寝台特急〈トワイライトエクスプレス〉フォーエヴァー

寝台特急〈トワイライトエクスプレス〉は、1989年7月21日に運転開始した。大阪―札幌間1502.5キロを21時間09分かけて走る列車で、当初はJR西日本と旅行代理店などのタイアップによるツアーに参加しないと乗れなかった。

始発大阪を発車し、終点札幌まで22時間02分の長旅が始まった。

JR西日本は、寝台特急〈トワイライトエクスプレス〉の運行を2015年春で打ち切る。先日、同社が超豪華寝台車両の投入を発表した際、私は今回の一報を覚悟していた。

■寝台特急〈トワイライトエクスプレス〉の歴史を簡単に振り返る

黄昏の日本海に天使が舞う。

寝台特急〈トワイライトエクスプレス〉は、1989年7月21日に運転開始した。大阪―札幌間1502.5キロを21時間09分かけて走る列車で、当初はJR西日本と旅行代理店などのタイアップによるツアーに参加しないと乗れなかった。

車両は既存客車及び電車の改造により用意され、1988年3月13日に登場した寝台特急〈北斗星〉よりもハイグレードなのが特長だ。特に1号車A寝台個室スイートは今も人気が高い。

サロン・デュ・ノール。

憩いの場であるサロン・デュ・ノール(サロンカー)は、ブルートレインのロビーカーより居心地がよく、大きな窓から眺める日本海などに魅了する乗客も多い。それもそのはず、客車と大阪―青森間牽引の電気機関車を保有するJR西日本は、大阪発(札幌行き)と大阪着(大阪行き)をお昼の時間帯に設定し、日本海の眺め(札幌行きは夕焼け、大阪行きは朝の光)を意識したのだ。

青森で運転停車(時刻表では通過扱い)し、電気機関車の付け替えを行なう。

車体塗装も、日本海の深い緑をイメージしたダークグリーンを基調に、トワイライトを表す黄色の帯を配し、高級感を醸し出した。〈トワイライトエクスプレス〉と命名されたのは、「黄昏と朝のの中を走り抜ける特急列車」というコンセプトによる。

1997年11月29日、寝台特急〈はやぶさ〉は運転区間の短縮により、日本最長距離列車の座を寝台特急〈トワイライトエクスプレス〉に譲った。現在、札幌行きは1495.7キロ、大阪行きは1508.5キロを走破する。

■車内は個室中心

現在、寝台特急〈トワイライトエクスプレス〉の客室は個室中心だ(上の編成表を参照)。

A寝台個室はすべて洗面、トイレユニットつきのシャワールームを設けている。ロイヤルについては基本1人利用だが、補助ベッドを備えており、2人利用も可能だ。

B寝台個室シングルツインは、基本1人利用だが補助ベッドを備えており、2人利用も可能だ。1人利用の場合、寝台料金は2段式B寝台などより高いが、その分、占有面積が広い(ツインも1人あたりの寝台料金はやや高い)。シティーホテル以上のグレードを目指した車両なので、ソロやデュエットは運転開始当初から連結されていない。

Bコンパートは、2段式B寝台の区画に扉を設けたもので、4人利用の場合は"簡易カルテット"(かつて、寝台特急〈さくら〉などに4人用B寝台個室カルテットを連結していた)として利用できる。ただし、部屋単位ではなく、ベッドごとの発売なので、知らない人同士が顔を合わせる欠点もある。

なお、B寝台及びBコンパートにはシャワー設備がない。シャワールームは4号車にあり、利用したい場合は食堂車ダイナープレヤデスで予約及び、シャワーカード(1人320円)を購入する。ただし人数に限りがあるので、早目の予約をお勧めする。

食堂車ダイナープレヤデスは、朝食、昼食(札幌行きのみ)、ティータイム(大阪行きのみ)、夕食、パブタイムをそれぞれ営業している。

夕食はフランス料理のディナー(1人12,300円)と日本海会席御膳(1人6,000円)の2種類があり、乗車5日前の23時までに、みどりの窓口や旅行代理店で予約が必要だ。ただし、後者はダイナープレヤデス内で食べることができない。パブタイムは予約なしで利用でき、ダイナープレヤデスで夕食をとる最後のチャンスだ。

