「LGBTQへの人権侵害なくすため日本に働きかけて」G7首脳らに訴え。日本人の同性配偶者と暮らす外国人男性の支援団体

「日本はG7参加国のなかで唯一、同性関係を認めず、LGBTQへの差別を禁止する法律もない」

「LGBTQの人たちの人権侵害をなくすために、日本に働きかけて」

3月1日、そんな公開書簡をG7(主要7カ国)各国の首脳や欧州連合(EU)に送った人たちがいる。

3月1日に岸田文雄首相を含むG7各国の首脳らへ送った公開書簡
3月1日に岸田文雄首相を含むG7各国の首脳らへ送った公開書簡
Lila’s Life in Tokyo 外国人同性パートナー在留資格訴訟を応援する会(©kayin)

送り主は、アメリカで日本人の同性パートナーと結婚したにもかかわらず、日本に安定して滞在できる在留資格を認められてこなかったアメリカ人のアンドリュー・ハイさんが国を訴えた裁判の支援団体(Lila’s Life in Tokyo 外国人同性パートナー在留資格訴訟を応援する会)。

ハイさんは日本人男性の配偶者としての自らに「定住者」という在留資格を与えることなどを求め、国と裁判で争っている。

書簡では、「G7諸国の国籍をもつ人たちが、日本人の同性パートナーと日本で生活を送ることがきわめて困難」と説明。「国際同性カップル」の法的地位を認めることや、カップルが日本でともに暮らせるように外国人のパートナーに在留資格を付与するといった措置を日本に働きかけるように求めた。

日本の岸田文雄首相にも、同じ内容の書簡を送った。海外の首脳らに宛てた書簡は、各国の言語に翻訳して送付した。

海外の首脳らには、各国の言語に翻訳して書簡を送付した
海外の首脳らには、各国の言語に翻訳して書簡を送付した
Lila’s Life in Tokyo 外国人同性パートナー在留資格訴訟を応援する会(©kayin)

「G7参加国で唯一、同性関係を認めず、差別禁止法もない」

ハイさんが国と争っているのは、日本人男性の配偶者としての自らに「定住者」という在留資格を与えることなどを求める裁判。2022年9月の東京地裁の判決はハイさんの請求を退けたものの、ハイさんに「特定活動」という別の在留資格を認めなかった国の対応は「客観的には違法」との見解を示した。

弁護団によると、ハイさんの「定住者」としての在留資格を求める訴えそのものは棄却されているため、地裁の見解は国に対して拘束力を持たない。入管は地裁判決後も、ハイさんに「特定活動」の在留資格を与えず、住民登録をしたり国民健康保険に入ったりできない不安定な「短期滞在」という在留資格を認めるにとどまったという。

3月15日には、ハイさんの在留資格をめぐって東京高裁で控訴審が始まる。

控訴審の目前でハイさんの裁判の支援団体がG7各国の首脳らに送った書簡では、「日本はG7参加国のなかで唯一、国レベルでいかなるかたちの同性関係も認めず、LGBTQの人たちにたいする差別を禁止する法律もない」と指摘。「最近の日本の政治家や官僚によるLGBTQの人たちにたいする差別的な発言は、日本国内だけでなく、国際的にも注目されている」と強調した。

東京地裁の判決を受け、支援者らに思いを語るアンドリュー・ハイさん(左)と、配偶者である日本人の男性(2022年9月)
東京地裁の判決を受け、支援者らに思いを語るアンドリュー・ハイさん(左)と、配偶者である日本人の男性(2022年9月)
金春喜 / ハフポスト日本版

その上で、「これは日本人だけの問題ではない」として、「G7諸国の国籍をもっている人たちが、日本人の同性パートナーと日本で生活を送ることがきわめて困難」と現状を説明。「日本におけるLGBTQの人たちの人権侵害をなくすために、日本が具体的かつ実効力のある措置をとるように働きかけていくことを強く求める」と訴えた。

G7各国の首脳らへ送った公開書簡(全文)

この書簡は、G7が「民主主義」、「法の支配」、そして「人権」という共通の価値観にもとづいた理念をもって参集していることを再確認するためのものです。いうまでもなく、「人権」とはセクシュアリティにかかわらず、すべての人の権利を包含するものです。

ご存知のように、日本はG7参加国のなかで唯一、国レベルでいかなるかたちの同性関係も認めておらず、LGBTQの人たちにたいする差別を禁止する法律もなく、トランスの人々が性別変更を法的に認められるためには侵襲的で危険な医療行為を強いられている国です。そして、最近の日本の政治家や官僚によるLGBTQの人たちにたいする差別的な発言は、日本国内だけでなく、国際的にも注目されています。

これは日本人だけの問題ではありません。日本の差別的な入管政策によって、G7諸国の国籍をもっている人たちが、日本人の同性パートナーと日本で生活を送ることがきわめて困難な状況になっています。さらに、日本は婚姻の承認において諸外国と相互互恵関係にあるはずにもかかわらず、諸外国において法的に認められた同性間の婚姻を認めようとしていません。

2019年、米国で法律婚をしている日米の同性カップルが、二人のパートナーシップ関係に基づく在留資格が付与されるべきだとして日本で裁判をおこしました。2022年、東京地裁は「特定活動」の在留資格を認めないことは法の下の平等を保障する日本の憲法に反すると判断しました。しかし、この地裁判決にもかかわらず、日本政府と入管は米国人パートナーに在留資格を付与しておらず、この状態を是正するための措置をなんらとっていません。まったく同じような状況におかれている国際同性カップルが日本にはたくさんいます。そして、この状況を是正するためには、日本の法律を改正する必要はなく、行政上の是正をすればよいだけなのです。

今年5月には広島でG7サミットが開催されます。

日本におけるLGBTQの人たちの人権侵害をなくすために、日本が具体的かつ実効力のある措置をとるように働きかけていくことを強く求めます。その第一歩は、国際同性カップルの法的地位を認め、彼ら・彼女らが日本でともに暮らせるように在留資格を付与することです。

どうぞよろしくお願いします。

〈取材・文=金春喜 @chu_ni_kim / ハフポスト日本版〉

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