ひとり親支援や、給付型奨学金の実現を訴えてきた、認定NPO法人フローレンスの駒崎です。
【国民投票は個別テーマごと】
先日、「教育無償化に、憲法改正は必要か」という記事を書きました。趣旨は、「教育無償化は嬉しいけれど、自衛隊合憲化とセットにされると、バーターみたいになってしまい、それは正しい方法ではないのではないか」というものでした。
偶然、昨日、政府高官の方とお会いする機会があり、良い機会だと思って憲法改正について色々と突っ込んだ質問をさせてもらいました。
その際に、「国民投票って、自衛隊と教育無償化という、2つの異なるテーマをパッケージにして、YesかNoを聞くんですか?」と聞いてみました。
彼はこう答えました。「史上初のことだから、確たることは言えないけれども、基本的には個別テーマごとに聞くことになるのではないか。つまり、自衛隊の合憲化は合憲化で。教育無償化は教育無償化で。」
同じタイミングで、Twitterで、日本維新の会の足立議員からも「国民投票は改正事項毎に一人一票です」というご指摘を頂きました。
もしそうだとすると、僕の懸念であった、「自衛隊の合憲化を通すために、国民の関心の高い教育無償化をバーターとして使う」ということは、杞憂であったことになります。
(一応、総務省の憲法改正時の国民投票の解説ページでも、複数案がある場合は、案ごとの投票となる旨、書かれています http://www.soumu.go.jp/senkyo/kokumin_touhyou/tohyou.html )
【というわけで撤回します】
個別議案を個別に投票できるとしたら、自衛隊と切り離して、純粋に教育無償化について議論できます。
また、教育無償化は法改正や新法成立によってできることですが、憲法に書き込まれることで、他のテーマと比較して、優先的に予算が配分されることが期待できます。
「教育」と言っても、就学前教育は入るのか、大学は入るのか等、範囲の問題はあるでしょう。また、授業料だけでなく、給食費や学用品等の、教育関連費用についての扱いをどうするか、という費用項目の問題もあるでしょう。
ただ、そうした問題を議論するためにも、これまで我々のような教育・保育関係者だけで議論していたような話を、憲法改正を契機に、国民的に行えるのは、一つの大きなチャンスだと思います。
そうした意味も踏まえ、当該記事の意見(「バーターは良くない」)を撤回いたします。不十分な知識に基づいて、意見を発信したことを、心からおわび申し上げます。
【最後に意見】
最後の教育無償化についての意見を書きます。僕は、就学前(保育園・幼稚園)から大学まで無償化すべきだと思います。
大学については、高卒者との格差が出てしまうことから、高卒者が社会人になってから学び直しがいつでも可能なよう、サポートもセットで行う制度づくりをしていくべきだと思います。
また、給食費や学用品等も、貧困世帯には重い負担となっているため、無償化していくべきだと思います。
こうしたことはヨーロッパでは既に行われていることであり、天然資源に恵まれず、主に人材が生み出す技術とイノベーションによって経済優位性を生み出していく我が国にとっては、絶対に必要なことだと思います。
憲法改正を機に、国民的な議論が盛り上がることを、心より祈っています。
(2017年5月7日「駒崎弘樹公式サイト」より転載)