フォーサイトが暴いた「ヤラセ弁護士」に懲戒処分

7月15日、第二東京弁護士会は、所属する奥野剛弁護士(32)に業務停止2月という懲戒処分を下したことを発表した。

 7月15日、第二東京弁護士会は、所属する奥野剛弁護士(32)に業務停止2月という懲戒処分を下したことを発表した。ただし、

「行為の悪質さと影響の大きさからすれば、かなり軽い処分だと言わざるを得ない」(法曹関係者)

 処分対象となった行為とは、自らが出演していたテレビ番組でのヤラセ。バラエティ番組などで過剰な演出がヤラセと指摘されるケースはままあるが、奥野弁護士の場合、社会問題となっていた詐欺事件を特集して報道する番組に被害を救済する弁護士として登場。自分が相談を受けている被害者だという人物らも出演させていたのだが、実は被害者でも何でもなく、当時自らが所属していた事務所職員だった。

 その奥野弁護士のヤラセ、言うならば「詐欺的行為」を他に先駆けて指摘し、日本テレビの報道姿勢を追及したのがフォーサイトの記事「『日テレ謝罪』の裏側――『サクラサイト詐欺』で蠢く『問題弁護士』たち」(2013年8月1日)だった。フォーサイトの指摘を受けた日テレは内部調査をし、取材に回答する前にいち早く番組内で謝罪をしたのだ。

処分決定まで2年弱

 当該記事は、とりわけ法曹界で大きな反響を呼んだ。依頼人からの預り金を着服するなど、弁護士が犯罪行為で摘発されるケースは少なくない。が、詐欺事件の被害者救済を声高に叫びながら、その実背後で詐欺的行為を働いているとは、まさに法曹人の信用を根底から覆すことになる――。そんな危機感を抱いた多くの弁護士らの働きかけにより、今回は弁護士会自身が弁護士会に懲戒請求をするという、異例の経過を辿った。

 が、それにしても時間がかかりすぎた。懲戒請求はフォーサイト記事がアップされて2カ月後の2013年9月。そして今回の処分決定まで、実に2年近くがかかっている。先の関係者によれば、調査に対して奥野弁護士は早い段階で事実関係を認めていたという。だからこそ、日テレはほとんど奥野弁護士1人に責任を負わせる形でいち早く謝罪したわけだ。

 現在、奥野弁護士自身が2012年に独立開業した事務所のHPには、所属弁護士として本人は記載されていない。処分を受けて慌てて削除したのかどうかは不明だが、少なくともそれまでの2年近くは弁護士として普通に活動できていたわけだ。

 通常、弁護士会が何らかの懲戒事案を調査している過程では、当該の弁護士が調査の対象になっているか否かは一般には知りようがない。つまり、正義の弁護士と信じて相談や依頼をしていたのに、ある日突然、実は仮面を被った悪徳弁護士だと判明するケースも十分にありうる。そうしたいわば「二次被害」を生まないためにも、弁護士会は調査の迅速化も検討すべきなのではないか。

内木場重人

フォーサイト副編集長

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(2015年7月19日フォーサイトより転載)

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