「レストラン業界はゴミを出しすぎている」
そう思ったフィンランドの3人のシェフが2018年にオープンしたレストランNolla(ノッラ)。Nollaはフィンランド語でゼロを意味します。
9月19日、実際に行ってみると、平日の夜にも関わらず多くの人で賑わっていました。家具からテーブルウェア、食事まで、こだわりが詰まっていました。
廃棄物ゼロの料理、この日のメニューは?
フィンランド・ヘルシンキの中心部近くにあるNolla。石畳を進むと、「ゼロ」をかたどった看板が見えてきます。
店内はテーブルごとに置かれたキャンドルに照らされ、お洒落なムード。今夜は前菜が2品、メインとデザートのお任せコースです。
最初に運ばれてきたのはパンとクリームソース。クリームソースが入っている器をよく見ると…ワインボトルの底の部分をカットし、研磨して再利用したものでした。サワークリームとハーブのような風味が、サワードブレッドの酸味と相性抜群でした。
前菜の1つ目は「メロンと魚の刺身」。脂の乗った新鮮な魚とメロンのシャキシャキした食感、果肉の甘みがよく合います。
2つ目は「パンプキンをつかったラビオリと豚のスープ」。優しいけれど深い味わいの豚の出汁のスープとパンプキンのほのかな甘みが感じられるラビオリが絶妙でした。
メインは、パイクという魚にグリーントマトバターソースとねぎが効いたチミチュリソースが添えられた一品。パイクは国産の小型の魚で、これまで「未利用魚」だったことから「サステナブルな魚」として近年注目されている魚だそうです。
しっかりとした食感のパイク。淡白な味の白身魚に、風味豊かなグリーントマトソースやチミチュリソースが絡むと奥深い美味しさが口の中に広がりました。
食後にはとうもろこしのアイスとケーキに、抽出した後のコーヒーから作ったキャラメルソースがかけられたデザートも。優しいとうもろこしの味がするアイスとコーヒーキャラメルソースがマッチしていました。
品質を落とさずに「ゴミゼロ」、どうやって?
Nollaには、衛生上必要なトイレを除き、キッチンにも食事をするスペースにもゴミ箱がない。スタッフのルイスさんは、「地球を犠牲にすることなく、本当に質の高い料理と食材を提供するために、すべての商品の調達の段階から再利用可能な容器を使用しています」と説明します。
「例えば牛乳パックを使わずに再利用できる大きなバケツのような容器に変えてもらったり、使い捨てのダンボールではなく何度も使える木箱で野菜を運んでもらったり…。私たちの哲学にマッチした生産者の皆さんに柔軟に対応してもらっています」
通常「廃棄」されてしまう残り物のパンやコーヒー、紅茶の出がらしも、彼らにとっては十分活用できる「食材」。パンからビールを作ったり、コーヒーの出がらしからコーヒーリキュールを作ったり、紅茶の出がらしからクッキーやノンアルコールのドリンクを作ったりしているといいます。
「地産地消にもこだわっているので、例えばここではレモンは使えないんです。ここではレモンが育ちませんから。代わりになる酸っぱいものとしてルバーブやバラの実を使うなど、常に知恵を絞ってメニューを考えています」
最後の最後まで使い切って、それでもどうしても出てしまった食材の廃棄物は、店内にあるコンポストで肥料にするそうです。テーブルのすぐ横にありましたが、匂いは全くありませんでした。
「鳥の骨やコルクなど、どうしても活用できないものはコンポストします。非常に効率の良い業務用のコンポストなので、24時間で肥料になります。その肥料は食材を納品してくれる生産者たちに渡します。こうして最後まで素材を循環させています」
他のレストランにも「ゴミゼロ」は広がっている?
他にも、キッチンやテーブルの上にプラスチックはゼロ、掃除をする際は化学物質を使わないなど、徹底的にサステナビリティにこだわるNolla。今ではひっきりなしに人が訪れる人気店ですが、同クラスのレストランに比べて値段が高いわけでもありません。
この取り組みは他のレストランにも広げられるでしょうか?と聞くと、「少なくともここヨーロッパでは、すでに大きなうねりとなっていると思う」とルイスさんは話します。
「ミシュラン・ガイドが2021年から持続可能性に焦点を当てた『グリーンスター』の称号をレストランに与え始めたことによって、業界の関心は高まりました。フィンランドでは、多くのレストランがより持続可能なやり方を実践していると言えるでしょう。しかし、完全に廃棄物をゼロにしているわけではありません。廃棄ゼロのレストランが増えて欲しいと思っていますが、今の社会でここまで徹底的に持続可能性に挑戦するには難しいことも多いのも事実です」
Nollaも最初から今の仕組みを完成させることができたわけではなく、常に廃棄物をデータとして可視化し、生産者との交渉やメニュー開発で新しいサステナビリティへの可能性を見つけ、レベルの高い挑戦をし続けていることが伺えました。
他の世界中のレストランでも、100点満点ではなくても、できるところから挑戦し続けることが大事だと気付かされた夜でした。
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ハフポスト日本版は、駐日フィンランド大使館より招待を受け、現地の取材ツアーに参加しました。執筆・編集は独自に行っています。