中国「爆買いの祭典」に異変。「○○兆円」の速報なし...「グリーンと低炭素」が猛プッシュされた理由は?

「GMV(流通総額)を遥かに超えたところに価値がある」。背景には、政府の締め付けも?

中国の「爆買い」を象徴する祭典に明らかな異変が起きている。

「1」が4つ並ぶ11月11日は「独身の日」。毎年この時期には通販プラットフォームが安売りの祭典を開き、数兆円にものぼる流通総額が大々的に報じられるのが恒例だ。

だが、2021年は派手な金額の速報を取りやめ、「グリーン」と「低炭素」を主役に据える。変化の背景には、習近平指導部の政策がもたらした影響がありそうだ。

アリババの本社キャンパス(中国・杭州市)
アリババの本社キャンパス(中国・杭州市)
提供:アリババグループ

■初登場の「緑色会場」

中国では、11月11日をめがけて実施される安売りセールを、日付にちなんで「ダブル・イレブン」と呼ぶ。始めたのはEC最大手・アリババだが、競合の京東(ジンドン)なども参加し、激しい競争が繰り広げられる。

このうちアリババは2020年、期間中(11月1日〜11日)の流通総額が4982億元(約7兆7000億円)を記録。中国全体の消費の潜在力を示す数字としても見られてきた。

しかし今年は、例年発表される流通総額の速報は見送った。速報は「お祭り感」を演出する装置だっただけに、異例の措置だ。

アリババが今年前面に押し出すのは別の領域。それが、環境負荷低減や省エネなどを意味する「緑色(グリーン)」と「低炭素」だ。

アリババのダブル・イレブン特設サイトには、環境負荷が少ない商品などを集めた「緑色会場」が初めて出現。並ぶのはいずれも、エネルギー効率などに関する中国国内の認証を獲得した商品で、その数およそ50万点にも及ぶ。

「緑色会場」のモバイル画面
「緑色会場」のモバイル画面
天猫(T-mall)画面

眺めてみると、省エネを謳った洗濯機・エアコンなどの家電や、有害な化学物質を含まないとする食品などがずらり。中国政府が「新エネルギー車」として位置づける電気自動車(EV)やプラグインハイブリット車(PHV)なども特集されている。

新エネルギー車の特集。NEVとも略される。
新エネルギー車の特集。NEVとも略される。
天猫(T-mall)画面

日本企業の商品もラインアップされている。東芝の炊飯器、エプソンのプリンター、それに水資源の節約につながるとしてTOTOの便座など多岐にわたる。

アリババ側も「グリーン消費券」と題する合計17億円分のクーポンを利用者に配布することで、低炭素などを意識した購買体験を広める。

こうした狙いについて、アリババの董本洪(クリス・タン)最高マーケティング責任者は10月に開かれたオンライン記者会見で、「我々の焦点は流通総額から持続可能な発展へと移っている。モノを売るだけではなく、ユーザーがサステナブルな消費観を持てるよう後押ししていきたい」と話している。

今後は、アリババ側もパートナー企業と協力し、低炭素をテーマとした商品開発にあたる方針だという。

■2つの政策と一致

アリババのこうした動きは、習近平指導部が推進する政策と一致する。

習近平国家主席は2020年の国連総会で、二酸化炭素排出量を2030年までにピークアウトさせ、60年には実質ゼロにする方針を打ち出した。

COP26(国連気候変動枠組み条約締約国会議)を控えた10月27日に発表された「気候変動に対する政策と行動」白書では、二酸化炭素排出量の削減が順調に進んでいるとアピール。「グリーンと低炭素が新しい社会の風習となる」と銘打っていた。

さらに11月1日には、外交部の汪文斌(おう・ぶんひん)副報道局長が「ピークアウトからカーボンニュートラルまでには、EUで71年、アメリカで43年、日本で37年かかるとされるが、中国は自らに30年という時間を課している。中国は世界で最も強度のある排出量削減に取り組み、大国としての責任を果たす」と話すなど、地球規模の課題である気候変動対策で存在感を放ちたいとの思惑も透ける。

もう1つの方向性は「共同富裕」だ。

「共に豊かになる」という意味で、8月に習近平国家主席がスローガンとして打ち出した(概念自体は以前から存在していた)。すると、アリババは約1兆7000億円の拠出を発表。今回のダブル・イレブンでも、11月4日時点で慈善団体などへの寄付につながる購買プログラムの活用件数が12億件にのぼったと発表している。

中国ではここのところ、IT企業に対する締め付けが強まっている。中でもアリババは2020年に子会社・アントの上場が中止となったのを皮切りに、独占禁止法違反で3000億円を超える罰金を課されるなど、継続して逆風に晒されてきた。アリババとしては、自社の活動が習近平指導部の意向と一致することを示す狙いもありそうだ。

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