心理職の業務の適正化を図る公認心理師法が9日、参議院本会議で全会一致で可決、成立した。文部科学省、厚生労働省を主務官庁とした、心理職として初の国家資格が誕生する。国家試験は指定試験機関が年に1回以上行う。施行は公布日から2年以内。施行5年後の見直し規定も盛り込んだ。関係団体にとっては、半世紀にわたる悲願がようやくかなった。
公認心理師法は、衆議院文部科学委員長の提案による議員立法として成立した。衆参それぞれの委員会では、受験資格に関する留意事項など6項目の付帯決議が付いた。
公認心理師は名称独占の資格で、保健医療、福祉、教育、司法・矯正、産業などの分野で活躍することを想定。医療分野では診療補助職とせず、心理的支援の対象者に主治医がいる場合に限り、医師の指示を受けることを義務づけた。
養成ルートは三つあるが、そのうち4年制大学と大学院で計6年間学んだ人が国家試験を受けるルートが基本となる。
心理職の民間資格は多数あるが、取得者数が多いのは臨床心理士(2014年度末現在で約2万7000人)だ。資格取得者の約7割が日本臨床心理士会に入会している。
同会の11年度の会員動向調査によると、会員の17%が福祉分野に勤務している。特に、児童相談所、児童福祉施設に勤務する人が多い。
心理職の資格制度の創設運動は、1967年に始まり、90年代半ばから議論が本格化。2005年には法案の骨子が固まったが、医療関係団体の反対により国会に提出されなかった。
しかし、11年10月には関係団体の足並みがそろい、国家資格化の要望書を確定。14年の通常国会に議員立法で提出されたが廃案となり、今通常国会に再提出された。
■村瀬嘉代子・日本臨床心理士会長の話
法案作成から成立まで、心理職の国家資格化を推進する議員連盟(代表=河村建夫・衆議院議員)の皆様の多大なご尽力に心より感謝を申し上げます。
本会はこの法案について数度の機関決定を行い、成立に向けて努力して参りました。法案提出に際して、議連事務局長の山下貴司・衆院議員は、年間3万人近い自殺者の存在に触れられたほか、大震災被災者の心のケア、学校、医療機関、福祉機関、司法・矯正機関などさまざまな面で心理専門職の活用が喫緊の課題であると述べられました。
公認心理師が社会に役立つ存在となりますよう、さらに研さん努力して参りたいと存じます。
■増沢高・日本臨床心理士会社会的養護部会長の話
乳児院や児童養護施設に心理職の配置が制度化されたのは1999年で、当時は心理療法の提供が中心でしたが、今日では心理職も積極的に日常生活に関与するようになってきました。「生活臨床」という実践が浸透しつつあると思います。
市区町村や就学前教育・保育の現場で公認心理師が子どもとその家庭をアセスメントし、他機関・専門職に伝えることは重要です。例えば、不登校の子は「心の問題」ととらえられがちですが、その子の家庭での生活を見れば養育放棄など別の要因が見えたりします。公認心理師の養成、資格取得後の現任者研修には、こうした側面から構築するべきと考えます。
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