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2019年03月18日 11時09分 JST | 更新 2019年03月18日 11時09分 JST

シングルマザーが子供のために必死で貯めたお金を騙し取る。「国際ロマンス詐欺」の卑劣な手口

恋愛感情ではなく、同じ境遇であるからゆえに同情心からシングルマザーが騙されてしまうケースも多い

KOICHI SAITO/amanaimagesRF via Getty Images
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千葉県などに住むナイジェリア人やカメルーン人男性が、福岡県に住む50代の女性から現金数百万円をだまし取った疑いで逮捕されたのをきっかけに、大きな注目が集まった「国際ロマンス詐欺」。

軍人などを装い、SNSを通じて「好きだ」「愛している」などの言葉を送り、相手をその気にさせて現金などを騙し取るという悪質な手口が横行しています。

家族問題の心理カウンセラーとしてさまざまな方たちの相談を受ける中で、この国際ロマンスの被害にあったという声を聞くようになったのは2年ほど前のこと。これは看過できない、と一念発起し3年前から、国際ロマンス詐欺の注意喚起と被害者支援を行う活動をしています。

国際ロマンス詐欺という言葉を聞くと、結婚を熱望する女性たちが、そこにつけこまれて騙されるイメージが強いことでしょう。しかし、恋愛感情ではなく、同じ境遇であるからゆえに同情心からシングルマザーが騙されてしまうケースも多いのです。

今回は私のもとに駆け込んできた被害者の実話を紹介します。

【鈴木陽子さん(仮名)・50歳・シングルマザーの場合】

2人の子どもを育てるシングルマザーの鈴木さんは、Facebookでアレンと出会いました。アレンのプロフィールには5歳になるとてもかわいい娘さんと一緒に写った写真が使われていて、在アフガニスタン米軍の44歳だと書かれていました。妻を早くに亡くしたので、娘はベビーシッターと軍の宿舎に暮らしていると、鈴木さんは聞かされていたそうです。

「最初は他愛のない日常の話を1日1通、メールでやりとりする程度でした。私は戦地のことはよくわからないけれど“ここは最悪だ、早く娘のもとに帰りたい”とたびたび口にする彼に、同じ”ひとり親”として強く同情していました」

鈴木さんとアレンの関係は恋愛とは少し異なるものでした。なぜなら、鈴木さんには当時交際しているパートナーがいたからです。そのことはアレンも知っていて、「いつまでも良い友達でいよう」というメールを送ってきていました。だから、安心してメッセージ交換を続けることができたそうです。

日々のメールのやりとりの中で、鈴木さんがお付き合いしている彼について相談をすることもあったと言います。そんな時、彼はいつも鈴木さんを励まし「僕はいつでも君の味方だよ」と言ってくれました。

一方アレンは、たびたび国に残してきた娘の話をしました。時には可愛い写真を送ってくれることも。Facebookで出会ってから1カ月半後のクリスマスシーズンには、アレンの娘さんが作ったというクリスマスカードが届いたそうです。

「メールに添付されてきたクリスマスカードを5歳の子が私のために作ってくれたと聞いて、いつか娘さんに会いたいと思いました」

ところが、クリスマスの1週間後、アレンと急に連絡がとれなくなりました。しばらくしてアレンから届いたメールには「親友が撃たれて病院に入院したために忙しくて連絡が取れなかった」と書かれていました。「もうここにいるのは嫌だ。早く娘と暮らしたい」とも。

同情した鈴木さんは、娘さんの元に帰る方法は何かないのかと彼に尋ねました。すると「上司に退役申請のメールを出してほしい」との返事が。

「出会ってから2カ月くらい、彼の誠実な性格を信頼していましたし、クリスマスカードを作ってくれた、かわいいあの子の元にパパを返してあげたい。だから何の疑いも抱かず、メールを書くくらいなら協力したいと思いました」

アレンが作った退役申請メールの見本が送られてきたので読んだところ、アレンの婚約者として鈴木さんの名前が書かれていました。おかしい、と思い指摘すると「家族からの申請じゃないと認められないので、婚約者のふりをしてほしい」と頼まれたそうです。「ふり」でいいのならと高橋さんはそれを了承して、その見本メールをコピー&ペーストして彼の上司に送りました。

