(2013年フランス/LES REINES DU RING/WRESTLING QUEENS)
いきなりなんであるが、筆者もプロレスの味方です。意外に思われるかもしれないが、本作はなんとフランス作品。実は、フランスではプロレスはとても人気がある。プロレスにもいろいろあって、これは「キャッチレスリング」。最近、日本では「瞬殺」ともいわれたように怖い人が行う総合格闘技のイメージが強いが、これは、打撃系がない、昔ながらのお茶の間で見ることができるプロレスである。実際、プロレスリングがついているバーも多い。
本作は、人生に行きづまった人が、やったことのないプロレスで道を切り開いていく話である。しかも、主人公は女性である。筆者は、個人的にこのようなどん底から頑張る話にとても弱い。
フランスの田舎で、服役囚だったシングルマザーのローズは、息子ミカエルと再会するが厳しく拒絶される。どうにかしたいローズは、ミカエルがプロレス好きであることを知り、息子との関係修復のためプロレスラーに!スーパーマーケットのレジ打ち3人と一緒にチームを結成し猛特訓。筆者はプロレスには詳しい方であるが、大技がガンガン繰り出され、その切れもいい!商売上手な米国のプロレス団体WWEが、本作のリメイク権を買収したのも分かる。そのリメイクも楽しみである。
フランスには、ファッションやインダストリアル分野のデザインをはじめとした美的なセンスが素晴らしく、料理も美味しい。しかも、いつでも、独特のエスプリやユーモアがある。なかなか魅力的で、映画にもそれらがにじみ出ている。
フランスの経済規模は、欧州(ユーロ圏)の約2割を占める(ドイツは約3割であるが)。しかし、最近、不調である。実際、経常赤字が続き、産業力も低下、格付けも低下した。社会主義国でもあり社会的負担が大きいし、労働市場の硬直性もある。オランド政権もなかなか手をこまねいているようである。最近では、同じラテン系の南欧諸国とは関係が深いが、その経済危機の影響を受けてしまっている。フランスは人口増加率が高く、内需も厚く、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は悪くないのだか。
ユーロの統合時にフランスは大変重要な役割を果たした。ドイツとしっかりと連携をすることにより、強力に推進したのである。フランスとドイツの経済規模で約半分とあるからである。最近、欧州も長引く不況により、ユーロ統合を推進しない政治家の人気が高まっているとも聞いているが、これは良くない。弊書『通貨経済学入門』(日本経済新聞社)や『ローマの休日とユーロの謎』(東洋経済新報社)に詳しく書いたが、ユーロは単に経済のためのものではなく、二度と戦争をしないという政治的な目的もあり、最終的には「キリスト教経済圏」を目指していると考えている。
フランスは映画が誕生した国ともいわれている。最初の作品はリュミエール兄弟の『ラ・シオタ駅への列車の到着』(1895年ぐらい)で、その後、物語構成になったのはジョルジュ・メリエスの『月世界旅行』(1902年)が登場する。
オランドの前の大統領はサルコジであった。彼も映画が好きなようで、奥様(元モデル)のカーラ・ブルーニをウディ・アレンの『ミッドナイト・イン・パリ』(アカデミー脚本賞受賞)に出演させた。しかも、この作品はカンヌ映画祭(2011年)のオープニング作品になった。しかし、カンヌ映画祭の前日に大統領選の敗退が決定した。人生、なかなか悲しいこともある。映画の中だけではない。
「宿輪ゼミ」
経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたでも参加でき、分かり易い講義は好評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。この2014年4月2日の第155回のゼミで"9年目"に突入しました。
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