【今年は経営者にとって「覚悟と実行の年」】~経済3団体新年賀詞交換会~

例年通り経済三団体(日本経済団体連合会、経済同友会、日本商工会議所)の賀詞交換会が東京千代田区で開催された。

<©︎Japan In-depth 編集部>

例年通り経済三団体(日本経済団体連合会、経済同友会、日本商工会議所)の賀詞交換会が東京千代田区で開催された。アベノミクスも4年目に突入、大手企業が最高益を記録する中、安倍総理もさぞかしご機嫌で挨拶するだろうと思ったら、なんと欠席だった。お伊勢参りとのことだが、首相の挨拶がないというのは筆者には記憶がない。閣僚の多くも首相に同行しており、政府関係者の挨拶がなかったのは不自然だ。

それはさて置き、今回の主催は経済同友会。歯に衣着せぬ物言いが身上の小林喜光代表幹事(三菱ケミカルホールディングス会長)は開会の挨拶で、以下の6点を4年目に入ったアベノミクスの成果として評価した。

1 為替が1ドル=80円から120円で推移、年間通じて10円程度の幅で安定

2 法人実効税率29.97%へ引き下げ

3 TPP交渉大筋合意、日韓関係前進

4 労働者派遣法改正

5 COP21パリ協定締結

6 原発再稼働進展、原油低価格で推移

一方、日本を取り巻くリスクについて小林氏は、国内では人口減少、持続可能が危ぶまれる社会保障制度、先進国の中で最悪の財政を挙げ、海外では、米利上げの新興国への影響、中国経済の先行き、サウジとイランの国交断絶、ISによるテロなどを挙げた。又、地球規模の問題として、格差や貧困の拡大、水・食糧不足など資源の枯渇、気候変動など、解決する課題は山積みだとした。

<小林喜光 経済同友会代表幹事 ©︎Japan In-depth 編集部>

その上で、小林代表幹事は、「ボールは経済界に投げられた」と明言、民間経営者には「未来に向けて果敢に挑戦していく気概」が重要で、「過去の延長線上に未来はない」と述べ、国内外の情勢を捉えた「覚悟と実行」が求められている、と呼びかけ、具体的に以下の4点の実行を求めた。

1 テクノロジー(人工知能やロボティクスなど)を利用し官民挙げてイノベーションに挑戦すること

2 事業再編と新陳代謝

3 資本・労働・イノベーションへの投資と賃上げ

4 中長期的な企業価値の向上

こうした覚悟を実行するために経営者は「心の内なる岩盤」を打破することが必要だとした小林氏、最後に今年の干支は丙申(ひのえさる)であることから、日光東照宮の三猿の「見ざる、聞かざる、言わざる」をもじって、今年の猿は「留(とど)まらざる、怯(ひる)まざる、驕(おご)らざる」だ、と述べ、観衆の笑いを誘った。

さて、小林氏が挙げた通り、テクノロジーによるイノベーションは加速度を増している。今後5年の間に、AI(人工知能)がそれに拍車をかけ、世界中で次々と新しい産業が生まれていくだろう。そうした「第4次産業革命」の真っただ中に今日本はいる、という認識がどれだけの経営者の中にあるだろうか。

国内M&Aのスピードの遅さや、ベンチャーなどへの投資規模の小ささなどを見ても、とても「官民挙げてイノベーションに挑戦」しているとは思えない。2025年には75歳以上が3,600万人を超す日本。社会保障費の負担は今以上にずっしりと財政にのしかかってくる。日本経済の新たな牽引車として期待される"日本発のプラットフォーム企業"が生まれるためにどうしたらいいのか、それを今の経営者は真剣に考えねばならないタイミングに来ている。

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