2021年03月17日 15時59分 JST | 更新 2021年03月17日 15時59分 JST

「みんなが主人公に」日本初の女子プロサッカーリーグ“WEリーグ”が目指す、性別を超えた多様性が認められる社会とは

女子サッカー界のスターが集結!「WEリーグ」が、国際女性デーに合わせ、女性がもっと活躍する社会づくりについて話し合うオンラインイベント「WE MEETING」を開催しました。

今年9月に開幕を迎える日本初の女子プロサッカーリーグ「WEリーグ」。日本に“女子プロサッカー選手”という職業が確立され、リーグを核に関わるわたしたちみんな(WE)が主人公として活躍する社会を目指す、という想いを込めて「Women Empowerment League= WEリーグ」と名付けられたそうです。

そのWEリーグが国際女性デーに合わせ、リーグのビジョンの実現に向けて話し合う「WE MEETING」をオンラインで開催。WEリーグ初代チェア岡島喜久子さんと選手たちによる議論をご紹介します。

イベントには、岡島喜久子チェア(WEリーグ代表理事)、浜田遥選手(マイナビ仙台レディース)、南萌華選手(三菱重工浦和レッズレディース)、阪口夢穂選手(大宮アルディージャVENTUS)、山本菜桜美選手(ちふれASエルフェン埼玉)、岸川奈津希選手(ジェフユナイテッド市原·千葉レディース)、清水梨紗選手(日テレ·東京ヴェルディベレーザ)、松原有沙選手(ノジマステラ神奈川相模原)、三谷沙也加選手(AC長野パルセイロ·レディース)、石淵萌実選手(アルビレックス新潟レディース)、牛島理子選手(INAC神戸レオネッサ)、福元美穂選手(サンフレッチェ広島レジーナ)、そしてファシリテーターとして早草紀子さん、総勢13人が参加しました

◾️「スポーツの力で女性の地位を上げたい」WEリーグの存在意義。

まずは岡島チェアの挨拶から「WE MEETING」がスタート。全11チームあるクラブチームの代表選手が一同に会し、岡島チェアの話に耳を傾けます。

冒頭は岡島チェアの挨拶

岡島チェアはWEリーグ設立の背景について、「日本のジェンダー・ギャップ指数はG7最下位。サッカー業界に関しても意識が世界基準に達しておらず女性活躍は限定的」と選手に語りかけます。その上で、「スポーツには人を動かす力がある。スポーツの力を通じて女性の地位を上げていきたい」と意気込み、挨拶を終えました。

◾️「女子だけがプロになれない世界は悲しい」サッカー少女たちの思い。

岡島チェアの挨拶でWEリーグへの期待感が高まるなか、未来のWEリーガーを夢見る少女たちからビデオレターが届きます。

地元のサッカー少女たちからWEリーグへ応援メッセージ。選手は微笑ましく見つめていました

「サッカーが大好き。女子サッカーこそ女子が活躍できる場。WEリーグにすごく期待している」と少女は笑顔で話します。一方で、もし女子だけプロサッカー選手になれなかったら「女子だけがプロになれない世界は本当に悲しいし、夢がない」と表情を曇らせました。メッセージを受けて岡島チェアは、WEリーグを通じて「サッカー選手が仕事の一つとして認められることで、女の子の夢の職業になってほしい」と願いを語りました。

◾️「みんなが主人公になれる環境を」選手だからこそできること。

いよいよWEリーガーたちが登場。現役サッカー選手の視点から3つのテーマに沿って、熱い議論が交わされます。

プロ選手としての責任について語る南選手

最初のテーマは「プロサッカー選手になるということ」。まず口を開いたのは浜田選手。「幼い頃にサッカー選手を見て夢や希望をもらった。今度は私が子供たちに夢を与えたい」。一方、三谷選手は「サッカーでお金をもらうことに自覚やプライドを持たなければ」と強調します。議論は進みプロ選手としての責任について、南選手は「社会から注目されると自分たちの影響力も大きくなる。社会貢献活動など、自ら行動することが大事」と真剣な表情を見せました。

リーグ理念への共感を示す石淵選手

二つ目のテーマは「WEリーグや選手は女性エンパワーメントにどう貢献できるか」。議論の口火を切ったのは福元選手。「女性が中心となってサッカー人口を増やすことで雇用の場も広がる」と社会的・経済的なインパクトに言及。一方で「女性だけでなく、性別問わず意見を取り入れたい」と続けます。石淵選手も同意し、「性別を超えて自分らしさを認め合い、主人公になれる環境づくりが大切」と話すと、議論はいっそう熱を帯びていきます。

