テレビ番組の登場人物、男女で「役割」にも違い。ジェンダーバランス調査から見えたこと

ニュースの当事者や主人公、解説者は男性が女性より圧倒的に多く、発言を紹介される際の「名前の表記」の有無にも差があった。

中高年の男性が物事を解説し、若い女性が感想を述べるーーテレビ番組で見かけるそんな構図に「モヤモヤ」とすることはないだろうか。

テレビ番組に登場する人物のジェンダーバランスについて、男性・女性の比率や年齢層、担う「役割」の違いにも着目して調べた調査結果が発表された。

調査からどんなことが見えたのか。

ニュース番組のイメージ写真
ニュース番組のイメージ写真
Tashi-Delek via Getty Images

NHK放送文化研究所がテレビ番組全般の登場人物(①)と、ニュース番組の登場人物や役割(②)について、それぞれ2021〜2022年の一定期間調べて調査報告をまとめた

その結果、女性の出演者数はテレビ番組全般で4割、ニュース番組では3割にそれぞれ届かなかった。ともに女性の出演者は若い世代が多く、男性は中高年が多かった。

出演者の役割も男女で異なり、ニュース番組では当事者や主人公、解説者は男性が女性より圧倒的に多かった。また、発言を紹介される際の「名前の表記」の有無にも差があった。

女性は若い出演者が多く、男性は40代以降にピーク

調査にあたったのは、メディア研究部の大竹晶子さん、小笠原晶子さん、青木紀美子さん。

イギリスやフランスの公共放送では、出演者や制作者のジェンダーバランスを継続的に調べ、番組作りに反映している。イギリスのBBCでは、番組などに出る男女比を等しくする「50:50プロジェクト」に取り組んでいる。

日本国内ではこうしたデータを継続的に調べたものがあまりなかったことから、調査を企画した。

①では、2021年6月6日〜12日、NHKと在京民放5局の全番組(アニメ、映画、海外ドラマ、再放送を除く)の出演者のべ8480人について、性別、年代、番組ジャンル、職業・肩書きを民間調査会社のメタデータ(番組内容のテキスト情報)を用いて集計した。

集計によると、出演者全体の性別は女性39.6%、男性60.4%。

年代別では、女性の出演者は20代が最も多く、30代以降は減少。男性は40代が最も多く、30代以降はどの年代も女性より出演者数が多かった。

番組ジャンル別ではバラエティー番組で男女の出演者数の差が特に大きかった。

NHK放送文化研究所提供
NHK放送文化研究所

②のニュース番組の調査では、2021年11月と2022年1月のそれぞれ平日5日間ずつ、NHKと民放5局で午後9時以降に放送している主要ニュース番組を対象に、発言している、もしくは字幕などで発言が引用されているのべ2294人の性別、年齢層、役割、話題、職業、名前表記の有無を調べた。ただし、実際に番組を視聴し、ナレーションや字幕情報で確認できない場合は見た目で推測するため、性別や年齢層が実際とは異なる可能性がある。

ニュース番組の登場人物は女性28.8%、男性68.7%、不明2.5%。

年齢層別では、女性は19〜39歳が最も多く40代以上になると減った。男性は40〜64歳が最も多かった。

役割別でみると、スタジオレギュラーでは全体の進行役や専属リポーター、気象解説者では女性が多く、ニュース解説者やニュースコメンテーター、スポーツコーナーの進行役では男性が多かった。

NHK放送文化研究所
NHK放送文化研究所

「名前の表記」の有無にも差

女性は若い出演者が多い一方で、男性は40代以降にピークを迎えるーー。2つの調査でともに共通して見えた傾向だ。

テレビ番組を見ていてなんとなく感じるジェンダーの「アンバランス」。番組全般の調査を担当した大竹さんは「ぼんやりと『そうなのかな』と感じていたイメージが、数字として可視化されたと思います」と語る。

ニュース番組調査の中心になった小笠原さんも「数字にして見ると、やはりインパクトがありました。テレビは社会の男女格差の実態を映し出しているところもあるのだと思いました」と語った。

調査では、数や年代だけではなく「役割」にも着目した。

特にニュース番組では、ニュースの当事者や主人公として登場する数(のべ人数)は、男性が女性の3.5倍、スタジオにレギュラーで出演する解説者は4倍、VTRなど単発で登場するニュース解説者では6倍となった。

さらに、字幕などで「名前の表記」があるかないかも調べた。取り上げる分野の権威や役職に就く人は発言時に名前が表記されることが多いことを踏まえた。

「名前あり」で発言しているのは、男性が圧倒的に多かった。女性は街頭や一言インタビューで登場することが多く、必ずしも名前が紹介されていないことも背景の一つにあるようだ。

NHK放送文化研究所

視聴者「らしさ」の押しつけに違和感

こうしたテレビの女性・男性の取り上げ方を、視聴者はどう見ているかについても調査した。2021年11月、調査会社に登録している18〜69歳の視聴者(有効回答1164人)に、女性や男性、LGBTQを含めた多様な性の取り上げ方などに違和感や疑問、不快感を抱いたことがあるかについて尋ねた。

若い世代ほど、違和感などを抱くことが「よくある」「ときどきある」と回答する人が多い傾向にあった。自由記述の回答からは、固定観念の押しつけに対する疑問や、ジェンダーバランスや多様性への配慮を求める意見が寄せられた。

回答の一部抜粋(取り上げ方で違和感などを抱いた内容)

・「男のくせに情けない」「男なんだから」「男らしく」「男気」などの発言(男性10代)

・男性が仕事をして女性が家事をするのが当然のような描かれ方(男性30代)

・男はこうあるべき、女はこうあるべきと押し付けるようなセリフ回し(女性20代)

