21世紀の国際社会の未来像として、より安全で豊かな世界づくりを掲げた国連のミレニアム開発目標(MDGs)は来年が達成期限です。2000年と比べて1日1.25ドル未満の生活者は半減し、小学校就学率の男女比は是正され、マラリアによる死者が3割減るなど大きな成果がありました。もっとも、アフリカのサハラ以南の地域では達成率は極めて低く、大きな課題が積み残されています。
2013年9月の国連総会では、MDGsを土台とする新たな国際目標が協議されました。主に貧困など開発途上国の課題を柱としたMDGsに対し、いかに持続可能な形で地球を維持し、環境に配慮した社会や経済成長を促すかを共通課題とする国際的な政策議論が高まっています。
基盤強化に不可欠な要素として、新たな目標に含めるよう提案されているのが、持続可能な開発のための教育(ESD)です。
技術、政策、経済的な動機付けだけで持続可能な開発は達成できません。私たちは、個人も社会全体も、ものの考え方や行動様式を変えていく必要があります。そのための価値観やスキル、知識を身につけることを中核に据えた教育の在り方の模索が、ESDの目指すところです。
ESDには状況を変える力がある――。その認識の下、「国連ESDの10年」(05~14年)を主導してきたユネスコは10~12日、名古屋市で「ESDに関するユネスコ世界会議」を開催します。約100カ国の教育大臣、副大臣をはじめ、NGO、有識者や若者代表ら1000人が一堂に会し、「今日の学びを持続可能な未来に結びつけるために」をスローガンに、過去10年間を検証します。最終日にはESDをさらに展開させるための次のステップ「ESDに関するグローバル・アクション・プログラム(GAP)」を盛り込んだ「あいち・なごや宣言」に至ることも目指しています。
会議では「国連ESDの10年」を締めくくる最終報告書も発表されます。情報集約のため回答を寄せた70カ国のうち3分の2が、ESDを政策や国家戦略に盛り込んでおり、持続可能な社会構築に貢献する主要な原動力としてのESDへの期待が読み取れます。
70億人が暮らす地球の天然資源に限りがある現実を見据え、個人や社会に抜本的な意識改革を促す教育、それを可能にする政策や企業の支援、実行に移す教育関係者らの共通認識が求められていると、報告書は指摘しています。
二酸化炭素の排出量を決めた京都議定書が採択され、仙台市で来年、国連防災世界会議が開かれるなど、日本は環境問題の先駆者として大きな役割を担っています。今回は「ESD世界会議あいち・なごや」の共催者となってくださった日本政府に、この場をお借りして心より御礼申し上げます。ユネスコを代表して、今回の世界会議がパートナーシップ強化に大きく貢献し、「持続可能な開発のための教育」が潜在性を十二分に発揮して、持続可能な将来、そして現在を形作っていけるよう願っております。