【まとめ】
・世界中でニュースの真偽を確認する「ファクトチェック」の活動が活発化している。
・日本でも「ファクトチェック・イニシアチブ」が立ち上がり、総選挙に関するニュースの真偽を確認するプロジェクトがスタートした。
・本プロジェクトにはGoHooやBuzzFeedなど複数のウェブメディアが参画する。
「フェイクニュース」という言葉が流行った2016年。アメリカ大統領選で一躍流行語となり、政治家の発言の真偽を確かめるファクトチェックメディアが勃興した。その後、トランプ大統領とメディアが激しい戦いを繰り広げているのは皆さんご承知の通りだ。
ファクトチェックについてはすでに他の国でも取り組みが始まっている。アメリカではWashington Postのファクトチェックサイトで使われている"Pinocchio(ピノキオ)"が有名だ。嘘の度合いをピノキオのイラストの数で表す仕組みで、トランプ大統領やTVキャスターらが日常的にPinocchioに言及するなど、既にアメリカ社会で市民権を得ている。
2016年の米大統領選で一躍有名になったPolitifactのFalseMeterも世界的に注目を集めた。また、韓国にもSNU Fact Check(ソウル大学言論情報研究所運営)というサイトがある。
日本では去年、DeNAの医療系ウェブメディアWELQがその記事の信ぴょう性などから閉鎖を余儀なくされた問題が記憶に新しく、フェイクニュースに対しウェブメディア業界自身、どう対処していったらよいのか、議論が始まったばかりだ。周回遅れの感は否めない。
そうした中、10月1日、東京・渋谷で日本初のファクトチェック組織である、「(FactCheck Initiative Japan : FIJ)」(楊井人文事務局長)が、「2017年総選挙ファクトチェックプロジェクト」記者発表を行った。
FIJの目的は、
①誤報・虚報の拡散防止
②ジャーナリズムの信頼性向上
③言論の自由の基盤強化
の3つだ。言説の真偽検証は、政治家など公人に限らず、ウェブ上のコンテンツも含まれる。
今回のファクトチェックプロジェクトの流れだが、まず事務局内の「情報共有支援チーム(Iチーム)」が疑わしい情報の収集を行う。次に、それらの情報が「ファクトチェッカーチーム(Fチーム)」に提供される。参加メディアはこのFチームと相互に協力し合いながら記事を作成し、自社サイトに掲載するというものだ。
FIJは参加メディアの記事公開と同時にサイトでそれらの記事を紹介する。また、FIJは参加メディアの情報収集活動に対し、資金面のサポートを行うという。
また楊井氏は、FIJの運営方針ガイドラインを以下の通りとした。
①目的・対象範囲
②方法論(選択基準、判定基準など)
③組織運営(財源、構成員、連絡先など)
これらの事項を参加メディアは事前にサイトに公開することとしている。
FIJはファクトチェックの判定基準として、正確、ほぼ正確、不正確、虚偽、真偽不明の5段階を提示したが、実際の基準は各メディアが独自に決めてよいとした。また、記事公開の日程については、10月8日までに第1弾の記事を公開、記事化期限を10月25日までとの目安も合わせて示した。
現時点で楊井氏が代表理事を務めるGoHoo(日本報道検証機構)、BuzzFeed、ポリタス、ニュースのタネなどが手を挙げている。BuzzFeedは既に第1弾の記事『【検証】小池知事の「(衆院選立候補)最初から100%ない」発言は本当か』を10月5日に公開した。Japan In-depthも本プロジェクトに参画すべく準備中だ。
トップ写真)「フェイクニュースイニシアチブ」説明会の模様 東京・渋谷 2017年10月1日
(c)Japan In-depth編集部
取材:Japan In-depth編集部(北山実里)