原則2割に慎重論 介護保険の利用者負担拡大を議論

利用者の立場などからさまざまな意見が出た。

利用者の立場などからさまざまな意見が出た

厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会が19日に開かれ、利用者負担や費用負担のあり方について議論を始めた。利用者負担では経済力のある人に相応の負担を求める方向性は一致したものの、2割負担の対象拡大には慎重な議論を求める意見が目立った。年内に見直しの結論を出し、2017年の通常国会に関連法案を提出する。

16年度の介護費用は約10兆円の見込みで、制度が創設された00年度に比べて約3倍になる。高齢化により年々膨らんでおり、制度を持続させるため給付と負担の適正化が課題となっている。政府の経済財政諮問会議の社会保障に関する改革工程表では、利用者負担の原則2割などについて審議し16年末までに結論を得るよう求めている。

利用者負担はこれまで一律1割だったが、15年8月から一定以上(年金収入のみの場合は年280万円)の所得のある人は2割に引き上げられた。

その影響について厚労省はデータを提示。実際に2割負担になった利用者は、在宅サービスで9.7%、特別養護老人ホームで4.1%、老人保健施設で6.2%(16年2月分)。実質的な自己負担率は、高額介護サービス費(利用者負担上限額を超えた場合に一定額を返金する仕組み)があるため12.6%にとどまっていると試算した。

これに対し利用者側の委員から「2割負担になったため利用控えもある」「2割負担導入の余波がまだ見えない。細かいデータがほしい」「軽度者の生活援助などの自己負担化も検討されている中で不安が増大している」などの意見や、複数の委員から「本当にサービスを必要とする人が使えなくならないように見直しを」との意見があった。

一方で「利用者負担を上げられないのなら保険料を上げるしかない。セットで議論すべき」「利用者負担、第1号・第2号保険料のバランスを取らないと制度不信を招く」といった指摘もあった。

患者の負担割合が引き上げられている医療保険との均衡を取るべきかにも多数の意見があったが、賛否は分かれた。ケアプランの自己負担導入に言及する意見もあった。

また同日は、40~64歳の現役世代が医療保険を通じて支払う第2号保険料(労使折半)の見直しも議論した。

現在は収入に関係なく各医療保険の加入者数に応じて金額が決まる人数割のため、所得水準の低い協会けんぽの加入者は相対的に負担が重いことが指摘されてきた。

それに対し、収入に応じた負担の仕組みである総報酬割では、収入が同じであれば保険料負担も同じになる。

厚労省が14年度の決算見込みから試算したところ、総報酬割を導入した場合、労使合計の保険料は、健保組合の加入者は727円増の5852円、共済組合は1972円増の7097円となり、大企業や公務員らの負担が増えることになる。その一方、協会けんぽは241円減の4043円。

総報酬割には企業の負担増を懸念する経済団体や健保組合の委員らが反対した。

(2016年8月30日「福祉新聞」より転載)

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