リオデジャネイロ・オリンピックの熱狂が一段落し、お盆も終わり街に人が戻って... 「日常」が帰ってきつつある8月3週。インターネットに投稿されたブログも「少し立ち止まって考えてみよう」というトーンのものが多かったように思われます。読む側も心を落ち着けて受け入れたい、注目の記事をご紹介します。
日本人は他人に求めすぎ?
ドイツのフランクフルト・アム・マインに住むソフトウェアエンジニアの久井亨さんは、「ドイツ人の仕事。日本の仕事。」で、現地で働きながら感じるドイツ人と日本人の違いを指摘します。
几帳面な印象のあるドイツ人。しかし久井さんによれば「ドイツ人の仕事は雑」だと言います。「自分がいい加減な分他人にもそこまで求めないし、困ったら助け合えばいいと普通に思っている」というのが久井さんのドイツ人への評価。
一方、日本人は「人に迷惑をかけたり失敗を明るみに出すのをものすごく嫌がる」ので、「労働の結果を簡単にドブに捨ててしまう」ような意思決定が起こることが多いのではないか、と分析します。失敗しないことを求め、また、うまくいかないことに関しては、それにどれだけの時間と手間がかかっていようとも捨て去る、無謬性が求められているということでしょう。
同じような指摘は、別の国からもあります。ニュージーランド在住のプログラマー、橋口一法さんの「『いくら長時間働いても仕事は終わらない』と語る上司」では、日本で働いているときに培った「問題が解決するまで働く」というマインドを、ニュージーランドの上司に呆れられたエピソードが語られます。
上司は「これはやらない、これは後回し、って、優先順位をつけ」ることがマネージャーの仕事だと橋口さんに語ります。その話に蒙を啓かれた橋口さんは、「メンバーの体力と気力を全力投入して灰になるまで働かせ、あらゆるタスクをすべて期間内に終わらせるのが立派なマネジメントであると勘違いしている管理職」が多すぎるのでは、と日本の労働環境に警鐘を鳴らすのです。
優先順位をつけることは、ともに働く仲間に何を求め、何を求めないのかを決めることでもあるでしょう。それができていないとすれば、結局は極限まで頑張り続けることが求められているのでしょうか。
また、橋口さんは「プレミアムフライデーは労働者を馬鹿にした愚策」でも、日本政府が検討を始めたとされるプレミアムフライデー政策について、「労働者になんとなく得した感じを与えて不満のガス抜きを行いつつ、国民全体の労働時間を極力減らさないように」するガス抜き政策だと喝破します。見た目だけの負担軽減で、結局労働者に求められることは変わらないという怒りに、共感の声も多く聞かれました。
金メダルをとっても続く「ベタな求め」
この週にハフポスト日本版で多く読まれたブログの一つに、山下柚実さんの「柔道金メダル・大野将平選手の「静けさ」から考えたこと」があります。
リオオリンピックで勝利した大野選手が、情報バラエティ番組から宣伝に付き合わされたことを「『世界を極めた人』の中において、スポーツ選手は、どこか一段下に見られていませんか?」と問題提起する山下さん。もちろん選手自身がどう感じたかを推し量ることはできませんが、「選手たちの高みを少しでも理解するといった方向の努力を、放棄している」という指摘には、本記事の前半でもあったような、要求ばかりが多くなるこの国の欠点が共通して現れているような気がします。
「他人の言うことは100%正しい」
ハフポストにこれらの記事を掲載すると、読者からは厳しい反応が来ることも多くあります。「海外びいきばかりをやめろ」「日本にもいいところがある」など...。
ただ、言うまでもなく、記事をお書きいただいた執筆者も、それを掲載したわれわれ編集者も、日本を否定するために記事をつくっているわけではありません。この国でみられる現象や問題に、外部の視点という補助線を引いて、変化や解決を目指すこと。その一助になればいいと考えています。
とはいえ、これらの耳が痛い言葉たちを、どのように扱えば、個人や社会を前にすすめる糧になるでしょうか。SmartNewsの松浦茂樹さん(元ハフィントンポスト編集長でもあります)は、「他人の意見はある意味100%正しい」で自身が実践するシンプルな答えを提案します。
いわく、「例えその意見が毒だとしても、一度飲み込んでみる」。「どんなに異論でもその人に取っては100%正しいわけですし、100%同じ人もこの世の中にはいない」し、「それが多様性」だからです。自ら「青臭い」と言いつつ、「優しい世界をつくる」ための素朴な提案。一度、飲み込んでみるのはいかがでしょうか。
2016年8月3週の5本
- 「ドイツ人の仕事。日本の仕事。」(久井亨/ハフィントンポスト日本版)
- 「『いくら長時間働いても仕事は終わらない』と語る上司」(橋口一法/ハフィントンポスト日本版)
- 「プレミアムフライデーは労働者を馬鹿にした愚策」(橋口一法/ハフィントンポスト日本版)
- 「柔道金メダル・大野将平選手の「静けさ」から考えたこと」(山下柚実/ハフィントンポスト日本版)
- 「他人の意見はある意味100%正しい」(松浦茂樹/松浦 茂樹( @shigekixs )|note)