・ドラマやアニメで「女医」「女性弁護士」というふうに男性が基本の職業といった表現(女性40代)

視聴者調査の報告をまとめた青木さんは「WEBアンケートなので、世論調査のように国民全体の意見を反映するものではない」ということを踏まえた上で、「自由記述にもあるように『らしさ』の押しつけへの違和感を感じている方が一定程度いることが明らかになりました。さらに違和感などを抱いているのは若い世代ほど多い傾向がうかがえます。こうしたデータが、テレビ番組やその取材・制作について考えるひとつの材料になればと思います」と述べる。

一方で、調査には限界や課題もあるという。

番組全般の調査では使用したメタデータの性別分類が男女に限られ、どちらにも当てはまらない人を数えることができていない。ニュース番組の調査では外見で判断せざるをえないケースもあり、その場合、記録した性別や年齢層が実際とは異なる可能性もある。また、発言の長さや内容などは分析に入れることができていない。

文研ではこうした課題も念頭に置いてデータを参照してもらうとともに、今後も継続して調査を行い、女性・男性のバランスだけではなく、その他の視点でも多様性が反映されているか調べていきたいという。

「名前の出ない役割」画面上でも

調査のアドバイザーをつとめた東京大学大学院情報学環の田中東子教授(メディア文化論)に結果の受け止めや意義を取材した。

ーー今回の調査にはどのような意義があると思いますか。

テレビ番組やニュース番組に出ている人に男女の偏りがあるのではないか。そうモヤモヤと感じている視聴者も多いのではないかと思いますが、そのモヤモヤがはっきり見える結果が出たことが重要です。また、単に数の不均衡があるだけではなく、肩書きや役割についての違いも可視化されました。

ニュース番組の調査からは、特に解説者のジェンダー間の偏りが明らかになりました。

世の中の出来事について意味付けをしたり、方向づけたりする役回りが男性に偏っていたという結果は非常に興味深く、今後の研究にも生かされると思います。

ーー名前の表記の有無にも差がありました。

海外の映画業界の調査で、男性は作品のクレジットに名前が載る仕事を割り当てられ、女性はクレジットに載りにくい役割に従事しているという傾向がすでに明らかになっていました。

女性は家庭の中でも「シャドーワーク」と呼ばれる家事労働を担わされることが多いですが、職場でもシャドーワーク的な、名前の出ない仕事を担う傾向にあります。

テレビのオンスクリーン(画面上)でも同じような傾向があるのではないかと考えていたため、今回の調査を行っていただいたのですが、本当に名前と肩書が表示されるのは圧倒的に男性が多いという結果になりました。

ーーニュース番組では、女性がメインキャスターを務める番組も複数あります。

キャスターは局や番組の顔としてニュースを読んだり話を進行したりするのが主な役割であって、個人の見識を表明したり解説したりする役割は多くありません。

スクリーンの中に女性を増やそうという意思は制作現場にも強くあると思いますし、特定の役割において増えていること自体はとても良いことだと思います。

ただ、数を増やすだけでなく、その内実がどうかというところを細かく見ていく必要があると思います。

ーー調査結果を発表した3月の「文研フォーラム」では、参加者からこうしたデータに対して「気にしすぎでは?」という趣旨の意見も寄せられ議論になりました。

ジェンダーの問題について語ると、「気にしすぎだよ」「気のせいだよ」という意見がよく出てきます。今回の調査のように数や役割の違いが数字で可視化されていても、です。

「気にしすぎ」という人の中には、その人の周囲では具体的なジェンダーの問題は起きていないのかもしれません。もしくは、実際には起きているけれども、それが問題として認知できていないだけかもしれません。

5月に亡くなった社会学者のケイン樹里安さんは人種差別の問題などについて発信するなかで、「『気にしすぎだ』と言えるのは、マジョリティの特権だ」と言っていました。

差別をされていない特権的な立場にいるから、躊躇なく「気にしすぎだ」「誰も差別をしていない」と言えるのだと思います。

ーーテレビは視聴者が減っているとも言われますが、そんな中でもテレビが変わる意味をどのように捉えていますか。

メディアと社会の関係は循環的です。

メディアのあり方が社会に反映されるのか、社会のあり方がメディアに反映されるのか。どちらか一方ではなく、双方ともに影響を与えながらものの見方やステレオタイプといったものが日々せめぎあっています。

そのように循環している中で、やはりテレビが変わることはすごく大事なことだと考えています。

視聴者が減っていると言われていますが、ツイッターのトレンドを眺めていると、結局、テレビの話題ばかりがあがっています。いまはテレビ番組のネット配信も増え、世代や住んでいる地域や国に限らず、たくさんの人が見ることができるという意味でやはり影響力は大きいと思います。

ーー調査をどのように活用してほしいですか。

テレビ局で番組を作っている方たちにとってインパクトのある結果だったと思います。自分たちにとっての常識がジェンダーやダイバーシティの観点に照らすと、もはや主流のものではない、ということが調査を通じて見えてきたと思います。制作現場の方々が議論をするきっかけにしてほしいです。

日本のテレビ番組やニュース番組のように、同じタイプの識者ばかりが出演して話していると、多様な視点が盛り込まれません。

だからやっぱり新聞記者やテレビの制作者には、多様な視点を盛り込む労力は惜しまないで欲しい。あるタイプの人たちの意見だけが優先され、重要なものとして伝えられるというのは、メディア本来の役割を自ら放棄していることになってしまうと思うんです。

もちろんどんな意見でも良いというわけではありませんが、基本的人権や公平性、公共性の観点に照らして、社会を作るための重要な意見であれば、より広く、コメントを取る努力をしていった方がいいですよね。