心ある皆さんからクラウドファンディングでたくさんのお金を頂き、今年の4月からスタートしました、フローレンスの赤ちゃん縁組事業。
2週間に1人、遺棄されたり虐待されて命を落とす赤ちゃんを、一人でも多く救いたい。そんな思いから始めていきました。
そして半年間の立ち上げ期間を経て、ついに初めての縁組委託を行いました!
多くのお申し込みから、「この方々なら赤ちゃんを幸せにしてもらえる!」と確信して運ばせて頂いたご夫婦。彼らは座学研修をし、フローレンスの「おうち保育園」で子ども達と触れあう研修も経験しました。
そんなタイミングで実親さんのご出産がありました。実親さんは以前から養子縁組のご希望があったものの、赤ちゃんとのお別れの際は、固く抱きしめ、何度も何度も頬を赤ちゃんの頭につけて涙を流されていたそうです。
産婦人科医院である東峯婦人クリニックが連携してくださったおかげで、赤ちゃんは病院の新生児室で助産師さん達が委託日までみてくださいました。
そして赤ちゃん縁組委託当日。控え室に僕を含めてフローレンススタッフ、当会のアドバイザーの小川さんが集います。
養親さんが時間通りに来られました。(実は30分以上も前に到着されて外で待って頂いていたのを、後で知りました。)
まだ委託の前ですが、入ってきた瞬間にお父様の目から涙が。それを見て、僕の目からも涙がこぼれました。
最後の説明をアドバイザー小川さんと弊会スタッフの石橋が行います。実親さんがどんな思いでこの子を託したのか。子どもを育てることの責任。将来障害が発現しようと、非行に走ろうと、親は常に子どもを愛し続け、支え続けなくてはならないこと。絶対に投げ出したりしてはいけないこと。養親にはその責務があることを、伝えました。
同意の書面を取った後、助産師さんが赤ちゃんを連れてきてくれました。まずはフローレンスを代表して、僕が抱かせて頂きました。ちっちゃい、壊れそうなくらいにちっちゃくてあったかい。我が子が生まれて抱いたときの感触がよみがえります。そのすやすやと眠る天使のような顔。
そして赤ちゃんを養親のお父さんに渡します。「幸せにしてあげてくださいね」
最後は涙があふれてちょっと何言ってんだか分かんなくなりました。
お父さんも「はい、絶対に」とお答えくださり、泣きながら抱きしめてくださいました。
養親のお母さんも、本当に愛おしそうな表情で赤ちゃんを見つめます。
まさにそこに、新しい家族の誕生がありました。ひとつの家族の誕生をお手伝いできたかと思うと、こみあげてくるものがありました。フローレンススタッフのみんなも、試行錯誤の半年、大変なことだらけの半年を超え、ここまで来たことに顔をぐしゃぐしゃにさせています。
この後、ご両親は産前産後ケアセンター東峯サライで、2泊3日の宿泊入院をし、おむつ替えや沐浴、ミルクあげやげっぷだしを助産師さんの指導のもと行って、お家に帰ります。
ここからは普通の家族と同じ、てんやわんやの赤ちゃんとの生活が始まります。フローレンスも、子育て支援のプロとして、助産師による家庭訪問指導を行うなどして、彼らを支え進んでいきたいと思っています。また、特別養子縁組は半年しないと法的には認められません。そうした法的手続きを進めていく上での相談対応も、我々の仕事です。
フローレンスは、多くの皆さんのご支援によって、実際に新たな家族を生み出すところまで来ました。これからも丁寧に、一つ一つの家族の誕生を支えていきたいと思います。ぜひ、引き続きご支援頂けたらと思います。
さらに、赤ちゃん縁組で家族を迎えたい、という人は養親募集を行っていますので、コンタクトください。一人の命を託すことになるので、様々なハードルは当然ありますが、それでも、という方は手を挙げてください。
※養親相談窓口はこちら
また、予期しない妊娠で悩まれている方、ぜひご相談ください。周りにそういう悩みを持った方がいる、という人も、ぜひ赤ちゃん縁組・特別養子縁組制度について紹介してあげてください。つい先日も、絶望し、一人で不衛生な公衆トイレで出産せざるを得ないところまで追い詰められた高校生がいました。実の母親もケアされるべき存在です。そして当然、赤ちゃんは誕生を祝福されるべき存在です。
※予期しない・望まない妊娠相談はこちら
最後に、この事業はなかなか経済的には成り立ちづらい事業です。政府もこれまでほとんど何もしてこず、行政からの補助は一円もありません。確実に必要な児童福祉の一つであるにも関わらず。ですので、ぜひ政治や行政関係者の方々は、支援の制度を創っていってほしいです。
それまでは、皆さんからのご寄付に支えられつつ、頑張って参りたいと思います。
一つでも多くの赤ちゃんの命を救いたい。一人でも多くの実親の人生のリスタートを応援したい。そして、一つでも多くの幸せな、新しき家族を創りたい。そんな思いを胸に。
※フローレンスへの寄付はこちら
(2016年10月31日「駒崎弘樹オフィシャルブログ」より転載)