(ワシントンDC)TPP(環太平洋パートナーシップ)経済貿易協定は、労働問題対処に前例のない努力が払われているにもかかわらず、おびただしい人権侵害の懸念を生じさせていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表したQ&A集で述べた。TPP関連の人権問題は協定発効以前に解決されるべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。
「TPPが批准に向かっているが、政治家はこの協定が環太平洋諸国に住む8億人にどのような影響を与えるかを慎重に考慮すべきだ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのワシントン・ディレクターのサラ・マーゴンは述べた。
「TPPは包括的な協定だ。今後の世界的な貿易経済協定で、今回の人権問題が繰り返されることのないよう直ちに対処すべきである。」
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協定は労働権の保護にもっと踏み込むべきだったが、それを怠る一方で、保健、表現の自由、インターネット上のプライバシーに関する条項には重大な懸念が存在する。
TPPの労働に関する章と関連する二国間協定は、ベトナム、マレーシア、メキシコ、ペルー、ブルネイなど、労働者の人権侵害が多発する国において労働権が十分に保障されるためのセーフガードの役割を果たしてはいない。
またQ&A集が取り上げる懸念には、製薬企業に影響するTPPの条項について、独占を認める特許期間と規制保護期間が延長されることで、命にかかわる薬の安価な入手がさらに難しくなることがある。
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さらにTPPの著作権条項によって、政府が知的財産権関連規則を悪用し、インターネットによる反体制活動を容易に弾圧できる可能性も生じる。
TPPに関するQ&A集はこちら:
(2016年1月12日「Human Rights Watch」より転載)