2023年1月、USEN-NEXT GROUPに参画した株式会社バーチャルレストランの取締役副社長に長澤里美さんが就任。グループ初の女性取締役が誕生しました。
「大学が女子大で、『25歳になったら結婚して退社』とみんながなんとなく思っているような文化で育ちました。それなのに、USEN(当時)に入社して、目の前の仕事に一生懸命向き合っていたら、気づいたらポジションが上がっていた……という感じで」
と笑いながら振り返る長澤さん。そのキャリアアップの背景には、意外にも等身大のビジネスパーソンの姿がありました。
「レースには絶対に勝ちたい」入社して負けず嫌いを発揮
長澤さんが株式会社USEN(当時)に入社したのは、2009年のこと。グループ企業初の女性取締役は、当時はどんな新入社員だったのでしょうか?
「当時のオフィスは六本木の東京ミッドタウンにあって、滝が流れていて、社食も広くて、なんて素敵な会社だろうと……土日もちゃんと休みたいなぁ、と思っていたし、きわめて若者的な思考しか持ってなかったですよ(笑)」
「なんとなく、私はぼんやりと、将来は結婚して25歳で会社は辞めるんだろうな、なんて思ってました。でも、全然そうはならなかったですね。まさかこんなことになるとは思ってなかった。私って、すごく負けず嫌いだったんですよ。レースには絶対に勝ちたい。そんな気持ちで、目の前のことを一生懸命やっていたら、ちゃんと評価してもらえて、気づいたらポジションが上がっていった、という楽しさがありました。すると、新しいことにどんどんチャレンジしていきたい、という気持ちも湧いてきて」
女性だから、男性だから、というバイアスを会社の中で経験したことは全くない、と長澤さんは振り返ります。
「ただ、社外のお客様に関しては、最初のころは『女性営業』ということだけで、優しくされてしまう感じはあったと思います。対等に経営者の方と話すのに時間はかかりましたが、時間をかけて丁寧なコミュニケーションをとり続けていくことで、信頼を得てきました」
フットワークの軽さを生かして、飲食業界の方や、そのサポーターさんが集まる会などには積極的に出向いてきたそう。「まずはとにかくやってみる」をモットーに、これまでたくさんの壁を乗り越えてきました。
「スーパーマンはいない」という宇野社長の言葉
若者らしい素朴な憧れから入社を決めた彼女が取締役にまでに上り詰めた背景には、USEN-NEXT GROUPの社風も大いに関係しているそう。
「グループの教育が良かったんだと思います。営業成績が良ければ報奨が与えられ、役職も上がっていく。人の上に立つために必要なマインドセットが常にありました。トップを目指す、という設計がナチュラルにできるんですね」
「7年前、若手向けの幹部育成のためのコースに参加した時期がありました。経営、財務、英会話などいろんなことをコーチングしてもらえるカリキュラムでした。そこで、最後に現在のUSEN-NEXT HOLDINGS社長の宇野さんが言っていたのが、『ここで学んだことを、全部記憶して全部できるスーパーマンはいないから、それぞれが自分の強みをちゃんと活かして、できないことを優秀な人に埋めてもらえるような人間力をつけなさい』ということ」
それ以来、人間力をつける、ということを意識して、同僚や部下ともコミュニケーションをとっているそうです。かつては「鬼軍曹」になってしまったことがある、と悔やみながら振り返る長澤さん。営業のプレイヤーとしても先陣を切りながら、チームビルディングへの意識が変わったことも、今のキャリアにつながっています。
「全員が右向け右ではなく、いろんな人がいてよくて、相乗効果で合わさってパフォーマンスが最大化することを目標にしています。そこは、だいぶ考え方は変わったな、と思いますね」
コロナ禍で培われた新しい視点も
これまで長澤さんは、料理人の顔が見えるグルメメディア「ヒトサラ」の営業を長く経験し、飲食業界の魅力を発信してきました。プライベートでも「365日中350日は外食をする」と豪語するほどの外食好きで、フードアナリスト、テキーラマエストロの資格を持つなど、食への強い関心を寄せています。
お店の課題に並走し、困りごとを解決するべく奮闘する視座は、食べることを愛する一人の食通として養われたものでもあります。
「コロナ禍では、飲食店に対してできることを非常に考えさせられました。お取引先の飲食店さんは、どこも営業ができていない状態。みなさんの困りごとに対して何ができるか、と考え、弊社の商材として、新型コロナの検査キットや店舗へ設置する検温消毒器などを紹介したり、コスト削減のためにインターネットサービス、電気やガスなどのインフラを見直すお手伝いをしたりしました。お店全体をより俯瞰して見ることができるようになったのは、一つの糧だなと思います」
そんな長澤さんが今年1月就任したのは、株式会社バーチャルレストランの取締役副社長。
バーチャルレストランは、加盟する飲食店が実店舗を営業しながら、多様なブランドのメニューをデリバリーサービス上で出店することができるサービスを展開しています。
「これまでは飲食店さんの外から関わるような形でしたが、さらに1歩、その中に入っていくことができるのかな、と思います」と長澤さんは語ります。
天才社長とともに見据える会社の成長
「スポーツチームで例えると、長澤さんはキャプテンでエース。自分でも得点をバンバン取るし、みんなも引っ張っていく。とにかく戦闘力が高いんです(笑)」
そう語るのは、株式会社バーチャルレストランの若き代表取締役社長、牧本天増さん。まだ長澤さんと知り合ってから半年ほど、就任から一ヶ月ほどですが、すでに絶大な信頼を寄せています。
株式会社バーチャルレストランは牧本さんが大学3年生の時に立ち上げたフードデリバリーサービス。2022年9月、全株式を株式会社USEN-NEXT HOLDINGSに譲渡し、USEN-NEXT GROUPに仲間入りをしました。
牧本:「僕らはまだ、平均年齢が25歳くらいという若い会社です。そこに、このグループで14年ずっと営業をしてきて飲食業界にも人脈が広い長澤さんが加わってくださるのは大きい。飲食業界は属人的で、新規サービスが参入しづらい業界構造がありますが、長澤さんは信頼関係を築いていますし、僕らがこれまでなかなか相手にしてもらえなかった大企業さんに対しても攻め方をわかっている。事業を拡大していく上で、本当に期待しています」
牧本:「また、バーチャルレストランには、自身も起業家になりたいという思いでジョインしてくれている若い世代の女性社員もたくさんいます。彼女たちにもぜひ背中を見せてほしい」
長澤:「牧本社長は天才です。私より一回り年下ですが、あの歳で、あそこまでの推進力を持った人は見たことがない。私は人材教育など、環境面の整備で立ち回りながら、会社の成長に貢献していきたいと思います」
3年間で年商100億円を目指し、海外進出も目指すという壮大な目標を掲げるバーチャルレストラン。牧本社長が「戦闘力が高い」と絶賛する長澤さんの活躍が、今後も楽しみです。
長澤:「バーチャルレストランの女性社員たちの指針となれるように頑張りたいですし、楽しく一緒に働ける仲間をどんどん増やしていくのも、私のミッションだと思っています」
(写真:KAORI NISHIDA、取材・文:清藤千秋、編集:磯本美穂・鈴木雄也/ハフポスト日本版)