「排外主義を強く否定」知事会PTが共同宣言案まとめる。外国人は「なくてはならない存在」と明記も

共同宣言案では、「外国人が増えると犯罪が増えるなどの根拠があるとは言いがたい情報もSNS等で見受けられます」とも指摘している。
全国知事会「外国人の受入と多文化共生社会実現プロジェクトチーム」リーダーの鈴木康友・静岡県知事
全国知事会「外国人の受入と多文化共生社会実現プロジェクトチーム」リーダーの鈴木康友・静岡県知事
時事通信社

全国知事会の多文化共生などに関するプロジェクトチーム(リーダー:鈴木康友・静岡県知事)が11月11日に会合を開き、共同宣言案をまとめた

この中で、「事実やデータに基づかない情報による排他主 義・排外主義を強く否定する」と明記し、外国人の増加に対する国民の不安を払拭するため、国に対して正確なデータに基づく情報発信をするよう働きかけることを宣言した。

「外国人が増えると犯罪が増える」は「根拠があるとは言いがたい」

宣言案は、多文化共生社会の実現を目指すため、同会としての基本的立場を示すもので、三つの柱から成る。

第一の「多文化共生の推進」では、国や市町村などの関係者と力を合わせて多文化共生施策に取り組むと宣言した。

また「事実やデータに基づかない情報による排他主義・排外主義を強く否定します」と強調。「差別や人権侵害のない社会の実現を目指す姿勢のもと、感覚的に論じることなく、現実的な根拠と具体的な対策に基づく冷静な議論を進め」、すべての人が安心して暮らせる社会を作っていくとの姿勢を示した。

第二の「ルールに基づく共生と安心の確保」では、多文化共生は無秩序な外国人の受け入れや外国人の優遇を意味するものではないと説明し、違法行為や制度の不適切な利用については国と共に厳正に対処すると明記した。

その上で、日本で生活する外国人が、地域社会のルールを正しく把握できるような情報発信、相談対応、日本語学習の支援などに取り組むとした。

第三の「正確で積極的な情報発信」では、深刻な人口減少と少子高齢化を背景に、外国人がすでに製造業や建設業、農業、介護・福祉分野といった様々な業界を担い、日本社会を支える「なくてはならない存在」だとした。

一方で、そうした実態が十分に伝わっていなく、「外国人が増えると犯罪が増える、ルールを守らない外国人が多い、などの根拠があるとは言いがたい情報もSNS等で見受けられます」 と指摘した。

宣言案では、在留外国人が増加する中で、外国人による刑法犯の検挙件数が減少傾向にあることを示す統計などにも言及。国民が冷静に議論できるよう、正確なデータに基づく積極的な情報発信をするよう国に働きかけていくことも宣言している。



全国知事会によると、参院選後の7月末に開かれた会合で、複数の知事から「外国人の受け入れに関して国民の不安が高まっており、会としてのメッセージを出すべきだ」との意見が出たことを受け、プロジェクトチームが今回の宣言案をまとめた。

同会は、11月26日に開催される全体会議で共同宣言案を正式に決定する。その後、国との意見交換を進めるという。

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