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2020年12月07日 12時46分 JST | 更新 2020年12月08日 17時45分 JST

トランスジェンダーを周りの人が公表したら、どうサポートすればいい? カナダと日本の当事者が解説

エリオット・ペイジさんのカミングアウトに世界が注目。遠藤まめたさんは「昔の名前で呼ばれると、人によってはすごく動揺したり、具合が悪くなったりすることもある」と話します。

映画『JUNO/ジュノ』などで知られる俳優のエリオット・ペイジさんが、トランスジェンダーであることを12月2日に公表した後、あるツイートが大きな反響を呼んだ。 

Rich Polk via Getty Images
エリオット・ペイジさん。トランスジェンダーを公表した投稿で、自身を表す代名詞は「he(彼)」またはジェンダーニュートラルな「they」であり、「私の名前はエリオット」と綴った。

投稿したのは、自身もトランスジェンダーを公表しているカナダ在住のマーティンさん

マーティンさんが綴ったのは「トランスジェンダーの人たちに敬意を示すための基本中の基本のマナー」だ。周りの人ができることとして、マーティンさんは次のようなアドバイスを書いている。

・それまで使っていた出生時の名前で呼ばないで
・「彼女は彼になった」などの表現は絶対に使わないで
・名前や性別の代名詞(彼、彼女)を間違って使っている人たちがいたら、訂正してあげて下さい
・どんな手術をしたのか、もしくは今後する予定なのかを聞かないで
・「トランスジェンダーに見えない」という言葉は褒め言葉ではない
・間違った名前や代名詞を使っても、すぐ訂正すれば大丈夫
・「彼だっけ、彼女だっけ、どっちでもいいけど」という言い方はやめて
・サポートするために何ができるかを相手に尋ねてみてください
・正しい名前や代名詞を使うことは特別なことではなく、相手への基本的な敬意。感謝されることではありません
・ジェンダー移行のペースは人それぞれ違います。監視の目を光らせないで
・恋愛対象を変えたかどうかを聞かないで。話したいと思う時が来れば、自分から話します
・相手を尊重して敬意を表して。これってそんなに難しいことじゃありません!

マーティンさんのアドバイスには「大切な情報をありがとう」という感謝のメッセージや、もっと知りたい人からの質問など、多くのコメントが寄せられている。

名前や代名詞はとても大切

アンケートの性別記入欄や「○○女子」「○○男子」といった言葉。私たちが日常的に性別を問われ、意識させられる場面はたくさんある。

その一方で、トランスジェンダーの人たちが自分の望む性別に適合した時に、周りができるサポートについての情報はまだ少ない。

マーティンさんは「カミングアウトした人が以前に使っていた名前で呼ばないで」と書いているが、LGBTQの子どもや若者支援を続けている遠藤まめたさんも「トランスジェンダーの人たちが望む名前を使うのはとても大切なことの一つ」と話す。遠藤さんもトランスジェンダーの当事者だ。

ご本人提供写真
遠藤まめたさん

トランスジェンダーの人がカミングアウトする前に使っていた名前は、英語圏では「デッドネーム(死んだ名前)」と言われる。

「以前の名前を使ったり、性別を男性に適合した人に「彼女は」とか「女子」など前の性別を使うことは、その人をとても傷つける(こともあります)」と遠藤さんは説明する。  

「人によって個人差がありますが、昔の名前とかで呼ばれると、人によってはすごく動揺したり、具合が悪くなったりすることもあります。

ペイジさんのように名前を明らかにしている場合はその名前で呼び、呼ばれたい名前がわからない場合は、本人に呼ばれたい名前を聞くのがいいと思います。

カミングアウトした時に、まだ名前を公表していない人もいます。そういう場合でも、それまでの名前で呼ばれるのは嫌かもしれないので、どんな名前で呼んだらいいのかを聞いてみることもできます」

名前や性別の間違いは、相手を深く傷つける

マーティンさんはアドバイスの中で、「万が一名前や代名詞を間違ってしまった場合は、すぐに訂正して欲しい」と書いている。

遠藤さんは「確かに間違ってしまった場合は、謝ってすぐに訂正するしかないけれど……」としつつ、まずはそれがどれほど相手を傷つけることなのかを考えて欲しい、と話す。

「大切なのは、想像力を持つことだと思うんです。シスジェンダー(生まれた時の性別と自認する性別が同じ)の人の多くは、自分の性別が間違えられるという経験をあまりしないと思います。

間違えたとしても、例えば女性の人が『そこのお兄さん』と言われたり、男性の人が『そこの女性の方』と言われたらぎょっとすると思うし、相手も『あ、大変失礼しました』とすぐに訂正すると思うんです。

