また中国のPM2.5汚染の季節が近づいてきたと思っていたら、はやハルピンで5メートル先が見えないという深刻な大気汚染が発生しました。小中学校が休校となり、市内の交通機関が麻痺するといった大きな影響がでたことが報道されています。「PM2.5」の数値が1立方メートル当たり500マイクログラムとは、とんでもない数値です。
アジアの大気汚染:リアルタイム気質指数ビジュアルマップで調べると、現在、ハルピンは中度汚染レベルに下がり(とはいっても日本の基準値の倍以上)、それ以上に長春(チャンチュン)のほうがひどい状態になっているようです。長春は、かつての満州国の首都であったところです。
また中国のPM2.5の恐怖が始まる季節になってきました。首都北京ではなんとか汚染を止める努力がなされているようですが、どうも大都市部から周辺都市部に、さらに汚染が拡散し始めているようです。
ウィキペディアによると、北京大学の研究(2012年)で北京・上海・広州・西安の4都市でPM2.5に起因する死者は年間約8,000人だそうですが、2007年の世界銀行・中国環境保護部の研究によるとPM10を中心とする大気汚染(まだ当時はPM2.5ha中国では観測されていない)による死者は中国全土で年間約35~40万人という推計もあります。
この死者の数から言えば、中国国内で内戦が起こっているに等しい犠牲者がでていることになりますが、質が悪いのは、大気汚染による健康被害は将来まで尾を引くことです。中国国民は怒らないのでしょうか。
国民の生命にも関わる問題なので、政府への不満に火がついてもおかしくはないと思うのですが、どう中国国民は動くのかが気になるところです。
百度の検索傾向を指数化したBaidu指数による関心度の推移を見ると、汚染がひどかった今年の年初で指数が跳ね上がっていますが、もうすでに指数が上昇してきているので、中国国民の関心もまだまだ高まってきそうな気配です。
まだ季節的に日本への影響はほとんどありませんが、PM2.5の濃度が3日に、九州や中国、四国地方で高まる可能性があるとの予想もでています。ただ本格的にはやはり黄砂が飛んでくる来春が気になるところです。
日本の環境技術でこの問題を解決できないものかと感じてしまいます。大気汚染は日本への影響もあり、中国との関係改善の切り札になればと祈るばかりです。
(この記事は2013年10月22日の「大西 宏のマーケティング・エッセンス」からの転載です)