■北陸新幹線長野―金沢間延伸と北海道新幹線

北陸新幹線用のJR東日本E7系。JR西日本は同一仕様のW7系を投入する。

寝台特急〈トワイライトエクスプレス〉が廃止される2015年春は、北陸新幹線長野―金沢間が延伸開業され、信越本線長野―直江津間、北陸本線金沢―直江津間(以下、並行在来線)は、第3セクター鉄道4事業者が引き継ぐ。

もし、寝台特急〈トワイライトエクスプレス〉が2015年春以降も存続した場合、下記の通りとなる。

(1)金沢―直江津間は第3セクター鉄道3事業者の運賃と特急料金が加算され、事実上値上げされる。

(2)JR西日本は第3セクター鉄道3事業者に線路使用料を支払う(JR貨物も同様)。

(3)北海道新幹線開業後も引き続き運行する場合、第3セクター鉄道転換が決まっている江差線木古内―五稜郭間の運賃と特急料金も加算される。また、同区間を引き継ぐ鉄道事業者にも線路使用料を支払う(JR貨物も同様)。

2011年7月4日、JR西日本金沢支社は北陸新幹線長野―金沢間延伸開業後、並行在来線金沢以東の昼行特急廃止を明言した。その後、金沢―和倉温泉間の特急運行が決まり、並行在来線の昼行特急廃止は津幡以東に修正した。

当初、夜行列車は運行を継続する方針だったが、寝台特急〈日本海〉、急行〈きたぐに〉は、2012年3月17日のダイヤ改正で臨時格下げとなり、2013年1月に廃止されたことで、寝台特急〈トワイライトエクスプレス〉の去就に注目する人も多かったと思う。

寝台特急〈トワイライトエクスプレス〉の廃止が決まったのは、車両の老朽化だけではなく、新幹線の影響も大きいと思う。特に海峡線の大半は北海道新幹線と共用するため、架線電圧を交流20,000ボルトから25,000ボルトへ、保安装置の要であるATC(Automatic Train Control:自動列車制御装置)も新幹線用に変えなければならない。

海峡線と北海道新幹線を管轄するJR北海道では、青函トンネル用牽引機のED79形を引退させる。同社は後継の新型電気機関車投入を考えておらず、青函トンネルを通る旅客列車については、新幹線に統一する可能性が高い。

一方、JR貨物は交流複電圧に備えたEH800形を試作し、2014年以降に量産車が登場する予定だ。

■おつかれさま寝台特急〈トワイライトエクスプレス〉

寝台特急〈なは〉の末期は、客車がボロボロで見るに堪えない。

寝台特急〈トワイライトエクスプレス〉の廃止は、個人的に残念であると同時に、"清々(すがすが)しい"という矛盾に気づく。車両の老朽化が進んでいても、ボロボロという姿をみせず、車内外とも綺麗な姿を保ち続けたからだ。乗務員や裏方さんなどは、「豪華列車」に対するプライドが高いとともに、プレッシャーとの闘いでもあった。「常に最高の品質を乗客に提供し続ける」という不断の努力こそ、25年たっても高い乗車率を誇っているのだ。好調を維持したまま廃止されるのは、「有終の美」という言葉がもっともふさわしい夜行列車だと思う。

「常に最高の品質を乗客に提供し続ける」という精神は、2017年度に登場する予定の超豪華寝台車両に受け継がれるはずだ。

優しさにあふれたヘッドマークは、2015年春で見納め。26年の歴史に幕を閉じる。

寝台特急〈トワイライトエクスプレス〉を支えた皆様、長いあいだお疲れさまでした。

★備考

・ハフポスト「夜行列車2014

(2014年5月29日「yahoo!個人」より転載)

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