7-9月期の実質GDPの2次速報が発表されましたが、1次速報よりも下方修正され、年率で1.9%減となり、景気の減速ぶりが浮き彫りになりました。10月末の民間調査機関7社の予測中央値は前期比0.5%増、年率換算で2.0%増だったものが、1次速報では年率1.6%減という結果でした。
しかも、その後、ロイターがまとめた民間調査機関の予測では、2次速報で年率0.5%減に上方修正されるはずだったのです。エコノミストの予測がまた外れてしまいました。
さて、先月末に、幹線道路の交通量や混雑状況の変化がかなり景気動向を反映していることを書きました。その際に、高速道路の利用状況のデータで見ても、日々の通勤時に利用している幹線道路の交通量の感触でも、また内閣府の行なっている街角の景気判断などを合わせても、どうも1次速報値が高めにでているのではないかと感じていました。その通りになったということです。
しかし考えれば当たり前の話で、日本の場合は内需、とくに家計消費だけでもGDPに占める比率がおよそ6割と高く、しかも今日は、もはやかつてのようにモノの輸出が日本の経済を大きく左右する時代でありません。
国内消費が活性化しなければ、景気の好転は難しい状況になっています。国内の消費に元気がなければ、荷動きも、取引も鈍くなってくるのは当然なことです。
荷動きや取引が鈍くなると、道路も空いてきます。思った売上にならない、円安で調達コストも上昇したために、会社の経費も引き締められ、タクシーの利用客も、飲食業を利用するサラリーマンの方も減ります。
だからエコノミストが数字を見て机上で判断をするよりは、道路の交通量や身近で感じる景況感のほうが当たるのです。
しかも幹線道路の交通量でいえば、11月も、12月にはいってもまだ道路は空いたままです。巷で耳に入ってくる景気の感触もよくありません。おそらく年末商戦に入れば少しは変わるのでしょうが、おそらく、10~12月期もたとえ成長率がプラスに転じたとしても、極めて小幅なものになるのでしょう。
アベノミクスで金融緩和の博打ともいえそうな壮大な社会実験で、円安となり、それが家計の負担になり、また国内産業を襲ってきているのがアべノミクスの結果です。円安は、国内の中小企業には打撃となるとよく書かれますが、中小企業だけではなく、たとえ大企業でも、家計消費の動向で業績が左右される流通業や物流企業にも直撃してきます。
問題発言が目立つ麻生副総理が、また「(結果を)出していないのは、よほど運が悪いか、経営者に能力がないから」と発言されたようですが、もう無茶苦茶です。自らの政策で経営の足をひっぱっておいて、それはないでしょうと怒る経営者の方も少なくないはずです。
しかも肝心の、新たなビジネスチャンスを生み出す成長戦略は、与野党ともに、具体策がなく、海外メディアもアベノミクスにかなり厳しい論調が増えてきました。
身近なところで、景気について質問されることが多くなってきました。みなさん戸惑っていらっしゃるようです。景気の先行指標といわれていた株価が上がっている、しかし足元はよくない、株価と自らが感じる感触とがずいぶん違い、どちらが本当なのかがわからなくなっているからでしょう。
景気は短期的にも変動しますが、金融緩和の出口がないので、しばらくは円安が続きそうです。それは国内経済をじわじわと痛めつけることになりそうです。それにしても人びとの我慢強さにも限界があることを政治家はもっと真剣に受け取めるべきだと感じます。
(2014年12月8日「大西 宏のマーケティング・エッセンス」より転載)