「算数LDで生理日を予測できず、毎日ナプキンをつけていた」発達障害による生理の困りごととは?

計算することに困難が認められる学習障害の1つ、算数LDで生理周期が数えられない。ADHDで手先が不器用な面があり、ナプキンがうまく装着できない…。発達障害があることで直面する生理の問題は様々です。
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30歳のとき、自分が発達障害であることが判明した。

私は小さい頃からずっと生きづらさを抱えてきたが、その原因が発達障害だったことがわかり、いろいろと腑に落ちた。

発達障害はグラデーション状の障害のため、特性は様々だ。私はLD(学習障害)とADHD(注意欠如・多動症)とASD(自閉スペクトラム症)傾向のトリプルで、特に計算することに困難が認められる算数LDが強く、勉強に支障をきたしていた。

いまだに繰り上がり・繰り下がりのある暗算ができないし、金銭管理もできない。小学校の算数の授業に完全についていけなくなったのは3年生のとき。掛け算九九は覚えればいいだけだったので呪文を唱えるようにして必死に覚えたが、「わからない数字を◯(記号)に置き換えましょう」という内容になったら、なぜ仮の記号を置くのかという疑問がわき、ちんぷんかんぷんになってしまった。

どんなに努力をしても、親が高価な教材を用意してもテストは60点以上取れない。しかし、算数以外の教科は100点を取れていたので、当時は単に算数が極端に苦手なだけだと思っていた。

それが、30歳になって発達障害の特性によることが分かり、あのときの努力は何だったんだろうと、今になって感じている。

周期が数えられず毎日ナプキンを…

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そして、小学5年生の春に初潮を迎えた。発達障害のない人には盲点かもしれないが、発達障害の特性は生理にも様々な困難をもたらす。

私の場合、算数LDによって生理周期がうまく数えられず、生理日の予測ができない。多くの人は28日周期というが、私には周期という概念が理解できず、カレンダーのどこからどう数えたらいいのかわからなかったり、数えている途中で数がわからなくなったりした。

それに、思春期の頃は生理周期が安定しないため、余計わからなかった。いつも突然生理がきて、下着や布団を汚した回数は数え切れない。そして、そのたびに母親から強く叱責された。

いつ生理がくるかわからなくて下着を汚してしまう。対策するにはどうしたらいいだろうと小学生なりに考えて、至った結論は、いつ生理がきてもいいように毎日ナプキンをつけることだった。しかし、そのことが母親に知られ「蒸れるでしょう!」とこれまたガミガミ怒られた。

ほかにも、きちんとナプキンをつけているつもりなのに、ADHDの特性で手先が不器用な面があるためうまく装着できておらず、下着や服を汚してしまうことが多く、昼でも夜用の大きなナプキンをつけていたこともあった。大きいため当然デリケートゾーンはゴワゴワしていた。でも、下着や服を汚すよりマシである。

発達障害のある私が抱える生理の困難

小6のある日、友達の家に泊まりに行った。生理用品は持参していなかった記憶がある。そんなときに限って生理がきてしまうのだ。

友達と友達の弟と3人でベッドに入り、翌朝起きると友達に借りたパジャマとシーツが真っ赤に染まっていた。やってしまった…と絶望に打ちひしがれながら、友達の母親に「生理がきて汚してしまったのですが…」と告白。ちなみに友達はまだ初潮を迎えていなかった。そのとき、友達の母親から「自分で洗ってね」と言われ、お風呂場を借りて汚したパジャマと下着とシーツを手洗いした。

その後のことはよく覚えていないが、こんなに迷惑をかけてしまい、もう二度とこの友達の家に遊びにいけないなと思ったのは覚えている。それ以降、どこかに泊まりにいくときは必ずナプキンを多めに持っていくようにしている。

小学生の頃は生理で下着を汚すことが多かったが、大人になってからは少し改善してきた。それでもたまにナプキンからズレた場所に経血がついてしまうことがあったため、タンポンとナプキンを併用し、汚すことはほとんどなくなった。

私の他にも発達障害で生理に悩んでいる人がいないかリサーチしたところ、「婦人科に行ったときに生理周期を聞かれて答えられず医師や看護師から怪訝な顔をされた」「ナプキンの在庫管理が下手で、買い溜めをしているわりに職場でのストックを切らしがち」「ピルの飲み忘れが多い」「タンポンを入れているのを忘れて2本挿入してしまっていた」といったエピソードが寄せられた。

私の「生理日の予測ができない問題」は、スマホが普及してきた頃、生理日予測アプリが誕生し少し解決された。生理日を記入すると翌月の生理日がわかるもので、それを利用することによって予測できるようになったのだ。

ピルの休薬期間=出血の日

しかし数年前、あまりにも生理痛がひどく婦人科で検査してもらったところ、子宮内膜症が見つかり、治療用ピルを服用することになった。

子宮内膜症とは、本来子宮の内側にあるべき子宮内膜組織が子宮以外の場所にできて剥離を繰り返す病気で、生理中に強い痛みを伴う。治療法としては低用量ピルを服用して子宮内膜を薄くしていく方法が一般的だ。

ピルにはいろんな種類があるが、そのほとんどが毎日飲むものではなく「休薬期間」がある。その休薬期間に生理のような出血が起こる(厳密には生理ではない)。

私が使っていた生理日予測アプリはピルを服用すると設定が代わり、生理日の予測ができない仕様に変わってしまうものだった。だが、私は休薬期間=生理という認識で、ナプキンやタンポンの準備をするようになった。

ピルを飲みはじめて2、3年経った昨年、子宮頸がん検査の際にエコー検査を受けたところ、子宮内膜症が完治していることを医師により知らされた。子宮内膜症が完治しているのなら、ピルはもう飲む必要がない。

しかし、私は出血の際に毎回痛みを伴うため、痛み止めを飲んでいた。ピルを飲む前は痛み止めが効かなかったのだが、ピルを飲み始めたら痛み止めの効果があったこともあり、医師との相談の結果、ピルの服用を続けることにした。何より、ピルを飲んでいた方が生理日の予測が簡単だ。

発達障害のある人のなかには、私のように生理日が予測できなかったり、生理中にうまく処置ができなかったりする人が一定数いる。私は試行錯誤を繰り返してなんとか今、生理と付き合っている。

発達障害の特性で生理の困りごとを抱えている方は、生理日管理のアプリの使用やピルの服用、自分に合った生理用品(ナプキンの種類やタンポン)を探してみてほしい。

(取材・文:姫野桂 編集:毛谷村真木/ハフポスト日本版)