女性利用者の後をつける、支援場所をさらす。激化する女性支援活動への妨害行為【調査結果】

「個別の団体の力(で対応できる範囲)を超えている」と社会的な理解や行動を求めています。
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利用者の女性があとをつけられた─。

代表・スタッフへの殺害予告や危害をほのめかされた─。

複数の女性支援団体が、こうした妨害行為や誹謗中傷を受けて活動に支障をきたしていることが分かった。女性支援に詳しいマスコミ関係者や有識者などでつくる「女性支援を守るメディア連絡会」が調査を行った。

調査に協力した支援団体は「支援を必要とする方を守りながら活動を続けるというのは本当に難しい状況」「個別の団体の力(で対応できる範囲)を超えている」と訴えている。

ネットでの「晒し」や殺害予告、ネタとしての消費も

女性支援団体をめぐっては、東京都若年被害女性支援事業の委託を受けた一般社団法人「Colabo」の不正会計を疑う投稿がSNS上で広がったことなどに端を発し、攻撃的な言説が広まった。

朝日新聞デジタルなどによると、Colaboの会計については住民監査請求が行われ、都の再調査では書類の不備などを理由に一部経費と認められないとされた。しかし全体では委託料を超える経費がかかっていたため返還請求はされていない。団体側は「不正はなかった」としている。

団体の活動に対する妨害も起き、行き過ぎた行為が問題に。厚労省は3月1日、各自治体に向けて、妨害行為については必要に応じて警察への相談も検討するよう求める文書を出している

今回「女性支援を守るメディア連絡会」が行った調査は、女性支援団体への妨害行為の実態を調べるため、8団体に対して4月に実施。結果からは、活動の継続可否に関わりかねない過激な攻撃を受けている実態や、女性への支援が「ネタ」として消費される理不尽さが伝わってくる。

オンラインでの誹謗中傷については、協力したすべての団体が「受けていると認識している」と回答。5団体が、代表・スタッフへの危害・殺害予告や活動場所への危害予告など、脅迫や危害のほのめかしにも遭っていた。

また、半数の4団体が、事業所に妨害や野次馬などを目的とした無関係な人物が訪れたと回答。事務所や支援場所の住所や写真をネット上でさらされた、支援場所にも無関係な人物が訪れた、といった報告もあり、利用者の安全に直結する問題に。調査を行った連絡会は、「現地レポートや生配信がネタとして消費されている」と指摘している。

相談者や利用者への「なりすまし」と思われる連絡への対応に困ったことがあると答えたのは4団体。リソースを削られ、本来支援を必要としている人と連絡が取りづらくなるという弊害も生まれている。

個人を特定されたくない、居場所を知られたくないという利用者が多い中、妨害行為の被害は利用者にも及んでいる。

「利用者、相談者を特定しようとするなど 『支援対象の安全やプライバシーに関わる情報を探ろう』とする動きがありましたか?または、そういう恐れを感じますか?」との質問には8団体中6団体が「はい」と回答。利用者がつけられた、利用者がSNS上で特定され付きまとわれた、といった報告もあった。

「それでも現場を回さなければいけない」

支援団体は、こうした妨害行為への対応に苦慮。

調査に協力したある支援団体は「一番心配なのは、自治体が疲弊して、私たちのような団体と関わるのを避けようとすること」と指摘。実際、コロナ禍で家庭内暴力の危険性が注目されたことをきっかけに女性支援に乗り出した企業が、妨害行為が広がっていることを受けて「関わらないでおこうという動きも出始めている」とした。

別の支援団体は「支援を必要とする方を守りながら活動を続けるというのは本当に難しい状況になっている」「晒されるたびに活動できる方法が減っていってしまう」と訴える。

妨害行為が続く中、「それでも現場を回さなければいけない」とした上で、「支援活動を弱らせる動きに抵抗していきますが、個別の団体の力(で対応できる範囲)を超えている」と社会的な理解や行動を求めた。

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