日本はモンスターペアレンツばかりなのか?

保育園やってます、と言うと「モンペ(モンスターペアレンツ)とか、大変でしょ?」とよく同情されます。

保育園やってます、と言うと「モンペ(モンスターペアレンツ)とか、大変でしょ?」とよく同情されます。

数日前にも、こんなニュースがありました。

「うるさい」と保育施設に苦情、自治体の75% : 読売新聞  http://bit.ly/2jcPUus

世間的な印象では、どこもかしこも、保育園嫌いな人ばっかりで、保護者もみんなガンガンクレーム入れてくるモンスターペアレンツだらけ、という風に思われるかもしれません。

しかし、実際はそんなこともないんです。多くの保護者の方は、素敵な人たちです。今日はそんな事例を紹介します。

先日、寄付をしてくださった方がいました。その方はなんと、フローレンスが運営する「おうち保育園」に子どもを通わせている、保護者の方でした。

保育園に通わせている人なら分かりますが、自分が行かせている保育園に、感謝こそすれ、寄付とかしませんよね。だから、僕はちょっと、というかかなりビックリしたんです。

そしてその方のメッセージが添えられていて、すごく胸が打たれました。ちょっと長いのですが、引用します。

-----引用-------

初めまして。私は1歳4ヶ月の息子をおうち保育園おおいまちで預かっていただいている▲△と申します。本日、非常に嬉しい場面がありましたので、代表の駒崎さんにも知っていただきたく、直接コンタクトさせていただいております。

我が家は共働きで、朝は私に少し余裕があるため、朝の準備と保育園へ送るのは私の役目です。

昨日の連絡帳に「昨日の夜も今日の朝も◎◎(おこさんの名前)くんのうんちがでていません。パパは心配です」とコメントしました。前々日の夜から出ておらず、2日間うんちが出ていなかったからです。

朝のうんちの始末は私の役目です。毎朝大量のうんちと格闘しながら、息子の健康を確認して「うん。今日もいいうんち!」と安心しています。2日間それができないと、不安で心配なんです。

妻は「二日でないくらい普通じゃん? パパは◎◎くんのウンチ大好きなんだね」と呑気なものです。でも、パパは心配なんです。食欲はあるので、出るはずのものが詰まって出ないんじゃないか? ◎◎くん苦しくないか? ただの親ばかかもしれませんが、かわいい息子が心配なんです。

幸い◎◎はいつも通り元気でしたが、昨日の帰りの連絡帳にも便が出たかどうかの欄は空白のまま。出なかったんだ。。。。先生からのコメントも特になく、心配してるのはパパだけなんだ。心配し過ぎなのかな。。。と思っていました。

晩ご飯を食べて、ひと遊びしたあとお風呂に入れようとすると、待望のあの匂いが! 「◎◎くん、でたーーーーー!」おむつをとると、大量のうんちが!くさいけど、ほんとにうれしかったんです!

あまりに喜びすぎると、またバカにされるので、妻には「よかったー。出たよー」とクールに伝え、翌日(本日)の連絡帳には特にコメントは書かずに、便が出たマークだけ書いておきました。

本日、保育園に送りに行くと、いつもとは違う先生(担当ではない先生)が対応してくれました。

その先生が開口一番「◎◎くん、うんちでましたか? みんなで心配してたんですよ。」と言ってくれたのです。

「はい! 昨夜やっとでたんで安心したんですよ」というと、隣の部屋にいた園長先生にも聞こえたらしく部屋から出てきて「◎◎ちゃん出たの? よかったねーーー。」と一緒に喜んでくれました。

高熱でもなければノロウイルスでもない。端から見ればただのうんちですよ。親ばかですよ。それを一緒に喜んでくれる先生たち。素敵ですよね。

おうち保育園はアットホームとよく言われますが、それは人数(規模)のことではないんですね。子供のことを家族と同じ目線で大切に思ってくれていて、心配してくれて、一緒に喜んでくれるもうひとつの家族なんですね。アットホームという言葉の本当の意味を実感しました。

昨今、保育士の給与の低さが話題になっており、駒崎さんも是正の為に取り組んでおられますが、仕事に対して(他人の子供に対して)これだけ真摯に取り組んでくれている先生たちこそ、報われて欲しいですね。

----(引用終わり)-----

どうでしょうか。なんのことはない、保育園ではよくある日常の一コマです。

でも僕は、保護者の方の思いに、子どもの毎日に、心から寄り添っている保育士たちを、心底誇りに思いました。

また、感謝の気持ちを寄付という形で表してくださったことにも、素直に嬉しく思いました。嬉しいどころか、ちょっと泣けました。いい歳して。おっさんのくせに。

保育の仕事って、ちゃんとできて当たり前で、あんまり褒められたりはしないんですよね。

本当は、毎日8時間〜11時間近く預かる中で、怪我等の小さな危険はいっぱいあって、それをすごい集中力で回避しつつ、それでも子どもの意志を第一に、やれるところまでやらせてみせて。子どもの心を、伸ばす。

自分の子どもだったら、1人で2人みるのがが限度でしょっていうところを、3人、5人とそれぞれの個性を把握しつつ、最適化された対応をとっていく。

こんな風なプロの仕事を、笑って楽しそうに、なんてことなくやり遂げる。それが保育というお仕事で。

そんな仕事を認めてもらって、うちの自慢の保育士たちを褒めてもらえ、本当に本当に嬉しかったです。

だから、僕は絶望していません。どんなに地域住民のクレームが多かろうと、時々激しいクレームをぶつける保護者の方がいようと、多くの保護者の方は素敵で、そして全ての子どもたちは素晴らしいから。

こんな素晴らしい仕事ができて、すんごい大変だけど、幸せです。日本中に、素晴らしい保育園を広げていきたいです。全ての子どもたちが保育の光に照らされるよう。子育てに汗する、保護者という同志達と伴走しながら。

追記

そんな自慢の「おうち保育園」の新園が仙台の待機児童問題を解決するために、4月にオープンします。19人という手厚い少人数制なので、すぐに枠が埋まってしまうかもしれません。待機児童になりそうで心配・・・という方は、ぜひお問い合わせください。

(2017年1月10日「駒崎弘樹公式サイト」より転載)

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