人生の半分を刑務所で過ごし、無罪が確定した43歳の男性「赤ちゃんのように泣きじゃくった」。米国で殺人罪が覆る

22年ぶりに自由を取り戻したジョーイ・ワトキンズさんですが、冤罪で失った時間は戻ってはきません

アメリカ・ジョージア州で犯していない殺人罪に問われ、人生の半分を刑務所で過ごした男性の無罪が確定した。男性は「赤ちゃんのように泣いた」と安堵し、喜びをかみしめるが、冤罪で失った22年は返ってこない。

9月21日に無罪が確定し、地元ラジオ局WSBやCBSなどアメリカのメディアが報じている。

男性は43歳のジョーイ・ワトキンズさん。

冤罪の被害者支援に取り組む「ジョージア・イノセンス・プロジェクト」によると、事件は2000年1月にジョージア州のハイウェイ27で発生した。21歳のアイザック・ドーキンズさんが運転する車が事故を起こし、救急車で病院に運ばれたところ、レントゲン検査で運転中に頭部を撃たれていたことがわかった。ドーキンズさんはその後、死亡した。

警察は当初、当時20歳だったワトキンズさんが同夜に事故現場を通ったことを認めたこと、ワトキンズさんとドーキンズさんが1人の女性をめぐって口論していたことから、ワトキンズさんを容疑者とみていた。

その後の捜査で、警察がドーキンズさんの事故の通報を受けて数分も経たないうちに、ほんの数マイルのところで同じような狙撃が起きていたことがわかった。この類似事件に関して、ワトキンズさんにはアリバイがあることが判明。しかし、事件から12カ月後に、ワトキンズさんは友人1人とともにドーキンズさんを殺害した疑いで起訴された。

警察が目撃者から得た証言によると、ドーキンズさんが乗っていたトラックが事故を起こす前に道路上でトラブルになっていたのは「小型で古いタイプの青色の車」だった。ワトキンズさんが乗っていたのは白いピックアップトラックとは食い違っていた。

ワトキンズさんが白いピックアップトラックで出かけるところを見た人が複数おり、そのおよそ45分後に30マイル(約50キロ)離れたところで同じく白いピックアップトラックに乗ったワトキンズさんが目撃されてもいた。

しかし、ワトキンズさんは友人と落ち合って青いホンダ車に乗り換えたとされ、ドーキンズさんを待ち構えた上で時速55マイル以上(約90キロ)で走行しながらドーキンズさんを撃ったとして起訴された。

犯行が起きたとされた時刻の前後、ワトキンズさんは携帯電話で交際相手と話していた記録もあった。携帯の通話記録や基地局のデータから、狙撃があった時刻にはワトキンズさんは犯行現場から離れた場所にいたという専門家による法廷での証言もあった。

それにもかかわらず、ワトキンズさんは2001年7月2日、終身刑プラス6年の判決を受けた。

ワトキンズさんは無罪を訴えてきた。

AP通信によると、州最高裁判所は2022年12月、ワトキンズさんの裁判のやり直しを認めた。その後、地区検事局が起訴の取り下げを申請し、2023年9月21日に裁判所が認め、ワトキンズさんの無罪が確定した。

ワトキンズさんはAP通信の電話取材に、起訴が取り下げられたことを伝えられた時の様子について「赤ちゃんのように泣いたと思う。やっと本当に終わったんだと思って」と振り返った。

「ジョージア・イノセンス・プロジェクト」は23日、公式Facebookアカウントでワトキンズさんの自由を祝ったことを報告。レンガ壁の趣のあるレストランで祝われたワトキンズさんは「言葉では伝えきれないほど素晴らしい気持ちです。いつかここに座って、ビールを飲んで、心からリラックスしたいと何度思ったかわかりますか。その日がようやく訪れました。本当に感謝しています」と述べたという。

ワトキンズさんは時間をかけて人生を立て直していくことになる。

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