紛争地域で拘禁される子どもたち 数千人が訴追なしに拘禁、拷問されている

紛争の影響を受けた国々で数千人もの子どもたちが、国家安全保障上の脅威として訴追もされずに拘禁されている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは報告書内で述べた。

(ニューヨーク)-- 紛争の影響を受けた国々で数千人もの子どもたちが、国家安全保障上の脅威として数カ月あるいは何年ものあいだ、訴追もされずに拘禁されている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日(編注:2016年7月28日)発表の報告書内で述べた。多くの子どもたちが、拘禁下で拷問されたり命を落とした。各国政府は子どもの訴追なき拘禁を即時停止し、子どもを虐待した個人を罰すべきだ。

報告書「行き過ぎた措置:国家安全保障上の脅威として拘禁された子どもに対する人権侵害」(全35ページ)は、反体制武装組織との関係を疑われたり、紛争関連の犯罪に関与したとして、子どもが逮捕・拘禁されている実態について調査・検証したもの。

イスラミックステートおよびボコ・ハラムといった過激派組織への対策として採用された反テロ法は、適用範囲が広すぎたり、定義があいまいで、その結果、安全保障上の脅威とされた子どもの拘禁が増加している。本報告書では特に、アフガニスタンコンゴ民主共和国イラクイスラエル/パレスチナナイジェリアシリアにおける子どもの拘禁について検証した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ子どもの権利局のアドボカシーディレクター、ジョー・ベッカーは、「各国政府は紛争関連の暴力事件に対し、見当違いかつ非生産的な対応で子どもの権利を踏みにじっている」と指摘する。 「子どもたちの無期限拘禁および拷問は、停止されなければならない。」

本報告書は、子どもを含む数多くの元被拘禁者に対し上記6カ国で行った聞き取り調査、国連の報告書、その他の関連情報に基づいている。

Thousands of children in conflict-affected countries have been detained without charge for months or even years as national security threats.

ヒューマン・ライツ・ウォッチの現地調査で、実際の犯罪により逮捕されるだけでなく、信用性の低い証拠や、事実無根の疑い、または家族のテロ活動疑惑を根拠に、大規模な摘発で逮捕されていることが多いことが分かった。母親が安全保障関連の罪の容疑で逮捕された際に、乳児などの子どもも逮捕された事例もあった。

治安部隊は拷問や、残虐で非人道的、品位を傷つける方法で子どもを取り扱い、自白や機密情報を引き出したり、罰を与えている。 殴打やレイプ、電気ショック、長時間の苦痛を伴う姿勢、裸にされる、あるいは処刑の脅迫といった被害を、子どもの元被拘禁者たちは訴えた。

アフガニスタン、イラク、ナイジェリア、ソマリア、シリアなどの国では、紛争に関連するとされる犯罪疑惑で、当局がいつでも数百人規模の子どもの身柄を拘束している可能性がある。多くは弁護士との接見や親族との面会を拒否され、または裁判官の前で拘禁に異議を申立てる機会さえない。子どもたちは、ひどい条件の下で拘禁され、大人と一緒に過密状態の房に閉じ込められ、食糧や医療も乏しい状況に置かれることが多い。

ナイジェリアとシリアにおいて、不十分な医療や飢餓、脱水症状から、あるいは拷問の結果として死亡した子どもは数知れない。国連が実施した聞き取り調査によると、アフガニスタンでは治安部隊が、成人よりも頻繁に子どもたちを拷問しているという。

また、家族のテロ活動疑惑のために、子どもたち自身については確固たる証拠がなくても、治安部隊により拘禁される可能性がある。たとえばイラクでは、家族がテロ活動に関与しているという情報を強制的に引き出すために、その子どもたちを男女問わず拘禁し、拷問している。

安全保障上の脅威であるとした子どもも拘禁できるよう、当局の権限を拡大することを可能にする法の導入または改正が、ますます多くの国々で行われている。このような法律のもとで、拘禁期間は長期化し、懲罰的および無期限の拘禁が可能になり、かつ軍事裁判所の権限も拡大してしまっている。

たとえばイスラエルでは毎年、主にイスラエル兵士への投石という安全保障関連の罪で、何百人ものパレスチナ人の子どもが軍事裁判所で裁かれている。しかしその際に、国際法で義務づけられている少年司法上のセーフガードは適用されていない。殴る蹴るの暴行を含む身体的暴力などの虐待行為を、逮捕・拘束・拘禁時にイスラエル治安部隊から受けたと、数百人規模のパレスチナ人の子どもたちが訴えている。

2016年8月2日に国連安全保障理事会で協議される予定の潘基文国連事務総長による子どもと武力紛争に関する最新の年次報告書で、 事務総長は国連加盟国に対し、武装組織と関連付けられたり、暴力的過激主義に関与した子どもの拘禁・訴追に代わる代替措置を実施するよう要請した。

各国政府は子どもの訴追なき拘禁を即時停止し、武装組織との関与が認められた子どもを、リハビリのために児童保護当局に付託すべきだ。子ども刑事犯罪で適切に訴追されている事例については、国際少年司法の基準に即して扱わねばならない。この基準では、拘禁以外の代替措置が重視され、かつ子どものリハビリと社会復帰が優先されている。

前出のベッカーディレクターは、「子どもたちを過激派に向かわせた疎外感は、当局の手による拷問などの人権侵害で一層悪化するだけだ」と述べる。「子どもが再度暴力に手を染めないようにするために、拘禁は最悪の方法と言わざるを得ない。」

(2016年7月28日「Human Rights Watch」より転載)

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