なぜ『スプラッシュ・マウンテン』は閉鎖されるの?米・ディズニーで2023年1月に終了。日本も「時間の問題では」の声

「スプラッシュ・マウンテン」は閉鎖され、黒人の少女が主人公の映画『プリンセスと魔法のキス』をテーマとしたアトラクションが導入される。その背景と経緯とは。
アトラクション「スプラッシュ・マウンテン」のロゴ
アトラクション「スプラッシュ・マウンテン」のロゴ
Getty Images

“名物アトラクション”が、パークからついに姿を消す日が決まった─。

米・ディズニーは12月2日、フロリダ州にあるウォルト・ディズニー・ワールドのアトラクション「スプラッシュ・マウンテン」を2023年1月23日に閉鎖すると公式ブログで発表した

同社は2020年6月、「スプラッシュ・マウンテン」を閉鎖し、黒人の少女が主人公の映画『プリンセスと魔法のキス』をテーマとしたアトラクションを導入すると明らかにしていた。

ディズニー屈指の人気アトラクションの閉鎖の背景には何があったのか。これまでの経緯を改めてまとめた。

米のスプラッシュ・マウンテン、なぜ閉鎖?経緯は...

そもそも、スプラッシュ・マウンテンは日本の東京ディズニーランドのみならず、海外のパークでも大人気のアトラクション。

日本では丸太の形をしたボートに乗り込み、終盤には最大傾斜45度・落差16mの滝つぼをめがけて落下するというスリルを味わえる

幅広い世代に人気のアトラクションのため、パークを訪れたことがある人なら一度は乗ったことがあるという人も多いかもしれない。

スプラッシュ・マウンテン
スプラッシュ・マウンテン
Getty

アトラクションのモデルとなっているのが、1946年に公開されたディズニー映画『南部の唄』。同作は小説を原作とする実写とアニメーションを組み合わせた作品で、アメリカ南部の農場を舞台に白人の少年と農場で働く黒人の交流を描いた物語だ。

劇中で歌われる「Zip-a-Dee- Doo-Dah」は口ずさんだという人も多い歌で、ディズニー映画の中でもよく知られている楽曲。1947年にはアカデミー賞で歌曲賞を受賞している。

映画が公開された当時も黒人に対する差別は根強かった為、劇中の“白人と黒人が交流する”という描写に対し、「現実と乖離している」などという批判が寄せられたという。

全米黒人地位向上協会(NAACP)は、一部の黒人の描き方をめぐってディズニーに抗議。その後、ディズニー側が公開を自粛したことで、1986年以降にアメリカで再び公開されることはなかった。

Walt Disney Companyの元CEOで、現在は会長を務めるボブ・アイガー氏は同作について「今日の世界においては(作品は)適切ではない」と述べていた

また、イギリスのガーディアン誌は2019年11月、「1946年に公開された映画(『南部の唄』)は「Disney+」で配信されないが、一方では陰湿なレイシズムは、ウォルトディズニーの“暗い歴史”を思い出させる重要な役割を果たす」などと報じていた

「スプラッシュ・マウンテン」のベースとなった映画『南部の唄』
「スプラッシュ・マウンテン」のベースとなった映画『南部の唄』
Getty

「Black Lives Matter」で注目⇨批判が再燃

スプラッシュ・マウンテンの変化を求める声の多くは、2020年5月に黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警官に首を押さえつけられて死亡した事件をきっかけに世界各地に広がった抗議活動「Black Lives Matter(黒人の命は大切だ)」のうねりを受けたものだった。

Twitterでは当時、「黒人の描写が問題で“お蔵入り”になったのに、なぜ現実のアトラクションとして存在しているのか」「アトラクションが映画をベースに作られたのなら、作品が配信されていないという事実を受け止めて改善しなければならないのでは」などという意見が寄せられた。

一方で、「楽曲を聴くと元気になる。アトラクションもなくならないでほしい」という声もあった。「Black Lives Matter」の抗議活動は、ディズニー以外にも映画の過去作品を含めたエンターテイメント業界に大きな影響を及ぼした。

ディズニー社は2020年6月、この批判などを受け「スプラッシュ・マウンテン」を閉鎖し、黒人の少女が主人公の映画『プリンセスと魔法のキス』をテーマとしたアトラクションを導入すると発表した。同作は日本でも人気が高い。

発表によると、新たなアトラクションは、映画『プリンセスと魔法のキス』をテーマにしたもので、物語での“最後のキス”の「その先の物語」を描くことになるという。2024年のオープン予定となっている。

同作は、ディズニー史上初めて、黒人の“プリンセス”を主人公にした作品だ。

ウォルト・ディズニーの広報責任者のマイケル・ラミレス氏は、題材の変更について「(テーマパークでは)長い歴史の中で、幾度となくアトラクションのアップデートを行い、新たな魔法を追加してきましたが、スプラッシュ・マウンテンの改変は、今の時代において非常に重要なことだと考えています」との考えを示した上で、「新たなコンセプトは毎年来園してくださる多くの人々の多様性に訴えかけるようなものになる」とコメントしていた。

一方、カリフォルニア州のディズニーランドにある「スプラッシュ・マウンテン」については、閉鎖の時期を発表せず「後日、情報を共有する」とした。

日本では同アトラクションについて、リゾートを運営するオリエンタルランドからの発表はない。2020年6月にはハフポストの取材に対し、当時の広報担当者は「現時点でのアップデートはない」と話していた

SNSでは「日本でも無くなるのは時間の問題なのでは」「昔から大好きだから、なくならないでほしい」などと様々な声が寄せられている。

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