「そのうち治りますよ」LGBTQの子どもが直面する差別と偏見。親たちは差別禁止法の制定を「明日にも」求める

性的マイノリティは深刻な差別などから、自殺リスクが高いといわれます。当事者の親たちは一刻も早く、性自認や性的指向による差別を禁止する法整備を望んでいます。
性的マイノリティの子どもの命を守る法整備を求める当事者の親ら
性的マイノリティの子どもの命を守る法整備を求める当事者の親ら
性的マイノリティの子を持つ親有志提供

岸田文雄首相の前秘書官の性的マイノリティに対する差別発言を受け、「LGBT理解増進法」の成立に向けた動きが進む中、当事者の子を育てる親の有志が2月26日、「子どもたちの命を守る法整備を」と題したオンライン記者会見を開いた。

現在議論されている理解増進法案は、差別禁止を明記しない理念法になっており、有志は「社会の深刻な差別によって、自ら命を絶ってしまう人もいます。今必要なのは、差別の禁止を明記した上で理解を広げるという形の法律ではないでしょうか」と指摘。

LGBT差別禁止法の制定、もしくは理解増進法に「性的指向や性自認を理由とする差別の禁止規定」を入れることを求め、小倉将信共生社会担当相に要望書を提出する予定だ。

この法整備への賛同を3月5日まで、インターネット上で募っている。

◆要望書の内容は?

要望書では、性的マイノリティの子どもたちが置かれる現状について説明。

▼当事者の子どもたちの多くが、社会の深刻な差別によって苦しみ、自ら命を絶ってしまう人たちもいる

▼子どもたちの中には、親にこそカミングアウトしづらい現状があり、家族から性のあり方を否定されてしまう人も少なくない

▼どんな環境であっても、当事者の子ども達が安心して生きられる社会を実現するために、まず法律で「差別はダメ」と明確に示し、その上で理解を広げていくことが必要

などとした上で、

性的マイノリティの子どもたちの命を守るために、「性的指向や性自認を理由とする差別的取扱いをしてはならない」と禁止規定を盛り込んだ上で、社会全体に対する理解を広げる法律の制定を一刻も早く実現することを求めている。

◆ 差別禁止、「明日にでもお願いしたい」

呼びかけ人の1人で、同性愛者の子どもがいる愛知県在住の松岡成子さんは、度重なる政治家の差別発言を聞く度に当事者の若者から「しんどい」という声を聞き、「おろおろ心配することしかできなかった」と打ち明ける。

性的少数者や結婚の平等(同性婚)をめぐり、前秘書官が放った「隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」といった発言について、「誰かの命を奪うトリガーになりかねない。もう限界だと感じたのです」と指摘。

差別をする大人がいるなら、差別を止めようとする大人もいることをちゃんと表明すべきではないかと思いました」と話した。

また日本がG7議長国として開催される5月の広島サミットまでに差別禁止法などの法整備を求める動きが、企業や支援団体にも広がっている。松岡さんは「G7の前にでも一刻も早く、明日にでもお願いしたいです」と訴えた。

◆「そのうち治りますよ」10歳に満たない子のまわりでも、心無い言葉

会見では親たちが、性的マイノリティの子どもを育てる中で感じた、「差別が禁止されていない社会」の歪さや問題点について話した。

東京都の鈴木さんの子どもは、10歳未満で、生まれたときに割り当てられた性別とは違う服装を好んで着ているという。鈴木さんは周囲の大人たちから「心配しなくても、そのうち治りますよ」「母親が子供の要望をそのままのんできたから、そうなってしまったのでは?」などと心無い言葉をかけられてきた。

鈴木さんは「差別という言葉も知らず、『大人は正しいことを言うものだと信じている』我が子に、差別的な言葉が届かないよう守ること、『女の子の服を着ていても、男の子の服を着ていても、ママはどんなあなたでも大好き』と伝えることしかできません」と吐露。

このままの世の中では将来、子どもが数々の攻撃を受けてしまうのではないかという不安を抱えているといい、こう訴えた。

「私たち大人のする差別の大元は、ほとんどが幼少期から周りの大人たちから受け継がれてきた価値観ではないでしょうか」

「『差別禁止』や『同性婚』の法制化をすることにより、性的マイノリティに対する差別の現状を知り、心が動き、理解しようとする大人たちは大勢いるはずです」

「子どもたちが、これからの未来を創っていきます。LGBTQ+について、今まで考えてもみなかったという方も、どうか対岸の火事と思わず、立ち止まった上で理解し、『差別を禁止』することが大きな一歩となると思ってほしい。そして、どうかご賛同いただきたいです」

◆就活も働いてからも、差別の連続

福岡県の中島さんの子どもは、戸籍の変更をしていない30代のトランスジェンダーで、小学1年生の時に不登校になった。オンライン時代の就職活動では、男女どちらかの性別を入力しなければ次の画面に進めず、会社説明会に参加できなかった。

面接まで進んでも「トランスジェンダーは雇えませんから帰ってください」と打ち切られることもあった。働き始めてからも、上司から「この仕事をトランスジェンダーに任せていいのか」などと言われることも。子どもは最近やっと、「職場に迷惑をかけてはいけない」と、一人で耐えていたことを話せたと言う。

中島さんは「うちの子どもが経験したことは、法整備によって『 LGBTQ への差別は許されないことだ』という明確なメッセージが発信されれば、必ず改善されるはずだと思います」と強調。「次世代の LGBTQ の子どもたちに『大丈夫だよ。安心して大人になって!』と言える社会をつくるための法整備を、一刻もはやく作ってください」と訴えた。 

<取材・文=佐藤雄(@takeruc10)/ハフポスト日本版>

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