【結婚の平等裁判】「なぜ結婚ではダメなのか」原告の母が裁判官に訴え。東京2次地裁判決は3月14日

原告の母親は「娘たちを法律上見守ってください」と訴え、法律上同性のカップルの結婚が認めてほしいと求めました
裁判所に向かう原告ら(2023年11月30日)
裁判所に向かう原告ら(2023年11月30日)
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法律上同性のパートナーとの結婚を認められないのは違憲だとして、性的マイノリティの人たちが国を訴えている「結婚の自由をすべての人に」訴訟。

東京2次訴訟10回目の口頭弁論(飛澤知行裁判長)が11月30日に東京地裁で開かれた。

30日の口頭弁論では、原告8人と親族1人に対して本人尋問が行われたほか、2024年3月14日に判決が言い渡されることが決まった。

「国から差別されたまま死にたくない」

裁判の重要な局面である本人尋問で、原告らは結婚が認められないことで将来を描けずに苦しんできた過去や、偏見や差別による苦しみ、未来への不安などを語った。

20代後半まで周りにカミングアウトできなかったという原告の鳩貝啓美さんは、大学生の時初めて付き合った同性の恋人から、別れる際に「あなたが男だったら結婚できたのに」と言われたという。

「同性愛者には前途がないと言われたようで苦しかった。同性同士が結婚できる世の中だったら、自分を隠すこともなく、交際を重ねて将来の話もできたかもしれません」

鳩貝さんのパートナーである河智志乃さんは、以前働いていた職場で同僚や上司から「同性愛者がいると顧客から苦情が来る」「同性愛など宗教と同じ」といった偏見や差別発言をぶつけられたという。

また、鳩貝さんと住宅ローンを組もうとした際、「親族でなければダメ」と断られたこともあったほか、金融機関から異性愛者なら必要ない公正証書を2種類求められたこともあり、異性カップルとの違いに「明らかな差別」を感じたと語った。

「結婚の自由をすべての人に」訴訟では、法律上同性のカップルが現在の婚姻制度で結婚できるようにするべきか、もしくは別制度を設けるべきかもの争点の一つになっている。

この点について、東京1次訴訟の判決は「婚姻とは別の制度を設けることも可能」という判断を示した。

しかし河智さんは「別枠の制度を与えられても人々の差別意識は変わらない」と強調。異性カップルと同じように婚姻制度を利用できるようにして欲しいと訴えた。

付き合って25年のパートナーと暮らす山縣真矢さんも、「異性カップルと同じように結婚制度が利用できれば、同性を好きだということを肯定しやすく、人生設計もしやすくなる。理解が今より格段に進んでいくと思います」と語った。

「一度きりの人生で結婚という制度から排除され、国から差別されたまま死にたくはありません。憲法は、人は誰でも平等だと保障しています。婚姻の平等を実現し、未来への希望となる判決をお願いしたいです」

(左から)原告の山縣真矢さん、河智志乃さん、鳩貝啓美さん、福田理恵さん、藤井美由紀さん(2023年11月30日)
(左から)原告の山縣真矢さん、河智志乃さん、鳩貝啓美さん、福田理恵さん、藤井美由紀さん(2023年11月30日)
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ウェディングフェアで受けた差別

東京二次訴訟の原告は、同性カップルだけではない。

トランスジェンダー男性の一橋穂さんと性自認が女性の武田八重さん(ともに仮名)は異性カップルであるものの、一橋さんの法律上の性別が女性であるため、結婚が認められない。

ふたりはかつて参加したウェディングフェアで、法律上同性であるという理由でサービスを拒絶された経験があるという。

一橋さんは、「担当者と話を進めて後は契約だけとなった時に『法律上の性別が女性である』と伝えたところ、『ちょっと待ってほしい』と告げられて数時間待たされ、最終的に『同性カップルは引き受けない方針だ』と断られた」と語った。

「フェアに参加した時には男女のカップルとして契約まで進めたのに、性別を明かした途端手のひらを返したようになり、驚き、不誠実で理不尽だと感じました」

武田さんも「それまで楽しくプランについて話していたのに、突然態度を変えられ受け止められませんでした。差別をされたんだと気づき泣きながら帰った」と振り返った。

一橋さんと武田さんは、武田さんの産んだ子どもとの3人暮らしだが、結婚が認められないために、子どもの学校に一橋さんを親だと伝えられないなど、子育てでも困難を経験してきた。

証人尋問に答えた武田さんの母親は、「孫に何かあった時に、(法律上の家族ではない)一橋は何もできないため、心配です」と懸念を語った。

また、同性婚が法制化されると「社会が変わってしまう」と反対する人もいるが、それを念頭に、「どうしてパートナーシップじゃなく、結婚ではダメなのか」「法律上同性カップルの結婚を認めても世の中は何も変わらないと思う」と述べ、法律で性的マイリティの家族を守ってほしいと求めた。

「私も主人ももう高齢です。ずっと娘たちを見守ることができない。せめて法律上見守ってください」

これまでに4つの違憲判決

「結婚の自由をすべての人に」訴訟は、合計で30人を超える性的マイノリティが原告となり、法律上の性別が同じ相手との結婚が認められないのは、憲法が保障する「法の下の平等」や「結婚の自由」に反しているとして国を訴えている。

現在全国6つの地裁・高裁で進んでおり、東京2次訴訟は、最後の地裁判決になる。

同訴訟はこれまでに、札幌大阪東京名古屋福岡の5つの地裁で判決が言い渡され、そのうち大阪を除く4つで、違憲や違憲状態が言い渡された。

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