国会議員が経済に関して鈍感と言われるのは、今に始まった訳ではないが、それはこの方面に明るい議員が極めて少ないからかもしれない。議会において、スキャンダルや不祥事の追及は、テクニックさえ身に付ければできる。だが、経済関係の質問は、しっかりした知識がないと難しいだろう。11日付けの日本経済新聞朝刊4面に掲載された「国会、市場動向に鈍感?」を読み、改めてそう感じた。
記事は、株価急落など経済が危機的状況にあるにも関わらず、これに向き合わない国会の様子を"鈍感"と表現。実際、筆者も10日の国会中継を冒頭の部分だけ視聴したが、最初の自民党議員の質問を聞いて、「こりゃダメだ」と思った。
この日のテーマは「政治とカネ」。それ以外に関する質問も出たが、与党を攻撃する格好のテーマであるだけに、危機的な状態にあっても経済問題を取り上げるとは期待できない以上、せめて与党議員が喫緊の課題として取り上げるべき。ところが、トップバッターから、民主党議員のスキャンダルを蒸し返しに終始していた。
民主党の議員は、時の人で、今の深刻な金融情勢において最も発言が注目される黒田日銀総裁を招致しながら、結局、呼んだだけ。マイナス金利導入後、初めて黒田発言が聞けるというので、マーケット関係者は固唾を飲んで見守っていたと思うが、まったくの期待はずれ。自分の立場から書きづらいながら、維新の党の議員も株価下落を通告しながら、時間切れの格好で質問できなかった。
もちろん、カネの問題、スキャンダルは許すべきものではなく、その追及をすることを、全て否定するものではない。しかし、国民の生活に直結する重要な問題がある時は、それを取り上げるべきだろう。"鈍感"ならまだしも、危機的な状況にあっても、確信犯的に政局第一で臨んだとすれば、とても国の経済を任すことはできない。
たとえば、あの場で経済に造詣が深い議員が質問していれば、経済に強い政治家としての矜持から、マイナス金利や株価下落に関して質問したと思われる。与野党ともに経済に"鈍感"ではない政治家が増えて欲しい──"鈍感"な議員ばかりでは、危機的な状況を乗り切れるのか不安になる。