策を練っていなかった点にも疑問を持ちました」と振り返る。

Aさんたちはその日、いずれのアトラクションにも乗ることができなかった。

 

富士急「スタッフが誤認」

富士急ハイランドは10月5日、乗車拒否の事実を認め、公式サイトで謝罪文を発表した

この中で、「当園スタッフの乗車基準の誤認によって本来ご乗車可能なお客様に乗車をお断りするという対応により大変ご不快な思いとご迷惑をおかけしましたこと、そして多くのお客様に誤解と不信感を与えてしまいましたことを、心よりお詫び申し上げます」とつづった。

 

富士急ハイランド
富士急ハイランドは、聴覚障害者への不適切な対応を公式サイトで謝罪した

富士急ハイランドの広報によると、アトラクションの乗車基準では、以下の4点を満たすこととしている。

・安全な乗車姿勢を保つこと
・緊急時の避難の際に、自立歩行による非常階段の昇降、狭い通路での自立歩行や長時間の歩行ができること
・非常時等にアトラクション乗物内での待機ができること
・その他、緊急時に状況を把握し自力で安全に避難ができること、健康面に不安や異常がないこと、落下する恐れのある補装具を外すこと

さらに、園のガイドラインでは「緊急時の対応が困難な方は付添人が必要」と定めているという。聴覚障害者は本来、付添人が必要となる対象者に該当しないが、乗り場のスタッフと、その上司にあたるもう一人のスタッフは「該当する」と誤認し、乗車を断る対応をしたと説明している。

富士急ハイランドは、Aさんらに謝罪をした上で、「今後このようなことがないように、スタッフに改めて教育を行います」と話している。

障害者差別解消法は、事業者に対し、「障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない」と定めている。正当な理由なく障害を理由としてサービスの提供を拒否・制限することや、障害者ではない人につけない条件を障害者につけて権利利益を侵害することを禁止している。

 

「個人のヒューマンエラーではない」

障害学が専門の星加良司・東京大准教授は、今回のケースについて「正当な理由なく利用拒否が行われ、障害者差別解消法が禁止する不当な差別的取り扱いにあたると考えられる事例」と指摘する。

富士急ハイランドは、「スタッフの誤認」が原因だと説明している。

これに対し、星加准教授は「乗り場のスタッフが不適切な対応をしただけでなく、『上司に判断を仰ぐ』ことでそれを正せる機会があったにもかかわらず誤った対応をしてしまった。そのため単純な個人のヒューマンエラーではなく、組織としての対応に問題があったと言わざるをえない」とみる。

「不当な差別的取り扱いを禁止する法律は、事業者が独自に決めるガイドラインよりも上位にあるという点がスタッフ間の研修で共有されていたかも検証するべきです」

 

 「保護する対象」ではなく「権利の主体」

「安全の確保」を理由に、付添人のいない障害者が施設で利用を断られるケースは過去にもあった。

 

時事通信社
富士急ハイランドの絶叫アトラクション「高飛車」(2012年撮影)

2018年には、「レゴランド・ディスカバリー・センター東京」(東京都港区)を訪れた聴覚障害者4人が、耳が聞こえないことを理由に入館を断られた。施設側は、障害者差別解消法に違反するとして国などから改善を求められたことを受け、「誤った対応だった」と謝罪した。

運営会社は、入館を断った理由について「付き添いのない障がい者の方の入場は、安全確保に不安があるためお断りするという誤った認識を抱いていた」と説明していた。

こうした不適切な対応を繰り返さないために、事業者はどうするべきなのか。

星加准教授は「『安全上の理由』は、あたかも錦の御旗のように、障害者の権利や参加機会を制約する切り札として機能し続けてきました。障害者を『脆弱な存在で保護する対象』ではなく『権利の主体』として捉えるという、事業者側の認識のアップデートが必要です」と提言する。

Aさんは「障害者差別解消法が施行されて5年以上経つにも関わらず、いまだに今回のような問題が起きているのが現状です。『安全が確保できない』という理由をつける前に、聴覚障害者に話を聞いたり、他の施設で行っている対応を調べたりと手段は色々あるはずです」と指摘。「今回のような問題がなくなることを願っています」と訴えている。

(國崎万智@machiruda0702/ハフポスト日本版)