「白人はIQが低い」。完全に“戻った”公認心理師。予約をキャンセルした私に、「そのくらいでも怖くなるの」【③】

「もう怖い話をしない」。公認心理師はメールでこう言ったが、5月には完全に“戻って”しまった。女性が次回以降の予約をキャンセルしたいとメールすると……【「私が巻き込まれた陰謀論」③】

トラウマ克服のため通っていた都内のカウンセリングオフィスで、公認心理師から陰謀論を聞かされたという女性に取材しました。

「誰でも巻き込まれる可能性がある」。そう語る女性の証言や記録をもとに、シリーズ「私が巻き込まれた陰謀論」を全5回でお届けしています。

春の匂いを感じられるようになった2025年4月。

穏やかな日の中にも、時折、突風が吹き抜けることがあった。

公認心理師もまた、あの“怖い話”を度々口にするようになった。

《海外の人達は聖書以外に道徳や正義感をつくるものがない》

彼は、私の出身地である東北の人々を「辛抱強い」とし、「日本は生まれながら生活の中に正しい心のあり方がある」と語った。

その後、当然のように「でも、キリスト教は……」と、人種を絡めた話に展開させた。

表情は穏やかで、口調も優しい。ただ、平然と「差別」に繋がるような言葉を口にする人間が、目の前に座っている。

この事実に、私の体は小刻みに震えた。

これまで、自らのトラウマを克服するため、公認心理師との信頼関係を築こうと努力してきた。

「我慢したらそのうちセラピーをしてくれる」と信じ、通い続けてきた。

ただ、彼は能登は人工地震だった》《三浦春馬はアドレノクロムを知って殺された》といった話だけでなく、差別的な話も私にぶつけるようになっていた。

もう聞きたくない。もはや信頼関係を築く相手でもないのかもしれない。

「いずれ見極めないといけない時期が来る」

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Katie Dobies via Getty Images

季節が巡り、5月になった。

街の緑が濃くなった頃、公認心理師は完全に“戻った”。

白人はIQが低く、人から奪う人種》

《白人を登場させて、世界を一回崩すことになった》

《AIによって世界が一回破壊されている》

《まずい世の中をあえて作った人が国際金融資本家》

受け入れ難い言葉の一つひとつが、無理やり頭の中に入り込んできた。

もう限界だった。

「これはセラピーでもなんでもない。私の心に必要な『薬』でもない。私の心を削る単なる『毒』だ」

カウンセリングの帰り道、私は何度も「もう、行かない」と呟いた。

そして、心を落ち着かせた後、次回以降の予約を全てキャンセルするメールを送った。

【怖い話はやめてほしいと伝えていたのに、今回も怖い話をされ、本当に苦しいので、予約を全てキャンセルさせてください】

翌日、公認心理師から返信が届いた。

【そのくらいの話でも、後になって怖くなるのですね。その怖がりのところに何か意味があると思います。こちらでの進め方が合わないということなので、キャンセルで構いません】

まるで、“私に問題があった”かのような書き方だった。

私は再びパソコンに向かい、これまでのカウンセリングで語られた“怖い話”の数々を書き出した。

【三浦春馬と竹内結子はアドレノクロムを知って殺された】

【アメリカ民主党は悪魔儀式でアドレノクロムをやっている】

【能登は人工地震だった (珠洲市がスマートシティだったから狙われた)】

【ミシェル・オバマもレディガガも実は男】

【安倍元総理は薬を盛られて潰瘍性大腸炎になった】

【習近平は神奈川で軍事兵器を発注し始めた】

【財務省はDSとつながっている】

【田中真紀子邸はアメリカによって放火された】

【ビル・ゲイツは世界人口を減らすためにワクチンを製造している】

そして、こう問いかけた。

【今まで不信感を感じつつも、『自分の心のケアに関わる話なのかもしれない』と思い、通い続けてきました。心理的ケアの観点で、このような話はどのような意味があったのでしょうか】

返信は、その日の夜に届いた。

深呼吸をして開封すると、そこには自己弁護のような“言い訳”が延々と綴られていた。

 【職場でのハラスメントの問題、副業での対人関係の問題、怒りの感情調整の問題、お仕事の業界の問題などについて話をしています】

【その中での話を意味のないこととおっしゃるのは、こちらとしては心外】

心外ーー。その一言に、思わず乾いた笑いが出た。

期待はしていなかったが、反省の言葉はどこにも書かれていなかった。

前回のカウンセリングで聞かされた言葉については、「歴史、経済の話で普通に使う用語」と説明していた。

では、《アドレノクロム》《DS》《ワクチンによる人口削減》とは何だったのか。普通に使う用語なのだろうか。

メールの中で、彼はこう言い切っていた。

【怖がらせるような話をしているつもりはありません】

私は、もう返信しなかった。

その一文を見つめながら、返信する気力を失っていた。(取材・文:相本啓太)

第4回は11月13日午前6時30分配信予定】

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