爆買いだけでない中国観光客

日本人にとっては当たり前なものも、観光客にとっては「魅力」に映ることがある。

「なんの実だろうね」

「サンザシ、そう書いてある」

そんな会話を交わしながら写真を撮っていると、

近くにいた10人ほどの女性グループのひとりから

「中国語話せるのですか」と声をかけられました。

首を横に振ると

上手だけれど、中国人だとわかる日本語で、

「サンザシと聞こえたので、中国語が話せると思ったのです。

サンザシは、小さいころよく食べました。

すっぱいけれど、とてもおいしい。ここのは自然で、農薬も使ってなくていい」

「へー、食べることができるんだ」

もともと中国から来たサンザシですが、読み方も一緒に海を渡ってきたのかと心のなかで感心しながらしばらくはその女性たちと同じペースで歩いていました。グループの他の女性は日本語は話せないようでしたが、かえでの紅葉、柿の木やススキなど、秋の自然の美しさに感嘆する彼女たちの声が幾度も聞こえてきました。

六甲山にある「神戸市立森林植物園」で遭遇した一コマでした。しかもこの植物園で、彼女たちだけでなく、他にも聞こえてくる会話から中国人だとわかる何組もの集団や家族に出会ったのです。神戸から近く、バスでも来ることができるからでしょうか。こんなところも観光スポットになるのです。

中国人観光客というと「爆買い」のイメージが付きまといますが、京都の紅葉スポットでよく見かけるようになったのは当然だとしても、森のある植物園で、日本の自然を楽しんでいる姿を見ると、まだまだ海外のひとたちに楽しんでもらえる観光コンテンツの発掘はありそうだと感じた一日でした。

そういえば、土曜日に行った京都国立博物館の琳派誕生400年記念特別展覧会「琳派 京を彩る」でも、欧米の人たち、見ただけではわからないけれど漏れてくる会話で、韓国や中国の観光客だとわかる人たちがたくさんいたことも印象的でした。

訪日観光客が増えるにつれ、しかもリピート客が増えるにつれ、「爆買い」だけでなく、里山の自然と文化に触れる成熟した観光スタイルもきっと増えてくるのでしょうね。

(2015年11月15日 「大西宏のマーケティング・エッセンス」より転載)

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