だけどトランスジェンダーの人は、訂正をしても『そんなのおかしいじゃん、だってあなたは女性に見えるもん』とか『生まれた時に男性だから別にいいじゃない』と言われる」

性別を日常的に間違われないと普段信じて生活できるのは、シスジェンダーの人たちの“特権”であり、性別を間違えられるということをトランスジェンダーの人は日常的に経験していることに思いを馳せて欲しい、と遠藤さんは訴える。

学校に通うトランスジェンダーの人たちの中には、希望する性別の制服で通い始めたとしても呼ばれたくない名前で呼ばれ、『彼女は』とか『彼は』と、間違った性別代名詞で呼ばれる人たちも少なくないという。

「それが1年に1回とかではなく、日常的に間違われている。そうなると『あ、ごめん間違った』とかって言っても結構しんどいんです。そのことを考えてもらえたらと思う。

間違ったら謝るしかないんですけれど、それはうんざりするほど日常的にあることで『結局この人は自分の性別のことを本当は男だ、とか本当は女だって間違った風に思っているんだろうな』っていうのは、相手には伝わる。

だからシスジェンダーの人には、自分の性別が日々間違えられ、訂正しても信じてもらえないのがどういうことかを考えてみて欲しい。

『この人は本当の男じゃない』とか『顔のここの部分が女じゃないとか』といった眼差しにトランスジェンダーの人たちがさらされ続けている、ということを深いところで考えて欲しいんです

他にもできるサポートはある

相手の名前を正しく呼ぶこと以外にも、できることはある。カミングアウトした人に周りができるサポートを、遠藤さんが教えてくれた。 

・旅行や研修の場所を選ぶ時に

友人通しで遊びに行く時や会社の研修の場所を選ぶ時に、誰もが楽しめるような場所を選ぶ。

温泉に行くことになった場合、大浴場だけで1人で入れるお風呂がないと、トランスジェンダーの人は困るかもしれない。海に行くときに、水着を着ることに抵抗を感じる人もいる。

「体の治療次第では、みんなと入れる人も入れない人もいます。旅行の時にどうしようと悩む人もいるので、全員が楽しめるような場所を選ぶことでサポートできます」

・同性の友人が一緒にトイレや買い物に行く

性別を適合させたばかりの時は、トイレに行くのをしんどいと感じることもある。そんな時に、適合した性別の同性の友人がトイレや買い物に一緒に行くことが助けになる、と遠藤さんは話す。

「服を買おうにも、お店に入るのに抵抗がある人もいる。知り合いのトランスの女性の方は、職場に着ていく服を女友達が一緒に探してくれたそうです。女子トイレに手を引いて連れて行ってくれた、ということもありました

カミングアウトした人たちが職場や学校で馴染んでいくためには、同性の友人のサポートがとても大切だと遠藤さんは強調する。

・読んでいる本やマンガ、ウェブサイトを聞いてみる

遠藤さんがよく勧めているのは、トランスジェンダーに関するお勧め本や漫画やウェブサイトを、カミングアウトした人に聞いてみることだ。

トランスジェンダーの人たちは、本やインターネットなどで情報を探していることが多い。その人がどんなサイトを見ているかを聞くことで、学べるだけでなく、共通の話題ができてサポートを示せる。

「勉強になるウェブサイトやドラマやNetflixを聞いて勉強したいということが伝わると、喜んで教えてくれると思います。

それに教えてくれたものを見て『あのユーチューバーの番組面白かった』と共通の話題ができます。

トランスジェンダーの基礎知識を、当事者が全部1人で話さなければならないとなると、疲れてしまいます。

アライの人の役割は、周りの人を教育することだと思います。教えてもらったサイトで勉強したことを、SNSでもシェアしたり周りの人に話したりすることで、サポートできます」

・体のことを聞かない

体のことを尋ねないのも大事だ。

一般的に、私たちが誰かに体のことをむやみやたらに聞くことはない。同じように「トランスジェンダーじゃない人に聞かない話はしないで」と遠藤さんは言う。

「トランスジェンダーじゃない人に『下は工事終わっているの』とか『その胸は豊胸手術したんですか』とか聞かないですよね。

体に対して興味を持ったりするのはわからなくはないです。だけど、恋人でもないのにプライベートゾーンの話はしない。それに体に触りたがる人とかもいますが、それはセクハラです」

またトランスジェンダーの人の「性自認」と「性的指向」とごっちゃにしないで欲しい、とも遠藤さんは言う。

トランスジェンダー男性の人が、必ずしも女性を好きになるとは限らない。異性を好きになる人もいれば、トランスジェンダーのゲイやレズビアンの人、アセクシュアルの人もいる。

そういったことも知って性的指向を決めつけないで欲しいと遠藤さんは言う。

遠藤さんはトランスジェンダーの人たちについての情報をブログで発信しており、その中でも家族や友達にできることを紹介している。

(安田聡子 @satokoysd / ハフポスト日本版)