パートナーシップ制度、8年半で「人口カバー率」8割に。「理解は進んだ。だから国がLGBTQの結婚平等実現を」

「パートナーシップ制度」の人口カバー率が8割を超えた。導入自治体数は、最初の3年間では10に満たなかった。だがプライドパレードでの普及などとともに、加速度的に広がり、少なくとも392となった。
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D. Giraldez Alonso via Getty Images

自治体がLGBTQ当事者らのカップルの関係を認める「パートナーシップ制度」の人口カバー率が2月1日、8割を超えた。結婚の平等(法律上の性別が同じふたりの婚姻)の実現を求める弁護士らでつくる公益社団法人「Marriage For All Japan – 結婚の自由をすべての人に」が同日、公式Xで発表した。

パートナーシップ制度は2015年11月、東京都渋谷区と世田谷区を皮切りに始まった。制度を導入する自治体は約8年半で、加速度的に増えてきた。歓迎の声が上がる一方で法的拘束力はなく、同性カップルの置かれる実情の直接的な解決にはならないという問題も抱えている。

だからこそ求められる結婚の平等の実現について、岸田文雄首相は1月31日の衆院本会議で「国民各層の意見について、注視する必要がある」などと消極姿勢を見せた。だが2023年の報道各社の世論調査では、少なくとも過半数が「同性婚を認めるべき」と答えている。

LGBTQ当事者らからは「多くの自治体はLGBTQ当事者の人権を守るため、やれることをやってきました。同性カップルにも結婚を認めることは、国にしかできません。早く動いてほしい」との声が上がる。

◆全国で広がるパートナーシップ制度

日本では現在、法律上の性別が同じふたりの結婚が認められていない。そうした現状を受け、LGBTQ当事者らが置かれている実情や意見を自治体や議会などに届け、2015年に初めてパートナーシップ制度が導入された。

当初の導入自治体数は2016年末で5、2017年末で6、2018年末に9、2019年末で31と、普及に時間がかかった。だが多様な性に関する知識や各地のプライドパレードなどとともに、人口カバー率は2020年12月には3割、2021年9月には4割、2022年4月には5割、2022年11月には6割、2023年5月には7割と、近年は大きな広がりを見せている。

同法人によると2月からパートナーシップ制度を導入した自治体は、埼玉県秩父市、新潟県上越市、愛知県江南市、和歌山県、鹿児島県出水市。2月1日段階で、カバー人口は1億人を超え、導入自治体数は少なくとも392となった。

現在、都道府県単位で制度を設けているのは青森県、秋田県、山形県、茨城県、栃木県、群馬県、東京都、富山県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、三重県、大阪府、和歌山県、鳥取県、島根県、福岡県、佐賀県の20自治体。また全国20の政令指定都市のうち、導入していないのは宮城県仙台市のみとなった。

認定NPO法人虹色ダイバーシティによると、交付件数は2023年5月31日時点で5171組にのぼる

◆4つの「違憲判決」が出てもなお、国は具体的な議論進めず

パートナーシップ制度は、従来できなかった公営住宅への入居や、公立病院での面会や手術の同意などができるようになる可能性がある。また近年は保険など、民間企業が公的な関係の証明として認める動きも出てきた。だが性的マイノリティの権利を保障する法的拘束力はなく、結婚の平等の早急な実現が求められている。

結婚の平等を求め、30人以上のLGBTQ+当事者が国を訴えている「結婚の自由をすべての人に」裁判は、現在6カ所の地裁・高裁で進み、3月14日には札幌高裁と東京2次訴訟の判決が言い渡される

これまでの1次訴訟で5カ所の地裁のうち4カ所が違憲判決を下しているが、国はいまだに具体的な議論を進めていない。

岸田文雄首相は1月に「(同性婚を巡る)国民各層の意見、国会における議論の状況、訴訟の状況についても注視する必要がある」と述べた。かねてから、幅広い議論や、理解が進むことが必要という旨の発言をしている。

だが報道各社が2023年に行った、「同性カップルの結婚を法的に認めること」に関する世論調査では、以下の結果が出ている。

朝日新聞:「認めるべきだ」72%、「認めるべきではない」18%
毎日新聞:「賛成」54%、反対26%
読売新聞と日本ニュースネットワーク(NNN):「賛成」66%、「反対」24%

すでに多くの人が、法制化に賛成の立場をとっており、理解は間違いなく進んできたと言えるだろう。

◆「別制度ではLGBTQ当事者への差別的な扱いが残ったまま」

裁判所に向かう山縣真矢さん(左)と東京2次訴訟の原告ら(2023年9月)
裁判所に向かう山縣真矢さん(左)と東京2次訴訟の原告ら(2023年9月)
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パートナーシップ制度の人口カバー率が8割を超えたことを受け、「Marriage For All Japan ー結婚の自由をすべての人に」が公式Xで投稿したのは、「早く、性別関係なく結婚を認めてください。自治体にはできません。国にしかできないことです」という切実な思いだった。

「結婚の自由をすべての人に」裁判東京2次訴訟の原告の1人である山縣真矢さんは、パートナーシップ制度の広がりについて「理解は進んできています。だからこそ国には訴訟の結果に向き合い、早く結婚を認めてほしい」と話す。

山縣さんは2015年、中野区でのパートナーシップ制度導入を目指し、『中野LGBTネットワークにじいろ』という団体を立ち上げた。中野区は当初、なかなか動かなかったというが、LGBTQ当事者によるシンポジウムの開催などを経て、3年後の2018年8月に全国9番目に導入した。

パートナーシップ制度は最初の3年では9自治体にしか普及しなかった。だが東京だけでなく地方でも、プライドパレードを始め、多くの当事者が声を上げる動きが活発化し、相乗効果で、一緒に広がっていったと感じているという。

山縣さんは、地方で声を上げることの難しさを痛感するからこそ、努力が報われ、こういった流れができることを嬉しく思う。それと同時に、国が全く動かないことに呆れや憤りも感じている。

また活動の中で、今もなお、パートナーシップ制度を結婚と一緒だと勘違いしている人が多いことを痛感する。それに加え裁判の原告をする中で、「制度の広がりを逆手に取られて、結婚とは別制度で良いんじゃないかという方向に進んでいくのを危惧しています」と話す。

これまでの判決では、違憲判決だとしても、国が結婚と別制度を作ることも考えられるという旨の判断が盛り込まれてきた。だからこそ東京二次訴訟では、別制度ではいけないと、強く訴えてきた。

山縣さんは「結婚という制度自体に疑問もあるのですが」と前置きした上で、こう語る。

「今ある結婚制度の中に同性カップルも入れてほしい。別制度ではLGBTQ当事者への差別的な扱いが残ったままです」

「僕はもうすぐ60歳で、まわりでは亡くなる人も出てきました。一刻も早く、同性カップルにも結婚を認めてほしいと強く思っています」

<取材・文=佐藤雄(@takeruc10)/ハフポスト日本版>

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