自身が所属するベレーザとヴェルディ(男子チーム)の関係性や、性別を超え協力することの大切さを語る清水選手

「ベレーザとヴェルディでは、クラブハウスも同じ場所なので、選手同士はもちろん監督やコーチとも話す機会が多い」。清水選手は自身が所属する日テレ·東京ヴェルディベレーザでの経験を交え、次のように語ります。「ヴェルディの選手は、女性としてではなく一人のサッカー選手として話をしてくれる。そういった(性別を超えた)クラブの関係性は今後大事になると思う」。

熱狂のなかプレーで魅せることは少女に夢を与えると語る松原選手

議論は終盤を迎え、最後のテーマ「女の子の将来の夢にプロサッカー選手という選択肢を」について意見を交わします。松原選手は「会場に足を運んでもらうこと」の重要性を強調。「たくさんの声援と熱狂のなかで選手がプレーをすることは、少女にとって憧れになる。そういった憧れも少女が夢を持つことにつながる」と力説。サッカーで表現すること、プレーで魅せることがエンパワーメントになると熱っぽく語ると、会場の盛り上がりもクライマックスを迎えました。

◾️目指すは「性別にとらわれず、多様な価値観が許容される社会」

ミーティング終了後、WEリーグが目指す社会のあり方について岡島チェアにお話を伺いました。

KOHEI HARA
「WE MEETING」を終えた感想を話す岡島チェア

―これまでの経歴を教えてください。

サッカーを始めたのは中学2年生。日本初の女子サッカークラブチーム「FCジンナン」に入団し19歳でアジア女子サッカー選手権大会に出場。その後、日本女子サッカー連盟設立に尽力しました。大学卒業後はキャリアに注力し、30年ほど米国で金融機関に勤めました。女子サッカー黎明期の貢献と豊富なビジネス経験を認めていただき、WEリーグチェア就任に至りました。

―「WE MEETING」を終えた感想は?

選手の意識が明らかに変わりました。リーグのために何ができるか、自発的に議論するようになったと聞いています。今後、回を重ねることでWEリーガーとしての自覚とプライドが生まれることを期待しています。一方、少女の憧れとして選手が認知されるには、人間力を養うことも重要。WEリーグにはさまざまな分野で活躍する女性理事がいます。彼女たちと選手が対話する場を設けるなど、幅広く社会に興味を持つきっかけをつくりたいです。

―女性をエンパワーする上で重要なことは?

3つの「力」を重視しています。一つ目は「社会力」。社会貢献に資する発言・行動ができる選手を育成することが必要です。二つ目は「発信力」。社会的インパクトを発揮するには、SNSなど時代の流れに沿った発信方法を採用することも重要です。三つ目は「魅せる力」。人びとが「カッコイイ!」と憧れる“魅せ方”もとても大切です。例えばユニフォームをスタイリッシュに着こなすなど、欧米の女子サッカー選手はビジュアル面でも工夫しています。日本人だと三浦知良選手。彼は魅せ方が非常に上手い。私たちが三浦選手から学ぶべきことは多いと思います。

―選手育成のため行っていることは?

プロ選手を育てるのに不可欠なのが「指導」。JFA(日本サッカー協会)は「A-proライセンス」という女性指導者育成に特化した制度を開設しました。加えて、WEリーグでは選手が現役時代に一定ランクまでライセンスを取得できる体制もつくります。この制度と体制を通じて女性指導者の裾野を広げていきたい。一方、スポーツ指導の現場ではセクシュアルハラスメントの問題もあります。女性指導者を増やし多様性を高めることは、こういった問題への対応策の一つになると考えています。

―WEリーグが目指す社会とは?

自分の意志で選択すること、チャレンジすることが許容される社会。それは、女性だけでなく性別を超えたすべての多様な人びとを包摂する社会です。日本には性別に根ざしたアンコンシャスバイアスが未だに残っています。女性を抑圧する先入観がある一方、男性に対する先入観もまたあります。性差にとらわれず、多様な価値観が許容される社会であってほしい。それには私たちみんなが手を取り合い、社会を変えていかなければなりません。その第一歩として、WEリーグ開幕を成功させたい。成功の鍵を握るのは、女子チームと男子チームの協力です。

KOHEI HARA
岡島喜久子(おかじま・きくこ)さん:1958年東京生まれ。1991 年から現在までアメリカ在住。メリルリンチ(アメリカ)、神奈川県国際政策アドバイザーなどを経て、2020年WEリーグチェアに就任

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「WEリーグ」は、多様な夢と生き方を肯定し性別問わずすべての人が活躍する社会の実現を目指す、まったく新たなスポーツリーグでした。ジェンダーバイアスがいまだ色濃く残る日本において、女性がプロサッカー選手として力強く活躍する姿は、性別やその他すべての垣根を超えて多くの人びとに勇気を与えてくれます。WEリーガーが少女たちの夢として未来を照らす日が訪れるのを楽しみに、今後の活動を見守ってみてはいかがでしょう。