映像で体感する「災害」のリアル 阪神淡路大震災の取材映像アーカイブで知ってほしいこと

阪神淡路大震災は発生の瞬間とその後の復興プロセスが映像でつぶさに記録された、世界で初めての都市直下型の大地震です。災害のリアルを体感することで、地震の備えや被災後の暮らし方などを知ってもらおうと、当時の取材映像が一般公開されています。
震災で倒壊した高速道路(神戸市東灘区)
震災で倒壊した高速道路(神戸市東灘区)
朝日放送グループホールディングス株式会社

眠る映像」を社会財に

1995年1月17日午前5時46分、淡路島北部を震源地とする地震が発生しました。都市部で起きた直下型地震は近畿地方を中心に甚大な被害を及ぼし、約64万棟の住宅が被害を受け、6434人が犠牲になりました。当時の、壊れた街並み、避難所で暮らす人々の姿はこの時にどうやって「生きた」のかを伝える貴重なものです。しかし、放送局において一旦撮影した映像素材はどんどんたまる一方で、ともすれば忘れ去られて、見つかれば廃棄されることもあります。これらを眠らせたままにするのはもったいない。倉庫から引っ張り出して、いろんな人に目にしてもらい「貴重な映像」「リアルな教訓」として多くの人に利用してもらいたい。そう考えて2020年、朝日放送グループホールディングス株式会社は、阪神淡路大震災時の全取材映像およそ800時間の一部、40時間近くの映像を、「阪神淡路大震災 激震の記録1995 取材映像アーカイブ」で一般公開しました。

災害を自分ごと化する 「阪神淡路大震災 激動の記録1995 取材映像アーカイブ」

アーカイブサイトでは、地図上にポイントを置き、そこをクリックすると映像クリップのサムネイルが出現します。「アーカイブ=図書館」のイメージで、本棚、文字リストを探すのではなく、地図を見て、ここで何が起こったのか?今住んでいるところでこんなことがあった…など、ユーザーがより身近に感じることで、災害を自分ごとにする第一歩となる効果が生まれています。

「阪神淡路大震災 激震の記録1995 取材映像アーカイブ」のMAP
「阪神淡路大震災 激震の記録1995 取材映像アーカイブ」のMAP
朝日放送グループホールディングス株式会社

公開直後には多くの反響があり、「災害で何が起こったのかを、どうして今まで見せてくれなかったのか?」という若い世代の声もありました。阪神淡路大震災を振り返るときにテレビに流れる映像は、あちこちから煙が立ち上る神戸の街や倒壊した阪神高速の空撮の映像で、地上の街、人の姿はほとんど出てきません。そして、我々も日々起こるニュースを放送しては次のニュースを取材撮影してといったサイクルで、後ろを振り向かず次から次へと新しい情報を探しにいき、撮影したものは過去のものとなり倉庫で深く眠りについてしまいます。もちろん、1日は24時間しかなく、いくら貴重でも全部を放送するわけにはいきません。災害から四半世紀が経過してテクノロジーも進化し、インターネットというツールがあるからこそ可能にした一般公開でもあります。

震災発生当時の記者レポートやインタビュー動画も掲載
震災発生当時の記者レポートやインタビュー動画も掲載
朝日放送グループホールディングス株式会社

明日の大人たちに知ってほしい「災害のリアル」

地震だけでなく台風、大雨など様々な災害が頻繁に起こる今、災害からどうやって身を守るのか?これは現代を生きる私たちの生活課題となっています。アーカイブの一般公開から3年以上が経過しましたが、そのあいだも「見てほしい」「使ってほしい」と考え、様々な連携や取り組みなどの活動を継続しています。

震災直後の街の様子
震災直後の街の様子
朝日放送グループホールディングス株式会社

東日本大震災アーカイブ「ひなぎく」でも阪神淡路大震災アーカイブが検索できるように国立国会図書館と連携しました。また日本だけでなく世界の人たちにも「見てほしい」と考え、アーカイブを英訳した英語版も作り、その英語版は国連防災機関(UNNDR)サイトに掲載され、世界に向けた日本発の防災・減災の取り組みとして紹介されています。

そして、今年の3月には京都大学防災研究所との共同開発した、eラーニング「大地震が起きたら私たちはどうなる」をサイトアップしました。

当時を体験した人にとっては「記憶」で何とかイメージはできるものの、大地震の「経験」も「記憶」もない若い世代に「災害の備えを!」と言っても何から考えて、何をしたら…と戸惑ってしまいます。eラーニングでは地震が起こって、まずは困ることをカテゴリーに分けて、それぞれが阪神淡路大震災ではどうなっていたのかを映像で見ることができ、「どうしたらいいのか?」を考えることができます。

eラーニング「大地震が起こったら私たちはどうなる?」
eラーニング「大地震が起こったら私たちはどうなる?」
朝日放送グループホールディングス株式会社

また、朝日放送グループホールディングスは9月17日に開催される、ぼうさいこくたい2023でワークショップに出展し、eラーニング「大地震が起きたら私たちはどうなる」を活用した防災学習の方法、可能性を考えるウェビナー方式のイベントを開催します。若い世代である「明日の大人たち」が安心して暮らせる社会を考えるきっかけになることを期待しています。

【タイトル】

防災ウェビナー:取材映像で知る「大地震が起きたら私たちはどうなる?」

ぼうさいこくたい2023公式サイト https://bosai-kokutai.jp/2023/w-03/

【日時】

9月17日(日) 16:30~18:00 (1時間30分)

【概要】

避難所の厳しい現実や、食料、トイレの実態など、都市直下型地震でどんなことが起こるのか? 関東大震災から100 年となる今年、28 年前の都市直下型地震である阪神淡路大震災のリアリティのある映像から、どのように学ぶことができるのかを考えるウェビナーイベントです。 実際にeラーニングを使用した中学校授業の報告、eラーニング授業テストケースなどを紹介し、 映像を使ったコミュニティ、教育現場での防災教育の可能性についてディスカッションします。

【開催形式】

現地・オンライン併用のハイブリッド開催

(参加無料:事前の登録をお願いします)

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ハフポスト日本版を運営するバズフィードジャパンと朝日放送グループは資本関係にあり、この記事は共同企画です。

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