災害時でもしっかり栄養補給できる非常食とは?具体的な食材などを紹介

万が一の災害の際でもしっかり栄養補給ができる非常食について、農林水産省の『災害時に備えた食品ストックガイド』(2019年)と、東京農業大学名誉教授・小泉武夫先生の考察を基にまとめてみました。
ウェザーニュース

3月11日、東日本大震災から11年を迎えます。以降も熊本地震(2016年)や令和元年東日本台風(2019年)など、大きな災害が襲うたびに「非常食」の重要性が見直されてきました。とりわけ近年では、家庭における食品の備蓄を災害時という「非日常」の存在でなく、「日常の一部」として無理なく取り入れることの大切さが求められています。

日頃から家庭内に備蓄しておくべき食品がどんなものかを考えるとき、最も大切なのが「しっかり栄養補給ができること」です。万が一の災害の際でもしっかり栄養補給ができる非常食について、農林水産省の『災害時に備えた食品ストックガイド』(2019年)と、東京農業大学名誉教授・小泉武夫先生の考察を基にまとめてみました。

備蓄意識が大きく向上

アンケート結果
ウェザーニュース
アンケート結果

ウェザーニュースでは2月24~27日の4日間、「非常食、何日分備えてますか?」のアンケート調査を実施しました。全国の各世代、9495人から寄せられた回答によると、平均備蓄日数は3.09日。東日本大震災直前の2010年の1.87日に比べて、大きな増加をみせています。

震災直後の2012年に2.29日に増え、以降はほぼ横ばいでしたが、2019年の2.36日から増加の度合いは高まり、今年初めて3日を超えました。

都道府県別では宮崎県の3.56日を1位として、和歌山県(3.53日)、宮城県(3.52日)が続いています。東日本大震災で大きな被害を受けた宮城県を和歌山県が上回ったのは、間近な危機が叫ばれている「南海トラフ地震」の震源想定地点を近海に控えているからかもしれません。

日常消費し災害時も使える食品をストック

農水省の「食品ストックガイド」では、過去の災害時のライフライン復旧状況を踏まえて「最低3日分~1週間分×人数分の食品の家庭備蓄が望ましい」とし、さらに「ローリングストック」の重要性についても訴えています。

ローリングストックとは、普段使いの食品を少し多めに買い置きしておき、賞味期限を考えて古いものから消費し、消費した分を買い足すことで、常に一定量の食品が家庭で備蓄されている状態を保つための方法とされています。

いわゆる「災害時の非常食」だけでなく、「日常で使用・消費し、災害時にも使える食品」をローリングストックして、バランスよく備えておくことが大切だといいます。

栄養バランスを考えた備蓄食品とは

それでは、家庭で備蓄しておく食品はどのような観点から選べばいいのでしょうか。「ストックガイド」では、日頃から栄養バランスや使い勝手を考えて、各家庭に合った食品を選ぶことが大切だとしています。

また、小泉先生は「災害時に最低限意識しなければならないことは、三大栄養素を確保することです」と話し、次のように続けます。

「まず、糖質はコメや餅、雑穀、根茎類、果物などから得られます。次に、たんぱく質は基本的に肉・魚介類から摂るものですが、家庭になければ『畑の肉』といわれる大豆製品から摂取してください。最後に、脂質は肉・魚介類のほか、調理用油として使う菜種油、大豆油、ごま油からも摂れます。

ビタミンとミネラルも三大栄養素と合わせて、可能な限り摂取するようにしてください」(小泉先生)

それでは実際にどのような食材をストックすべきか、主菜、副菜などの食事の構成ごとに具体的な食材を紹介します。

栄養補給できる非常食
ウェザーニュース
栄養補給できる非常食

▼主菜=タンパク質を多く含むもの

まず主菜です。災害直後は炭水化物を多く摂取しがちで、栄養バランスを考えないと体調不良や病気の原因になってしまいます。不足しがちなたんぱく質を摂るために、主菜(食事のメインになるおかず)として、魚介類や肉類の缶詰が手軽で経済的。缶詰は長期保存も可能です。

そのほか丼やカレー、パスタソースなどのレトルト食品・フリーズドライソース類、充填豆腐やかつお節、桜エビ、煮干しなどの乾物も有効です。

「かつお節は70%以上がタンパク質、そのほかが旨み成分でできています。そのまましゃぶって食べてもたくさんの栄養を摂取できる優れものです。また、高野豆腐も50%はタンパク質、脂質が30%で、さらにビタミンやミネラルも豊富に含まれているのでおすすめです」(小泉先生)

▼副菜=ビタミン・ミネラル・食物繊維の供給源

災害時には、野菜不足からビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素が不足しがちで、便秘や口内炎を発症しやすくなります。そのため副菜として、日持ちのする野菜を多めに買い置き、野菜ジュースやドライフルーツ、乾物も用意しておくといいでしょう。インスタントみそ汁や即席スープなども準備しておきましょう。

「切り干し大根は、非常時に心強い栄養源となります。生の大根はほとんどが水分ですが、切って干すだけで糖質とミネラルがぐんと増加します。

さらに、梅干しなどの漬物も常備しておくとよいでしょう。梅干しの強い酸味はクエン酸を中心とした有機酸で、整腸作用や食欲増進、殺菌作用が期待できます。漬物は保存食として有名ですが食物繊維もたくさん摂れるため、非常時でも成人病の予防に役立ちます」(小泉先生)

▼主食=エネルギー源となるもの

主食には、パックご飯や餅、麺類など炭水化物が豊富なエネルギー源となる食材を揃えます。

「水道や電気が止まりご飯が炊けない時は、パックご飯などを用意しておく以外に、焼き米にして食べる方法もあります。また、干し芋(乾燥芋)をストックしておくのもおすすめです。ご飯や餅がない場合でも、芋があれば炭水化物に事欠くことはありません」(小泉先生)

▼果物=ビタミン・ミネラルを補うもの

ビタミンやミネラルを手軽に補える果物を常備しておくことも大切です。ドライフルーツは市販されているものもありますが、手作りすることも可能です。

「杏やリンゴ、レーズンなどを乾燥させておくと保存できます。特にレーズンは濃密な糖質、カリウム、カルシウム、ポリフェノール、食物繊維なども豊富です」(小泉先生)

その他にも、味噌や塩などの手軽に使える調味料や、ナッツ類などのお菓子も手軽に栄養補給できるのでおすすめです。特に羊羹は「保存が効く上にタンパク質やミネラルが豊富なので、優れた非常食にもなる」と小泉先生はいいます。

水の備蓄を忘れずに

最後に、水は必ず備蓄しておきましょう。

以前は乾パンやビスケットのように開封するだけで食べられる非常食が主流でしたが、ものを食べる時には飲料水は不可欠です。お湯が用意できればレトルト・フリーズドライ食品が食べられ、食事の幅を広げてくれます。

外出中の災害に備え、ペットボトルの飲料水も「持ち歩き用品」としてチョコレートなどとともに備えておくようにしましょう。

備蓄食品はかつて「一時しのぎのあまりおいしくないもの」というイメージがありました。しかしいまでは、味にこだわった缶詰やレトルト食品などのバリエーションも増えてきています。

いつ襲われるかわからない災害に備えて、ローリングストックを心がけながら、普段もおいしく食べられる「好みの非常食」を見つけてみてはいかがでしょうか。
>>【関連記事】ウェザーニュース 減災調査2022
>>その他のニュース記事をアプリで見る

参考資料など