するとその数日後、彼の上司から一通のメールが。そこには退役するには違約金が必要だと書いてありました。金額は100万円。

鈴木さんはアレンが払うものだと思い、上司からのメールの内容をそのまま彼に伝えました。そうしたら彼から「軍では自由になるお金がなく払えないので、帰国したら必ず返すから立て替えておいて欲しい」と言われたのです。

「もちろん私は会ったこともない彼にそんな大金を貸すことはできないと断りました。すると、強引に払わせようとすることはなく、すんなり諦めたとように見えて…」

でもその後、鈴木さんは子供の学費のためにと貯めていた貯金から100万円を捻出し、送金してしまいます。

「今思えばそれは、自分の気持ちの弱さからでした。この時期、仕事もプライベートもいろいろと悩んでいて、私は何もできない人間なんだと自分自身を責めてばかりいたんです。そんなときにアレンから助けてほしいと言われ、何もできない私でもこの親子を助けることならできるんじゃないかと思ってしまいました」

それは人助けになるのなら、という純粋な気持ちでした。アレンにそれを伝えると、「退役が認められたら娘と一緒にすぐに日本に行って、借りたお金を必ず返すから」と約束してくれました。

しかし、それだけでは終わらなかったのです。入金を確認できたという軍からのメールには、さらにお金が必要だと書かれていました。代わりの兵士にかかるお金と、その兵士のアフガニスタンへの旅費などです。金額にして300万円。

もちろんそんなお金は鈴木さんにはありません。無理だと断りました。

「それから1カ月間くらい悩んだでしょうか。だって最初に払った100万円が無駄になってしまうかもしれませんから」

最終的に、300万円のうち半額を鈴木さんが入金し、残りを日本に到着した時にアレンが軍に支払えば退役できることになったとアレンから聞いた鈴木さん。結局150万円を支払ってしまいました。

「それまでのやりとりの中で、アレンのIDカードやパスポートを見せられていたので、彼のことを信用していました。米軍公式のアドレスと思しき“@usa.com”」で送られてきた(後で調べたところ、偽造されたフリーメールだった)メール本文の背景には、”USA ARMY”のロゴが透かして入っているし大丈夫と、疑いもしませんでした」

総額250万円の送金をしたあとに、鈴木さんはこの出来事を恋人に初めて打ち明けます。それまでは自分の力でどうにかしたいと強く思い、誰にも相談しないでことを進めていました。海外送金できた時には達成感すら感じていたと言います。恋人から「君は詐欺にあっている」と指摘された時にもまだ、これでアレンは退役できて、かわいい娘と暮らせるんだと信じていました。

そして、軍を出る日にアレンから連絡がありました。アフガニスタンから日本に向かう飛行機の航空券が買えないのでお金を…、と。そこで鈴木さんは、恋人の言う通り、騙されていたんだと目が覚めました。

国際ロマンス詐欺被害者のサポートをしているアメリカの団体に問い合わせ、アレンの写真を提出すると、その写真が詐欺でよく使われている写真であることも発覚。「詐欺なんでしょう?」とアレンに聞いても、彼は頑なに否定するばかりでした。

彼を信じて、善意で救おうとした気持ちを裏切られて、鈴木さんはとても落ち込みました。それはカウンセリングに通わなければならないほど、大きな傷となったのです。

そして心が少し落ち着いた時に、どうしてこんなことをする人がいるのだろうかという疑問が芽生えた鈴木さん。そして、アレンに再びメールをしました。

「詐欺だったのでしょうと私が彼を追求してから、すでに2カ月以上たっていました。“怒らないから本当のことを話して欲しい、あなたには感謝をしている、なぜならあなたのおかげで私は英語が上達したし、あなたの性格が友人として好きだった”と伝えました」

そして鈴木さんは、嘘を認めたアレンと名乗るその男性とスカイプで話をしました。そして彼がナイジェリアに住む、27歳の黒人男性だと知ります。「お母さんの手術代と弟達の学費が払えず、悪い友達に誘われて詐欺をしてしまった。もう二度としたくないし、いつか君にお金を返したい」と言われたそうです。

 恋愛感情がなくても、パートナーがいても、巧みな手口でお金を奪う国際ロマンス詐欺。

心にできた小さな隙間や優しさに付け入られないよう、くれぐれも気をつけていただきたいです。